聖夜の後のお楽しみ(2)
そういえば、シオンのプレゼントって何なんだろう?
考えているのも束の間、最後にハナちゃんが動いた。
「さて。最後はわたくしの番ですわね」
「何が入っているのかなっ?」
「楽しみだね~」
「です!」
ウキウキしている女の子の傍らで、僕たちも様子をうかがう。
「では、開けますわ……」
「「「ごくり……」」」
その場の全員が生唾を飲み込んだ。
一つ目の小包から出てきたのは……――――――結・婚・指・輪。
「こんなものぉぉぉぉぉぉぉぉ……っっっ!!!」
「わあ待ってハナっ!」
「投げ捨てちゃダメだって!!」
これは………………いかんな。いたたまれない空気の中、何を勘違いしたのか、堂々としたシオンがハナちゃんの前で胸を張った。
「これはだねハナ。オレの給料三か月分――――」
「こんなものぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!(ブンッ)」
「ぐえっ!?」
投げつけられた指輪にぶつかり、つぶれたカエルのような声を出すシオン。
あわれなりけり。
「な、なにが気に食わなかったの、ハナ……?」
「あなたの存在そのものですわ」
「オレのこと全否定!?」
そりゃ突然、結婚指輪なんか渡されたらこうなるよね。
一気に機嫌を悪くしたハナちゃんは、プリプリと頬を膨らませながら、もう一つの小包を開け始める。
「どうせこっちもロクなものじゃないんですわ!」
ビリビリと破れていく小包から姿をあらわしたのは……。
「あっ、すごくかわいいっ!」
「なんだハナ。いいものもらったじゃん!」
「ハナお姉ちゃん羨ましいです!」
「…………」
無言のハナちゃんが手にしたものは、かんざしだった。メッキ調に磨かれた金のかんざしの先には、まるで花のように美しいアゲハチョウの彫刻が施されてある。
正直に言って、今回のプレゼントの中でダントツですごい。
男の僕らでも、欲しいと思ってしまう。
言葉を失ったハナちゃんのことを怪訝に思ったシオンは、低い声の調子で尋ねかけた。
「ど、どうかなハナ? これならお気に召してくれるんじゃないかな……って思ったんだけど」
「……え? …………はっ!」
どうやらかんざしに見惚れていたらしい。
ハナちゃんは我に返って、シオンに顔を向けた。
袖で口元を隠し、目線をそらしてこう伝える。
「ま、まぁ……悪くないと思いますわ…………あ、ありがとう」
「いーってことよ! やったぜ!!」
嬉しい返事をもらったシオンは、牙をむき出しにしてそう答えた。
「……よし。んじゃ俺たちは修行にでも行くとするか!」
「だね!」
無事、クリスマスイベントが幕を閉じたので、僕たちはいつものように動き出した。
「なぁ、今日は試合でもしないか?」
「いいね! でも、ルールとか決めない?」
「……だな。シオンの影にめった刺しにされるのは、もうコリゴリだぜ」
「ははっ、わりいな!」
そんな会話を繰り広げながら、玄関の扉を開こうとした時。
「ちょぉーっと待ったあ~!」
「「「ん?」」」
ナツミちゃんの制止の声が入った。
隣のイッちゃんとハナちゃんもこちらを見つめてくる。リコちゃんだけが状況に追いつけず、キョトンとしていた。
僕たちに何か用があるのかな。
そう思った矢先に、ナツミちゃんがこう告げる。
「男子たちに、大事な話があります」
……大事な話?




