こんにちは、アンダーワールド(4)
夕日が沈み、月がのぼり始める頃。
白い王宮の裏口では、火の手が上がっていた。
竜の形をかたどった炎の鎧に身を包んでいる、怪盗のリュウ。
風と電撃を身体にまとった、白き忍者のシオン。
それに加え、『警官』×『探偵』の能力を所有する少女・ナツミ。
三人の意思が一つとなり、今まさに大きな力が誕生せんとしている。
「私が先手をかける! いくよ!」
「……おうッ!」
「任せた!!」
いよいよ、未知の力が発揮される。
狼煙をあげたのはナツミだった。
彼女は再び、地に手を伏せる。
ゴゴゴゴゴッ!!
大男を閉じ込めようとして、地中から四方をふさぐように鉄格子が出現する。
「…………同じ手は食らわん」
大男は真上へと勢いよく飛び上がり、ナツミの拘束技を回避した。
しかし、ナツミの表情に焦りはなかった。
むしろ思惑通りといった感じだ。
「『蜘蛛の糸』・散開……ッ!!」
「…………むっ!?」
ナツミがそう指示すると、大男に引きちぎられていた糸がシュバっと広がった。捕獲ネットにかかった動物のように、彼は身動きが取れなくなり、そのまま落下する。
「……もらったぞッ! 剣炎の術ッ!!」
「終わりだッ! 剣氷の術ッ!!」
リュウとシオンは術で各剣を生み出し、はさみこむようにして落ちてくる大男を狙った。
「…………おォ……ッ。オオオオオ!!!」
絶体絶命のピンチに、大男は雄たけびを上げた。呼応するようにして、彼の両腕がゴリラのように変化していく。
次の瞬間には、その剛腕から生まれる圧倒的な出力が拘束する糸を引きちぎった。
「…………はぁッ!!」
「……ぐァッ!?」
「うぐっ!?」
はさむような形の攻撃を逆手に取られ、リュウとシオンはゴリラの腕にカウンターを受ける。崩れる体勢で放たれた一撃だったが、それでもなお二人は吹き飛ばされてしまった。
「二人とも!! 大丈夫!?」
「いててて……な、なんとかね」
「……あァ……」
舞い上がる砂煙に紛れた二人の無事を確認したナツミがホッとする。
そんなナツミに、敵から声がかかった。
「…………見事なもんだぞ、探偵の女性。まさか使い終えた技を再利用するとはな」
「……それはまたドーモ」
二度の称賛を受けたナツミは、口元を引きつらせながらそう答えた。
二回とも技を破られている分、悔しさが倍増しているのだろう。
「…………そうだな。力のある君たちには、敬意を払うこととしよう」
「……敬意、だと?」
ナツミのもとへと集った後、リュウがそう聞き返す。
大男はこれまでとは打って変わり、自分の意思を言葉に乗せる。
「…………君たちは一流の戦士だ。ならばおいどんも全力を出さなくては失礼だろう?」
「お、おいどん……?」
次々と飛んでくる言葉に、三人は頭を混乱させた。
一方で、大男は言葉を紡ぎ続ける。
「…………本気を出す前に、自己紹介でもしておこうか」
夕日が、沈み。
「…………おいどんの名はシャバーニ。世界一の強さを求める漢だ」
夜月が、昇る。
「…………オ、オオ。オオォォォォォォォォォォッ!!!!」
シャバーニが集中し始めると、地響きが鳴り出した。
共鳴するようにして、世界が揺れる。
しかしシオンはそんなことに目もくれず、ただただ震えていた。
「シャ、バーニだと……?」
「……知ってるのか、シオン?」
恐れおののくシオンに、リュウが声をかける。彼はただ、一言だけこう答えた。
「アイツは……記憶をなくす前のオレを殺した張本人だ」
直後。
ぶわ――――……ぁっ!!
手で顔を覆ってしまうほどの烈風が生じた。
その風に乗って、雄々しい漢の声が耳に入る。
「…………闘いを始めようか」




