表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第10章 たどり着いた庭で
177/505

はじめての王宮(2)

 入城の手続きは一瞬にして終わり、僕たちは王宮へと続く大きな城門をくぐり抜けた。


「うわーっ! 広いーっ!」

「緑の芝生だーっ!」

「うっひゃあ! 見てみて噴水まであるよーっ!」


 城内に広がる大きな敷地の庭を目にして女の子たちのテンションがアゲアゲした。まあたしかに、盛り上がる気持ちもわかるけどね。

 王が住むとされる王宮は白い城壁で覆われていた。それが僕たちが今くぐり抜けてきた門のことだ。

 門の先にはサッカーグラウンド三つ分くらいの庭が広がっていた。整えられた緑の芝生が大地を装飾し、庭と呼ぶには大きすぎるその敷地の中央には石灰でできた見事な噴水が水しぶきをあげている。


「きれいなお水!」


 ヒナタちゃんは両手でおけをつくってパシャと水をすくいあげた。

 この透き通るほど美しい水は花々にとってどれほどのごちそうなのだろう。そんなことを思いながら、ヒナタちゃんと同じように水をすくい、ごくりと喉に通してみた。


「Delicious(美味なり)」

「なんで急に英語何ですか……?」


 ギンが片眉をピクピクとつり上げるが、それどころではない。

 無味とも違う、ナチュラルな甘味。まるで枯れた葉に水を与えてやるとみるみるうちにはり・艶を取り戻してくような感覚。一つ一つの細胞が待ちわびていたといわんばかりに歓喜の感情が身体のうちから湧き上がってきた。

 僕がお米だったころはこんな水で育ちたかったなぁ。

 そんなふうに思う。

 感傷に浸っていると不意にアミちゃんが遠くから声をかけてきた。


「ねえ、みんな。あそこにいる人って王宮の人かな?」

「ん? どなたか私たちを迎えに来たのでしょうか?」


 僕から視線を外し、アミちゃんの指さすほうへとギンは見やった。

 一方で、僕はところかまわず水を飲んでいる。


「うまい……」

「おにいちゃん……おなかこわしちゃうよ……?」


 こんなところでも心配してくれるなんて、やっぱりヒナタちゃんは優しい子だなぁ。


「あはは、大丈夫だよ。ありがとねヒナタちゃん」

「あぅ……っ」


 獣耳の飛び出た頭をポンポンと優しくなでてやる。気持ちよさそうにしてる様子がどこか犬っぽいなと思った。まぁ、イヌの半獣人ではあるんだけど……。

 この時、イッちゃんがちょっぴり寂しそうにしているのを僕は知るよしもなかった。


「おーい。みんなってばーっ!」


 返事がなかったからだろうか。

 アミちゃんが大きな声をあげて、こちらに手を振っている。

 あれ?

 さっきギンが反応しなかったっけ?


「ねぇ、ギン。どうした」


 ――――のさ。

 と言おうとした口が止まる。

 明らかにギンの様子がおかしい。

 目を大きく見開き瞳孔が異常なまでに拡がっていた。いた口は塞がらず額から流れ落ちた汗があごしたたる。


「ギ、ギン?」

「おにい……おねえちゃん……?」


 ギンの姿をよく見たヒナタちゃんが途中で言いかえる。彼女の言うようによく見れば胸は大きく強調されくびれが出来ていた。いつの間にか男性から女性に性別が変化している。

 今は変えるべき理由もないのに……。

 もしかするとそれほどまでに動揺していたのかもしれない。

 こんなふうになってしまったのはアミちゃんの指さす人物を目にしてからだ。

 僕はギンが動揺している原因を知るため彼女の向くほうへと視線をやった。



 ――――そこに僕の見知った人物がいた。



「シオン…………っ!!」


 彼らと離れ離れになって以来、初めて出会う仲間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ