ファッションショーの開催について(1)
楽しかったクリスマスから数日が過ぎた。
僕たちは『革命軍』との戦いに備えて、日々修行を重ねている。
しかし依然として、『革命軍』のクロを追いかけたライオネルたちが帰還することは無かった。
それどころか連絡すらもないのだ。
「どう思う、リュウ?」
「……あっちで何かあったのは間違いないな」
「だよな」
僕とリュウとシオンは、三人での修行の合間に、現在の状況を把握し合っていた。
「……そろそろ俺たちも動かなくちゃいけないな」
「「…………」」
険しいリュウの顔つきに、僕らは黙り込む。
ついに、行動に移す時がきてしまった。
「王宮に向かう、ってことだよね……?」
「……あぁ、そうなるだろうな」
「王宮、か……」
僕らの会話を聞いて、シオンが空を仰ぐ。
彼の表情は、まぶしい太陽の光でよく見えなかった。
「……シオン。大丈夫か……?」
「……おう。覚悟はしていたからな」
リュウの言葉に、シオンはぎこちない笑みを浮かべた。
王宮に戻ることで、シオンは自分の過去と向き合うことになる。一時的に記憶喪失だったシオンにとっては、今見ている”世界”とは違う”世界”に入り込むようなものだ。
それは、花畑が広がっている悪夢へと立ち向かっていくことに似ているのかもしれない。
「……それに、ここから先は命がけの旅になるぞ。今までみたいに平和ボケした旅じゃないんだ。それを覚悟しなくちゃいけない」
「…………うん。わかってる」
リュウの現実的な発言に、僕は改めて胸を痛めた。分かってはいたことなんだ……だけど…………簡単に割り切れることなんかじゃない。
平穏な学校生活から一転して、テロが縦横無尽に起こっている国の中へ飛び込んでいくことと同じだ。
何かを救うためには、同等の犠牲が必要なんだ。大げさな言い回しになるけど、平和を守るためには、命の一つや二つくらい、捧げなくてはいけない。
でないと、本当の意味での平和が訪れることは、決してないんだから。
だからこそ。
「行こう、二人とも。リコちゃんの、シオンの世界を守るんだ」
「……あぁ、腹をくくるか」
「絶対に救う」
さんさんと輝く太陽のもと、僕たち三人は手を重ね合わせ、決意を新たにする。
隠れ家に戻って、今の状況を女の子たちにも話した。
これから王宮を目指すこと。
命がけの旅になること。
誰かが犠牲になるだろうということ。
それを全て伝えた後に、女の子たちは輪になって何かを相談し始めた。
「――――?」
「――――!?」
「――――!」
…………あれ? 何だか妙な雰囲気だぞ……?
女の子の不穏な感じに、僕らは顔を見合わせた。
いったい何を話し合っているんだろう……? もしかして、僕がちょっと重い話をしっちゃったからかな……?
なんて考え始めた直後、輪が崩れ、女の子たちは僕らのほうへと向き直った。
「ねぇ、リュウ。つまり、この隠れ家を出て王宮に向かうってことでいいの?」
「……あぁ、そうだ」
確認するような口調で質問してくるナツミちゃんに、リュウはおもぐるしそうに答えた。
すると、ナツミちゃんを含め、返答を聞いた女の子が笑顔で手を合わせる。まるで、「これから旅行にいくの? やったぁっ!」とでもいわんばかりに。
そうして、女の子たちが口を合わせてこう提案してくる。
「「「じゃあ今からファッションショーだねっ(ですわ)!」」」
「ですです!」
女の子たちに続いて、リコちゃんも楽しそうに飛び跳ねていた。
「「「………………」」」
想像だにしなかった方向に話が進んでいくので、僕らは言葉を失ってしまう。唖然と立ち尽くす中、新たな旅のため(?)のファッションショーが幕を開けるのだった。
…………どうしてこうなった?




