聖夜の後のお楽しみ(4)
「はい、リュウ! メリ~クリスマス!」
「……お、おう……サンキュー…………」
黄色いリボンに包まれたプレゼントがナツミちゃんの手からリュウに渡される。まさか女の子たちからプレゼントされるとは思ってもみなかったので、僕たちは心底驚かされた。
リュウのやつなんか、テンパって顔が真っ赤になってる。
そ、そんなキャラでしたっけ……?
「はやく開けてみろよ!」
「……ま、待てって」
シオンに急かされ、手元をごちゃつかせながらリボンを解く。
白い箱から出てきたのは、十字架のネックレスだった。
「おお、カッケエ! ナツミとおそろいだな!」
「リュウがあげたのもネックレスだったもんね。お似合いだねー」
「…………」
およ?
いつものリュウなら「……口を針で縫うぞ」って反撃してきただろうに。
少し様子が変だ。
十字架のネックレスをボーっと眺めるリュウに、ナツミちゃんが一歩近寄った。
「んじゃ~つけてあげるね~」
「……え?」
「よっと……」
リュウからネックレスをとり、腕を後ろに回して着け始める。
「……~~~~ッ!!!」
「も~、動かないで~」
この時のリュウの乙女っぷりったら、半端じゃなかった。すでに本物の乙女をも超えていただろう。
しかし、よく見るとナツミちゃんの頬も赤らんでいた。
きっとドキドキしているに違いない。
いつからラブコメになったんだ。
……リア充には鉄槌を。
「ねえ、シオン」
「わかっている、みなまで言うな。切れかけのゴムとスコップを用意しておけ」
「りょーかい」
ギリギリバンジージャンプの刑だね。ゴムなしバンジージャンプとは違って、落下したときの衝撃がちょっと和らぐからギリギリ生き残っちゃうんだよなぁ。
それがまた、生き地獄なんだよね。
リュウのむごたらしい刑罰が決まったところで、次は僕がもらう番になった。
僕の目の前では、イッちゃんがモジモジしている。
渡しにくいモノだったりするのだろうか……?
「はいっコーくんっ! わたしからのプレゼント、受け取ってっ!」
「あ、ありがとう……」
目をバッテンにして勢いよく突き出されたので、思わずぎこちないお礼をしてしまった。ど、どうしてそんなに恥ずかしがるの?
そう思ったのだが、僕の疑問はすぐに解消された。
中から出てきたものを取り出し、思考が停止する。
「コーくんっには必要だと思って……っ! よかったら使ってねっ!」
きゃっと真っ赤な顔を手で隠し、僕から顔をそむける。
よかったら使ってね、って……。
これを…………?
キャップの付いたそれを、震える手であける。
そうして、ボトルに入った透明な液体をもう一方の手のひらに出してみた。
「これって…………」
「…………ローション?」
僕の言葉に続いてシオンがプレゼントの名を呼んだ。イッちゃんからもらったのは、まぎれもないローションなのだ。
こんなエロイものを……何に……使え、と……?
言葉を失った僕の様子を一瞥したイッちゃんは、トドメとばかりにこうつぶやいた。
「――――私から出た……液体です…………」
ブシャアアアアアアアアアアアッッ!!!
次の瞬間、僕とシオンの鼻から熱くたぎる男汁がこれほどかというばかりに噴射した。
私から出た液体ってッ!!
私から出た液体ってェェェェェェェェェェェッッ!!!
イェェェ~イッ!!
イッちゃんの爆弾発言にやられた僕ら二人に、ハナちゃんは肩をすくめながらため息をついた。
「一応つけ加えておきますけれど、その液体はイネの能力で生み出したものです」
「「…………え?」」
ハナちゃんの顔を見つめ、次にイッちゃんのうなづく姿を見た後、僕らの目は点になった。
「最近コーくんの乾燥肌がひどいって聞いたからっ、わたしの能力で作ったのっ! これでもうバッチリだよっ!」
「そ、そっか…………」
なんか……その……ビックリしたというか、ガッカリしたというか……。まぁ、イッちゃんは僕のお肌のことを気遣ってくれてたんだもんね。確かに、ヘビのウロコみたいになるお肌ってもう末期だよね。
「……もしかして……迷惑だった……?」
肩をおとす僕を目にして、イッちゃんは下にうつむいた。
僕は慌ててそれを否定する。
「ち、違うよっ! ローションが衝撃過ぎただけで、すごい嬉しい!」
「ほ、ほんと……っ?」
「うん! ありがとね、イッちゃん!」
「よ、よかったぁ……っ」
僕の喜ぶ姿をみて、イッちゃんは安堵の息をついた。
その時に揺れた大きなお胸を、僕は見逃さなかった。
おまけにいいプレゼントをもらったぜ(真顔)。




