未来を見据えるために(3)
「……なんで君はいつもそうなんだ……ッ!!」
ユウたちのもとへと駆けつけようとしたところでイーグルの怒声が飛んできた。
何事かと思い振り返ってみると瀕死のイーグルが起き上がっている。
「な、なんだよイーグル。どうしてそんなに怒るんだ?」
矛先を向けられたライオネルが狼狽していた。
ライオネルがイーグルとの決着をつけるということだったのに、いったい何があったのか。
しばらく様子を伺ったほうがいいのかもしれないが、
「……ちっ」
『堕天使』の力を振るうルンが、ユウを筆頭としたナツミやビイを蹴散らしている。早くそちらに参戦しなければならない。
どうしようもない板挟みに身動きが取れずにいると、イーグルの叫びがますます大きくなった。
「僕は君のためにここまでやってきたのにッ。そんな優しい言葉をかけられたら……僕は……ッ!!」
「お、おい何言ってんだ。俺は別に……。それに、俺のためって何のことだよッ」
どうやら、ライオネルが『革命軍』に入ったイーグルに甘い言葉をかけたらしい。彼にしてみれば本心を語っただけなのだろうが。
それにしてもイーグルの真意が少しばかり垣間見えた気がする。
ライオネルのためにここまでしてきたと言っていた。
つまりそれは、ライオネルのために『革命軍』に入ったということだ。
ライオネルの信頼を失ってまで、『革命軍』に入った理由。
それはいったいなんなのか。
リュウが考えているうちにイーグルの声音が少しばかり転調していく。
「……僕は、ボクは……ッ! 君を救いたいが一心で……ッ!!」
「イ、イーグル……ッ!?」
どうにも様子が異常だ。
たまらなくなって、リュウはライオネルに駆け寄った。
「……おいライオネル、これはいったいどういうことだ!?」
「リュウ! ここは俺に任せてくれって――――」
「……そんな場合じゃねえだろ!? イーグルをよく見て見ろよッ!」
「な…………っ!?」
イーグルが形を変えていく。
「……タスケタかっただけ。君とはもうワカレタつもりだったのに……。ドウシテ――――ドウシテドウシテねえねえねえねえ…………ッ!!」
この空気には身に覚えがあった。
シオンが黒い何かを身体のうちから噴き出した時と、同じ。
ウシオが『ヘビ』の獣人と化して暴走した時と、同じ。
――――絶対的に、まずい。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………ッ!!!!」
メキメキ……ッ!!
骨肉が裂ける、気持ちの悪い音が耳にこびりつく。
ビリビリと大気が震えるのを肌で感じる。
『タカ』の獣人であるイーグルの身体に変化が訪れた。
雑味を帯びたくすんだ体毛が金色に。骨格が人間から離れていき、でっぱりの多い鳥類の特徴が反映された姿に変わる。
特筆すべき点は、その翼。天へと舞うそれに、羽ではなくひし形をした宝石がびっしりと垂れている。
『人間』と『鳥類』と『宝石』をアートチックに混ぜ合わせた、バケモノ。
「キシャアァァァァァ……ッ!!」
開いた嘴から出たのは音だった。
言葉ではなく、音がもれる。
代わりに、その姿を目の当たりにしたリュウがポツリと言葉をこぼした。
「……これは……『幻獣』の獣人……ッ?」




