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聖夜の後のお楽しみ(3)

「男子たちに、大事な話があります」

「「「……え?」」」


 修行のために家を出ようとしたその時、ナツミちゃんが僕たちを呼び止めた。あまりに真剣な表情をしているので、思わず肩が強張ってしまう。


「な、なにかな、ナツミちゃん……?」

「………………」


 問い返したものの、ナツミちゃんの反応はない。隣のイッちゃんとハナちゃんも同じように動きをみせない。

 何も聞かされていないリコちゃんなんか、ポカーンと口を開けてしまっている。


「……おい、ウシオ。お前、なんか悪い事したのか?」

「え? い、いや心当たりはないけど……」


 しびれを切らしたリュウが僕に尋ねかけてくるが、思い当たる節はない。


「っていうか、僕じゃなくて男子全員に声をかけたんだよ? リュウやシオンのこともさ」

「……た、たしかに」

「でしょ? ねぇ、シオンはどう思――――」


 シオンのほうを見やった瞬間、僕は悟った。


 ――――犯人は間違いなくコイツだと。


 真夏のタンクトップ少年に負けないくらい汗を垂らしてうつむいているシオン。目が泳ぎに泳ぎまくっている。誰の目から見ても、隠し事をしているのは明らかだった。

 女子からシオンを遮るようにして、僕とリュウは立ち位置を変える。


「オ、オラぁなんにもしてねぇだよ!?」

「……口調がおかしいぞ、ウン?」

「ほらぁ、さっさと吐き出したほうが楽だよぉ?」


 リュウと僕の問い詰めに、シオンは強く歯をかみしめた。

 今にも血の涙が流れそうなくらい、葛藤している。


「…………わかった、白状するよ。でも、誓ってくれ。オレの罪を優しく受け止めてくれる、と」

「うん、神に誓って約束する」

「……任せろって」


 まるでココアのような甘く温かい友情に触れ、シオンが自分の大罪を白状した。


「実は、クリスマスに乗っかってハナのくつしたを盗んだんだ」

「緊急事態発生、緊急事態発生。サタンクロースが降臨した模様」

「……了解。ただちに警察に通報致します」


 甘い誘惑でシオンの罪を聴き入れた僕たちは、さっそく警察に通報することにした。幸いにも、ナツミちゃんが警官だしね。


「貴ぃぃぃぃぃぃぃ様ぁぁぁぁらァァァァァァ!!」

「リュウ隊員。容疑者を拘束せよ」

「……了解」


 僕の命令を受けて、脱走しようとするシオンをリュウ隊員が羽交い絞めにした。その間に僕は、隊長ナツミちゃんのもとへと報告に向かう。


「ごめんナツミちゃん。僕たちに話って、ハナちゃんのくつしたが盗まれたってことだよね? 実はそれ、シオンの仕業で」

「全然違うよ~? 話っていうのは男子たちにもプレゼントがあるってこと」

「え?」

「「え?」」


 僕のマヌケな声に続き、後ろで逃走劇を繰り広げていた二人がこちらに振り返る。思考が停止した僕たちに、ナツミちゃんが改めて用を告げてくれた。


「話っていうのは、私たちからも男子にプレゼントがあるってこと!」


 ナツミちゃんたちが、僕らにプレゼント……? どうにも理解できない僕らの中で、一番に声をあげたのはシオンだった。


「な~んだ! くつした盗んだのがバレたんじゃなかったのね」

「それは後々、詳しく聞かせてもらいますわ…………?」

「あ………………」


 この世界の王様、死亡確定。

 ご愁傷様です。


「よし! そんじゃあ女子からのプレゼントタイムと行きますか~!」

「「お~~っ!!」」


 ナツミちゃんの掛け声に、イッちゃんとハナちゃんも腕をつきあげた。


「「「……………」」」


 こういうことに慣れていない僕たち男子はどう反応していいものかわからなかった。

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