聖夜の後のお楽しみ(1)
「わぁ、中身はなんだろうね~!」
「楽しみだねっ!」
クリスマスにもらったプレゼントを手に、女の子たちがワイワイと騒いでいる。
その姿を僕たちは、居間の隅から眺めていた。
「ねぇ、リュウ。ナツミちゃんに何をあげたのさ?」
さっきからずっと気になってたんだよね。
恋愛に奥手なリュウのプレゼントなんて想像もつかない。
「……べ、別になんでもいいだろうがっ!」
当の本人はこんな感じだからどうしようもない。ナツミちゃんが開封するまで待つしかないか。
ウズウズしていると、横からシオンが声をかけてきた。
「そういうウシオは何をプレゼントしたんだ?」
「ぼ、僕? それは開けてみてのお楽しみかな……っ!」
開ける前にネタバレしちゃったらつまんないもんね。いや決して恥ずかしいとかそういうのじゃないから。リュウとはまったく違うから。
「ちぇ。お前もリュウと一緒かよ」
「こんなヤツと一緒にしないで!」
「……こんなヤツとはなんだコラ」
リュウが胸ぐらをつかんできたので、僕はギロリとにらみ返してやる。
コイツには一言モノ申してやらないといけないな。
「君みたいなドウテ――」
「……お前は死にたいようだな……?(ガチャッ)」
「生まれてきてごめんなさい」
真顔でこめかみに銃口を突きつけられた。
顔が近すぎて、迫真過ぎる。
「まぁまぁ、リュウ。お前も子供じゃないんだからさ」
「……ちっ、仕方ねえ。今回のところは勘弁してやる」
「ところでお前ってアレだったんだな。ドウテ――」
「……よぉーし二人とも並べ。額に風穴を開けてやる」
「「どうか勘弁してください」」
瞬間、僕とシオンは床に額をなすりつけた。
この間、わずか一秒足らず。
圧倒的、ど☆げ☆ざ。
「……オラオラ。もっとなすりつけろよ」
ドSモードを発動したリュウが、僕たちの頭を銃口で押し付けてくる。
木造建築の床は、なぜだか温かみを感じるなぁ……。癒されるぅ…………。
土下座のなかにある幸せを見つけたとき、女の子たちの声が一段と大きくなった。
なんだなんだ……?
不思議に思った僕たちは、女の子たちの近くに寄って、様子をうかがった。
「ナツミちゃんっ! そのネックレスすごく素敵だねっ!」
「え、えへへ~……」
「羨ましいですわ……」
ナツミちゃんがプレゼントを開けたらしい。
どうやらリュウのプレゼントはネックレスだったようだ。先端に星がついているネックレスで、光沢のある銀色がこれまた美しい。
ナツミちゃんはそれを天に掲げて、うっとりとした表情で眺めていた。
「よかったな、リュウ! 大喜びじゃんか!」
「……う、うるせぇ!」
「あれぇ? さっきまでの勢いがなくなってるよリュウお兄ちゃ~ん?」
「……あ?(ガチャッ)」
「すんません気のせいでした」
まったく……とんだ照れ屋だね。
そうこうしていると、次にイッちゃんがプレゼントの包装を解き始めた。中から出てきたものを見て、わあっと歓声をあげる。
「これ髪留めだっ! 雪の結晶みたいですごく綺麗……っ!」
そう。
結局僕の贈り物は、髪留めにすることにした。
イッちゃんは髪が長いし、ボリュームもあるからちょうどいいかもと思ってね。雪の結晶にしたのは、窓の外の雪を見て閃いたっていうのもあるけど、紅い髪のイッちゃんに似合うだろうなって。
正直喜んでもらえるかは、不安だった。
でも……。
「よかったね、イネ! ちょ~かわいいじゃん、これ!」
「わたくしも欲しいくらいですわ……」
「あたしも付けたいです!」
「ふふっ、ダ~メっ!」
女の子たちからの評価は上々だ。
もちろんイッちゃんも嬉しそうだから、ひとまずは成功って感じかな?
「……お前、結構センスあるんだな……今度教えてくれよ」
「なに? またナツミちゃんにでもあげるの?」
「……だ、黙ってろっ!」
ニヤニヤしながらからかったら、リュウは顔を真っ赤にした。ほんと、どんだけ恋愛が苦手なんだよ。
やれやれと肩をすくめていると、シオンの息をつくのが聞こえた。
「……ふぅ。助かったぜ」
「助かったって、何が?」
「お前とプレゼントが被らなかったってことだよ」
そう言って、ハナちゃんが手にしている二つの小包に視線を送った。
そういえば、シオンのプレゼントって何なんだろう? 考えているのも束の間、最後にハナちゃんが動いた。
「さて。最後はわたくしの番ですわね」
「何が入っているのかなっ?」
「楽しみだね~」
「です!」
ウキウキしている女の子の傍らで、僕たちも様子をうかがう。
「では、開けますわ……」
「「「ごくり……」」」
その場の全員が生唾を飲み込んだ。
一つ目の小包から出てきたのは…………




