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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第6章 白い街で子犬を拾う
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蛇足はよろしくない(2)


「僕の言いたかったことはね、『王宮』の内部で薬の研究が進められてるんじゃないかってこと」


 僕はアミちゃんとの会話で気がついたことを打ち明けた。

 けど、みんなの反応はいまいちだ。


「えっ。でも『王宮』の人たちは薬をつくれないから困っていたんじゃ……っ」

「いやまあ、そこが少し不思議なところなんだけどね」

「なんだもーウシオくん! ロジックがずたずたじゃーん!」

「ぐぬ……っ!?」


 そ、そういうデリケートゾーンは突かないでほしい。


「でも考えてみてほしんだ。『獣人』の問題を平和に解決するには治すのが一番だと思わない?」

「それはそうだけど……っ」

「治せないんじゃあーねえー?」

「治せなくても研究は続けるはずなんだよ。中断していること自体、おかしいんだ」

「「うーん…………」」


 僕の伝えたいことを理解して彼女たちはそれぞれ頭を悩ませる。

 すると王宮に仕える執事として、ギンが発言した。


「私が知る限りでは、そういった薬を研究する組織は存在しませんね」

「ほらー! ギンが知らないんだったら絶対ないんだって!」


 アミちゃんが反発してくるが、僕の態度は崩れなかった。

 むしろ、思うつぼといった表情に近い。

 不審に思ったアミちゃんが言う。


「ウシオくん、もしかしてまだ何か隠してる?」

「ううん、別に隠してるつもりはないよ。ただ、もう一つの可能性があるんじゃないかと思うんだ」

「もう一つの可能性?」

「そう、別の可能性です」


 立ち上がったギンが僕の隣で腰を下ろす。

 アミちゃんとイッちゃんは僕らの発言について思考しているようだ。

『王宮』をよく知るギンでさえ知らない、『王宮』の内部で薬の研究が進められている可能性。

 それはつまり。



「「――――王宮内に『裏切り者』がいるっ?」」


 イッちゃんとアミちゃんが同時に呟いた。

 僕とギンは口元をゆるめ、うなずく。


「王宮のなかに『裏切り者』が率いる組織があると僕は思うんだ」

「それが、私たちのよく知る『革命軍』というわけですね」


 答え合わせするように僕とギンが要約した。


「で、でもそれじゃあギンの友人も『革命軍』のなかにいるかもしれないの?」


 うろたえた様子で、アミちゃんが声を荒げる。

 一方で、ギンは表情一つ変えることなかった。


「私たちは国につかえる身です。たとえ友人が裏切り者であったとしても心を痛めてはなりません」

「…………ギン」


 表情こそは変わらなかったものの、その声にはどこか悲壮感があって。

 もしも、自分が信頼している仲間が裏切り者だったとしたら。

 果たして僕はやいばを向けられるだろうか。

 汗水流して共に働いたこともあったかもしれない。一つ屋根の下で、一夜をすごした異性かもしれない。ギンの立場に置きかえると、衣食住を共にする家族なのかもしれない。

 僕は隣にいるギンを敬服した。

 同時に仲間意識がよりいっそう強くなった。

 当の本人は話の軌道を戻す。


「結局のところ、私たちがするべきことは王宮にたどり着き、内部から捜索するということでしょうね」

「そうなるよね。『革命軍』につながる情報は集めておきたいし」

「『獣人』を治す薬の研究もあるかもしれないからねー」


 要するに、僕たちの目標は変わらずして王宮を目指すことだ。

 それと、もう一つ。


「もしも『獣人』を治す薬の研究があるのならっ」

「ヒナタちゃんを『獣人』から元の姿に戻せるのかもしれない」


 イッちゃんと僕は顔を見合わせてそう言った。

 イッちゃんの治療があったとはいえ、ヒナタちゃんにはまだイヌの耳と尻尾が残っている。半獣人といったところだろうか。

 僕たちには彼女を完治させたいという強い気持ちがある。

 そのためには――――


「ヒナタちゃんも僕たちの旅に同行させなくちゃいけないね」

「そうなりますね」


 ギンに続き、他のみんなも同意する。



 ――――と、そのとき。



「わたし……おかあさんとはなれなきゃいけないの…………?」



 隣の部屋に続く障子のすきまから、ぽつりと声がもれてきた。

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