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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第1部【王の目覚め編】 - 第3章 それが日常と化していく
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変わりゆくつながりの糸(3)

「リコとかいうバスガイド、あいつは裏切り者だ」


 ライオネルがとんでもないことを告白した。

 その場にいる全員が息をのんだ。


「そ、そんな! リコちゃんが敵?そんなことって!」


 僕が必死になって反論する。


「だったら、やつの何を知っているというんだ?」

「あ……」


 ライオネルに問い詰められ答え返せなくなった。

 でも……そんなことって。

 なかなか受け止めることのできない僕たちの様子を見たライオネルは、


「分かった。まずはこの世界の話からしてやる」


 と、話題を変えてくれた。


「いいか、まず、この世界はお前たちにとって敵という認識になる」

「……どういうことだ?」


 リュウが冷静に聞き返す。


「ここはとある女の子の精神世界だということは知っているか?」

「う、うん。それはリコちゃ…・んから聞いたよ」


 リコちゃんに初めて出会ったとき、僕は説明を受けた。

 ここは僕を食べた女の子の精神世界だって。


「そうか。じゃあこの世界はお前たちのような存在のエネルギーで成り立っているということも知っているか?」

「えっ?」


 そのことについては初耳だった。僕たちのような存在のエネルギーで?

 それはいったいどういうことなんだろう。

 僕が考え込んでいると、ライオネルがさらに教えてくれる。


「その様子じゃ宿屋でエネルギーを奪われていたことも知らないんだろ?」

「「「っ!?」」」


 みんなが驚愕の表情を浮かべる。


「よく聞くぜ、宿屋ではみんな悪夢にうなされるってな」

「「「っ!!?」」」


 またまたみんなが驚く。

 そういえば僕も悪夢を見たわ……。

 野郎どもに襲われる夢を。

 思い出しただけでもぞわぞわっとする。

 他のみんなも心当たりがあったのだろうか、青ざめた表情をしている。

 そういえばみんな、目の下にクマを作ってたもんね。

 しかし、イッちゃんとハナちゃんはきょとんとした表情をしていた。

 僕が不思議に思っているとライオネルが話の要点をまとめてくれた。


「要するに、この世界はお前たちを食料としてみなしているわけさ。そこでお前たちをつかんで口に運ぶ役割をするのがバスガイドの役目ってわけだ」


 リコちゃんは僕たちを誘導するための役割を担っていたのか……。


「そんな……」


 イッちゃんが泣きそうになっている。

 当然だ、あんなに仲が良かったのだから。

 リコちゃんのあの笑顔が、僕たちを罠に陥れるためのつくりものだったとは思えない。

 思いたくない。


「沈む気持ちも分かるが、あとにしてもらえないか? ここからが本題なんだ」

「……はいっ!」


 イッちゃんが浮かべていた涙をぬぐい、顔を引きしめた。


「あのバスガイドは毎晩どこか行っているそうだな?」

「……ああ、さっきも言ったが今も行っている」


 リュウが答えた。

 ここからが重要な話だとライオネルは前置きをしてから口を開く。


「今この世界である大きな変革を起こそうとしている者たちがいる。お前たちが出会った鬼の連中もその一員だ」

「なるほど、それで?」


 シオンが聞き返した。


「ああ、問題なのはあのバスガイドが連中と連絡を取っているかもしれないということだ」

「どうしてでしょう? リコちゃんもその変革者たちの一人ということでしょうか?」


 ハナちゃんが問いかけた。


「さあな。もっと詳しいことはこれから調べるつもりだ」


 ライオネルもそこまで詳しい状況を把握しているわけではないらしい。

 でもあのリコちゃんが本当に敵だなんて、受け入れることができない。


「まあそういうわけだ。オレたちはまた調べに出かける。悪いがもうしばらく待っていてくれないか?」

「わ、分かった」


 僕たちにはこの世界の変革など関係のない話だが、僕たちの…仲間であるリコちゃんが関わっているのかもしれないのだから、知らないふりをするわけにはいかなかった。


「決まりだ! オレたちはあと少ししたらまた出かけるよ」



 *



 ライオネルの話を聞き終え解散した後、僕は涼しい夜風に当たるため外に出ていた。

 ひんやりとした風が僕の体温を下げてくれる。

 とても心地よい。


「はあ……」


 僕の心は鬱になっていた。

 短い時間ではあったが、妹のように思っていたリコちゃんがまさか僕たちの敵だったなんて。それどころかこの世界自体が敵だなんて。

 頭がパンクしてしまいそうだ。


「はあ……」


 もうひとつため息をつき、家に戻ろうとしたところで家の影に誰かがいるのに気がついた。


「……誰?」


 おそるおそる近づいてみる。

 そこにいたのはイーグルだった。


「っ!?」


 彼もこちらに気づいたらしい。

 途端に僕から遠ざかるように距離をとった。


「えっと、なんで距離をとるの?」

「……別に」


 彼は目を背けながら会話を行う。


「あの、僕たちのことが嫌いなの?」

「……そういうことではないけど……」


 そっか、僕たちのことは嫌いじゃないんだ。

 僕は少しほっとした。

 じゃあ、友達になりたいな。

 そう思った僕は会話を続けながら彼に近づく。


「そっか! 人見知りとかそんな感じ?」

「……!? 僕に近寄らないで!」


 近づきだした僕に、彼は焦って逃げ出す。

 どんだけ恥ずかしがり屋なんだよ。

 ……よし、強引にいきますか!


「ごめんごめん」


 僕はそう言いながら彼の隙を窺う。

 そうして隙を見つけて。


 ヒュン!


 忍者の特性を生かし、目にもとまらぬ速さで彼の背後にまわりこみ肩を組む。


「ふふーん、捕まえた!」

「……ちょ!? 離れて!」


 肩を組まれたイーグルは焦って僕を突き飛ばした。


「……はあ、はあ。もう僕には構わないで!」


 バッ


 そう言い残して彼はどこかへ去ってしまった。


「ここまで拒絶されるなんて。なにがなんでも友達になってやる!」


 そう心に決めたのだった。



 *



 ライオネルたちが出発したその後、僕たちは各自で寝ることにした。部屋割り大会をする気分にはとてもなれない。

 一人で暗い一夜を過ごし、朝を迎える。

 僕はさっそく忍者服に着替え、外に飛び出した。


「んー、いい天気! 今日もやるか!」


 考え事をしすぎるのはよくないと思ったので、もっともっと力をつけるために修行を行うことする。


「さて、今日こそ必殺技を完成させたいな」


 昨日の修行でなにかすごい術を出せそうになったことがあった。

 けど簡単に習得は無理だから、せめてライオネルたちが帰ってくるまでには完成させたいかな。


「よーし、まずは復習から!」


 こうして僕は修行ライフに打ち込んだ。



 *



 早いもので、すでに数日が経ってしまった。


水鉄砲みずてっぽうの術!」


 ピュンッ!

 バッシャアアアアアアアアアアアン!!


 手で銃の形をつくり、指先から水滴を発射した。エアーガンのように発射された水滴が木に触れた瞬間、水滴が激しく爆発を起こす。


「からの~、豪連火ごうれんかの術!」


 手から無数の炎を放ち、飛び散る木々のかけらを一つ漏らさず燃やし尽くした。


「ふう~、こんなもんかな」


 連日修行を行ってきた僕は下手なことでは疲れなくなってきていた。

 どうやらレベルが上がっているらしい。


「よーし、復習はこのくらいにして今日もやりますか!」


 僕が行おうとしていること、それは必殺技の特訓だ。

 初日からずっと続けているのだが、なかなか上手くいかない。


「もう少しで完成しそうなんだけどなあ」


 ドン


 僕が不満を口にしていると、どこからか小さな爆発音が聞こえてきた。

 なんだなんだと音源に急行すると、そこにはシオンがいた。


「おっ、ウシオ! どうした?」

「いやあ、爆発音が聞こえたから何事かと思って」

「実はさ、オレこの頃修行してるんだよね」


 シオンが少し照れながら言った。

 そうか、さっきの爆発音はシオンの術の音か!


「実は僕もなんだよ」

「おお、そうか」


 シオンが驚く。

 僕たちはやはり似た者同士らしい。


「強くなれてる?」


 シオンが他愛もないことを聞いてくる。


「うん、自分でも怖いくらい強くなってる! シオンは?」

「オレもだよ! いやあ、修行ってバカにならないな!」


 なんて話をする。

 そのとき僕は思いついてしまった。

 必殺技を完成させる近道を。

 シオンも何か思いついたようだった。

 僕とシオンは同時に口を開く。


「「ねえ、手合わせしてみない?」」


 忍者同士が洗練された技をぶつけあうことになった。


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