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ラグナロク  作者: 木の棒
第3章 文無し的な!
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第13話 半年かかる

―― 聖樹王暦2000年 1月 12日 8時 ――


 8時起床が身についてきたのか、タイマーが鳴る前に起きられるようになった。


 昨日の夜はクズとの戦いで疲れたので、部屋に戻ったらすぐに眠ってしまった。

 クズの「せいやくトランプ」は僕の物になった。


 せいやくトランプの説明文を見てみる。


 せいやくトランプ:せいやくに従ってトランプゲームをしましょう


 特典アイテムの説明は本当にふざけている。

 あのクズも、この説明からよくあんな騙しを思いついたものだ。


 さて、クズのことなんてどうでもいい。

 いま重要なのは、金剛石と最高純度神石。

 そしてこの木の棒の能力の把握だ。


 金剛石と最高純度神石は、ミカ様の武器を作ることで決定。


 最高純度神石から神力を得ることも考えたけど、ゴブルンが身を捧げて残してくれた神石を神力に吸収するのはどうにも良い気がしなかった。


 何かこの世界に形として残せる方がいいと思った。

 なら、ミカ様の剣だろうと。


 問題はどうやって宮廷鍛冶師に頼むかだな。

 お金の問題もある。

 あ~ミニゴブルンの武器も作ってあげないとな。

 あいつ、武器は何がいいんだろう?


 今は木の棒の能力だな。


 ミカ様の傷を癒したあの力。

 あれは聖魔法なのだろうか。


 木の棒の力を感じてみる。


 神力だ。神力を感じられる。

 この世界では闘気と魔力というレベルに従った力を行使する。


 神力は使えないはずだ。

 なのに、この木の棒から神力を感じる。


 神力が変化する。

 治癒神力。


 やはり使える。

 神力を使えてしまう。


 新人天使の無料研修しか受けていない僕は、基本的な神力の使い方しか分からない。


 治癒神力、それと身体能力上昇効果のある肉体強化神力。


 まず闘気を纏って肉体強化する。


 さらに神力を使って、肉体強化神力を自分に流す。


 うおおおお! す、すごい!

 闘気の肉体強化と混ざり合って、すごいことになっている!


 神力の使い方が下手なので、同時に治癒神力は流せない。

 今の僕では1つの神力しか使えない。


 これは特訓だな。

 ミカ様に神力の使い方を教えてもらうか?

 どうせミカ様には伝えるんだ。

 この木の棒で神力が使えることを。

 あれ? ミカ様がこの木の棒持ったら無敵じゃね?


 神力使えるミカ様って無敵じゃね?


 と、とりあえず考察を続けよう。


 聖樹の祝福。

 ゴブルンは、僕がミニゴブルンに聖樹の祝福を与えたと言っていた。


 聖魔法は聖樹の祝福の1つだと、以前説明を受けている。

 つまり、聖樹の祝福とはもっと広い意味を持った何かだ。


 ゴブリンに名を与えることも聖樹の祝福。

 誰でも名を与えられるわけじゃないのか?

 僕だから与えられた?


 気になるのは、ミニゴブルンはこの世界の住人だ。

 つまり、特典アイテムとしてもらった「伝説の木の棒」は、この世界の住人に影響を与えるものってことだ。

 しかも、失われた聖樹の祝福を与えられちゃうの?


 この世界の住人に聖樹の祝福を与えられるとしよう。

 なら、プレイヤーにも聖樹の祝福を与えることができるのか?


 聖樹の祝福が何なのか分からないから、漠然とした考えだな。


 ミカ様に聖樹の祝福を与える……ミカ様に名を与えるのか?

 いや、それは違うだろう。



 あ、そうだ。ミニゴブルン召喚して、ちゃんと自己鍛錬するように伝えないとな。


 召喚カードのゴブルンを使う。


 床に魔方陣のようなものが描かれる。

 そこに闘気魔力を込める。


 光りと共にミニゴブルンが……。


「ゴブッ!」


 ミニゴブルンは何もない自分の手を食べた……へ?



 どうやらミニゴブルンはバナナを食べているところだったらしい。

 必死にジェスチャーで伝えてきた。

 ミニゴブルンの抗議により、バナナを食べるために一度戻した。

 そして時間をちょっと置いて再召喚した。


 ゴブルンに以下のことを伝えた。


 ちゃんと自己鍛錬すること、ゴブルンの金剛石から何か武器を作ってあげるけどどんな武器がいいのか考えておくこと。

 っていうか、魔力の使い方を覚えて僕と話せるようになること。


 とりあえず僕の言葉は理解できたようだ。

 たぶん……頷いていたから……。


 伝え終えるとミニゴブルンの精神を本体に戻した。

 召喚を終えようとすれば、込めた闘気魔力が尽きてなくても、本体に戻るのだ。



 軽食屋に向かう。

 ここでミカ様と会って朝ご飯を食べるのがお決まりとなっている。


 ミカ様は先に来ていた。

 僕を見ると嬉しそうに微笑んでくれる。


 僕は思う。

 これはかなりミカ様の好感度が上がっていると!


 昨日はクズの魔の手からミカ様を救いだした!

 最後に僕が逆にミカ様の奴隷に落ちてしまって、決闘でわざと負けてもらい、神力を返してもらうという、ちょっと情けないオチがあったけど。


 クズの神力は僕のものになった。

 クズの神力は1,500だったのだろう。

 それにマイナス1として得られる1が上乗せされて1,501。

 僕がもともと持っていた神力が1。

 合計1,502が僕の神力となった。


 ミカ様の神力は200,000である。

 すんごい神力だ。


 自分の神力値がいくつかなんて、本来は仕える主神しか知ってはいけない内容である。


 お互いの神力値を知っていることは秘密。

 ミカ様と2人だけの秘密。


 秘密を共有すると一気に仲が近付くって言うじゃないですか。

 これはもうきていますね!

 ぐんぐんきていますね!


「おはよう。良く眠れた?」


「はい。昨日の疲れはありません!」


「うふふ。ルシラ君は頼もしいわね」


 きてるね、これは。

 間違いなくきてる。


 朝食を一緒に食べながら、朝考察した「神力が使える」「聖樹の祝福」をミカ様に伝えた。


「ミカ様、この木の棒を持って神力が使えるかちょっとやってみてください」


「う、うん」


 ミカ様もドキドキだ。

 もし、これでミカ様が神力を使うことができれば無敵である。


「…………だめ。何も感じられないわ」


 ありゃ。

 僕だけ使えるのか?


「ルシラ君だけ使えるんじゃないかしら」


「でもどうして僕だけ?」


「う~ん、特典アイテムはもらった人だけが使えるとか?」


「稽古でミカ様が木の棒から闘気魔力の供給を受けていることや、昨日最後に僕とミカ様でせいやくトランプを使えたことから、もらった人だけ使えるとは思えないですね」


「そっか……でも私には神力は感じられないわ」


 むむ~。ミカ様無敵作戦失敗か。


「聖樹の祝福はどう思います?」


「分からないわ。でもゴブリンの子供に「ゴブルン」という名を与えたってことは、誰かに何かを与える力だと思う。自分のためじゃなくて、誰かのための力。素敵だわ」


 ロマンチックな考え方だけど、的を得ている気がする。

 僕以外の誰かのための、僕が何かを祝福するのか?


「ミカ様のことも祝福できますかね」


「あら嬉しい。ぜひ祝福してみてよ」


 ミカ様は笑顔を向けられると、次には目をつぶり両手を前で合わせて祈りを捧げるポーズを取られた。


 僕は木の棒を握り、ミカ様に「聖樹の祝福を!」と念じてみた。


「……」


「……」


 特に変化は感じられない。


「ミカ様、何か感じます?」


「ううん、何も感じないわ」


 あれ? だめなのか? プレイヤーには聖樹の祝福は与えられないのか?


 ミニゴブルンに名前を与えた時ってどうしたっけ。

 確かミニゴブルンが木の棒を使ってバナナを落として、僕に木の棒を返した時だったな。


 あの時は……あっ! そうか。


「ミカ様。もう1度お願いします」


「ええ。いいわよ」


 再び祈りの捧げるミカ様。


「この木の棒を両手で握って祈りを捧げてもらってもいいですか?」


「うん」


 ミカ様が木の棒を両手で握る。


 聖樹の祝福……ミカ様に聖樹の祝福を……与えたまえ!


「あっ」


 ミカ様の短い声。

 何かきた?!


「ど、どうですか?」


「う、うん……何か感じたような気がしたわ」


「そ、それで?」


「う、う~ん……どうだろう、何がどう変わったのかよく分からないけど」


 何も変化なしなのか?

 闘気か魔力がちょっと流れたのを勘違いされた?


「あっ」


 またミカ様の短い声。

 何かきた?!


「ど、どうしました?」


「う、うん。これ見て」


 ミカ様の白花。

 ユリの花びらと……ああ!


「は、花びらが」


「うん。花びらが1枚増えているわ」


 白花の花びら1枚増えているのだ。

 説明から花びらは増えると予想していたけど、聖樹の祝福で増えるのか?


「ルシラ君の祝福のおかげだね♪」


 くぅぅぅぅ! ミカ様の嬉しそうな顔が可愛い!


「聖樹の祝福なんでしょうか」


「そうだと思うわ。もし違うなら、ルシラ君の祝福だと私は思っておくね♪」


 可愛い……抱きしめたい。

 抱きしめたら怒るかな? 昨日治癒神力流している間、ずっと抱きしめ合っていたんだよね。

 ま~状況が状況だけど。

 かなり好感度アップしているんだ。

 後は雰囲気さえ間違えなければ……いけちゃうのではないだろうか!


「花の名はどうします?」


「サクラにするわ。ソメイヨシノね。白いサクラ」


 前に僕がユリとサクラがいいって言ったからかな?


 ミカ様が白い花びらにソメイヨシノを思い浮かべて名を与える。


 花びらは、ソメイヨシノの花びらになった。

薄らと淡い紅色が混じっている。

綺麗なサクラだ。


「素敵なサクラ……ありがとう。私の力になってくれるのね」


 ミカ様が白サクラの花びらに力を込める。

 白サクラは光り輝いて、その姿を変えていく。


 目の前に現れたのは……とてもとても小さな盾だった。

 白サクラのソメイヨシノの盾だった。


 まだ小さくて、ミカ様が持つと、手にちょっと大きなソメイヨシノの花を持っているように思えてしまう。

 でもきちんと盾としての持ち手の部分がある。


 白サクラを嬉しそうに見つめるミカ様。


 ソメイヨシノの花言葉って、確か純潔。

 ミカ様にぴったりだな。


「今日の午前中はどうする? 稽古とデイリー依頼?」


 おっと現実に戻らないと。

 う~ん、どうするべきか。


 稽古は続けていくべきだろう。

 ただ、デイリー依頼で稼ぐ時期は終わりだろう。

 もっと効率良く稼げる依頼に移るべきだ。


「ミカ様は稽古依頼をこなしてください。僕はちょっと情報収集したいことがあるので、今日は別行動を取ろうと思います」


「そ、そっか……何の情報収集なの?」


 お? いま寂しがりましたね? 僕がいなくていまちょっと寂しいと思いましたね!

 くぅぅぅぅぅぅ! きてる! きてるよ!


「金剛石と最高純度神石でミカ様の剣を作るために、宮廷鍛冶師について調べようと思います。行ってみるのが一番早いと思いますので「王城バッキンガム」に行ってきます」


 いったい誰がこんな名前をつけたのか。

 バッキンガム宮殿から取ったとしか思えない名前。

 ま~たまたまなんだろうけど。


「そ、そっか♪ あ、ごめんね……私のために」


 お? いま別行動するのは私のためなんだ! って嬉しがりましたね?

 くぅぅぅぅぅぅ! きてます! ぐんぐんきてます!


「いえ、ミカ様のためなら! 僕はミカ様の奴隷ですから」


「くすくす。昨日あのままルシラ君を私の奴隷にしてもよかったかな~って寝ながら考えちゃった♪」


 くぅぅぅぅぅぅ! なりたい! ミカ様の奴隷になりたい!

 その奴隷にして可愛がっちゃうぞ♪ の小悪魔的な笑顔で可愛がられたい!


 もういっそうミカ様の奴隷になるか?

 ちょっと後で真剣に考えてみよう。


 朝食を終えた僕達は一緒にギルドに向かう。

 ミカ様は稽古依頼を受けて、稽古に向かった。

 木の棒を貸そうとしたら、何があるか分からないから持っておいてと断られた。


 ミカ様のレベルも上がって闘気魔力の総量も増えている。

 1時間の稽古で闘気魔力切れになることはないだろう。


 ただ稽古を連続で受けるのはさすがに無理だ。

 休憩を取って時間を置きながらすることになるだろう。



 さて、僕は2階に向かう。

 説明用NPCから情報を聞き出そうと……って、ええ?!


 い、いない?

 誰もいないぞ?!


 急いで1階に戻って、受付のお兄さんに聞いた。


「あ、あの! 2階にいたNP……じゃなくて、人達は?」


「お? あの人達なら昨日帰ったぞ。期間限定のアルバイトだったらしい。ず~っと2階にいて、どうやって生活しているのか不思議だったけどな」


 しまった……ずっといるわけじゃなかったのか。


 ゲームの要素のNPCだからずっといるとばかり思っていたよ。

 くそっ! なかなか意地悪なことをしてくれる!


「あ、あの。宮廷鍛冶師に剣を作ってもらいたいんですけど、どうやって依頼したらいいんですかね?」


「宮廷鍛冶師か。知り合いの鍛冶師から宮廷鍛冶師に頼んでもらうか、王城に知り合いがいればその人から頼んでもらうのが早いな。正規の手続きで依頼してもいいが、かなり待つことになるだろうな」


「え、えっと、ちなみに正規の手続きだと、どれくらい待つものなんですか?」


「半年ほどかかるだろうな」


 半年! そんなに待てないよ!


 これはもうどうにかしてコネを作らないといけないな。


 とりあえずいつもの武器屋に行ってみた。


「いらっしゃいませ!」


 髭もじゃドワーフが出迎えてくれる。


「昨日聞いたオーダーメイドの剣のことなんだけど、宮廷鍛冶師に依頼したいんだ。ちょっと急ぎでね」


「宮廷鍛冶師ですか」


「こちらで宮廷鍛冶師に知り合いとかいませんか? ちょっと料金は上乗せしますから、なるべく早く剣を作りたいんですよ」


 実際にはお金はあまりない。

 ないけど、まずは作ってもらえる確約を取る。

 作ってもらう間にお金を貯める。


 いや、そもそもこの金剛石ってめちゃめちゃ高く売れるんじゃね?

 最高純度神石だって。


 見せるのが怖いから隠しているけど、お金が足りないなら金剛石を買い取ってもらえばきっと大丈夫ではないだろうか。


「お客様。宮廷鍛冶師といっても位があります。どの程度をお望みで?」


ありゃ。宮廷鍛冶師といってもいろいろなのか。


「え、えっと。位ってどんな位で分かれているの?」


「見習い、下位、中位、上位、最上位、そして最高位である聖位です」


 お~聖位ってかっこいいな。

 でもお高いんだよね。


「参考までに聞きたいんだけど、聖位に依頼するとなると、普通いくらぐらいかかるの?」


「聖位への依頼はお金では依頼できません」


 ありゃ。それじゃ~どうするんだよ。


「どうすれば、依頼できるんですか?」


「聖位は王国騎士団や魔法士団のためだけに武器を作りますので、一般に出回ることはないんですよ。騎士や魔法士の中でも認められた者だけが聖位が作った武器を手にすることができるって聞きますね」


 む~これは無理か。

 しょうがない。この世界の鍛冶師の頂点に君臨する人だ。

 依頼できる方がおかしいか。


 ……でもしたいよね?

 こういうのって、伝説的な鍛冶師! みたいな人に作って欲しいじゃん!


「お金がいくらかかっても構いませんので、こちらで早く依頼を出せる鍛冶師ってどの位の人ですか?」


「お金に糸目をつけないなら、最上位をご紹介することができますよ」


 ふむ、その最上位とどうにか仲良くなって、聖位に作ってもらえないかな。


「その最上位の方を紹介して頂く場合には、どうしたらいいですか?」


「うちから、その者に依頼の手紙をだします。そこにお客様が希望される武器の種類、金額の上限、材料持ち込みならどのような材料かを書きます。後は返事が来るかどうか待ってみないと分かりません」


 思ったより弱いな。

 それって返事が来ないこともあるってことだよね。


「返事は必ず来るのですか?」


「返事は来るでしょう。ですがそれがお断りの返事もあり得ます。早く返事が来るか、時間がかかるか、こればかりは私にも分かりません」


 う~ん、どうする。

 この武器屋から依頼の手紙を出してもらうか?

 金剛石に最高純度神石を材料と書けば、かなり興味を引くのではないか?


 でもこの武器屋にも、僕が金剛石と最高純度神石を持っていることがばれるのか。



 もう少し考えるべきか。

 プレイヤー達が高純度神石を求めて向かっている「聖樹王の穴」で、高純度神石や他の良質な鉱石が取れるかもしれない。


 それでどうにか最上位の鍛冶師の興味を引いて、聖位にだけ金剛石と最高純度神石を見せれば……。


 そもそも、この金剛石と最高純度神石がどれほどの価値なのか、僕はまだ分かっていない。


「ちょっと考えさせてください。ところで、昨日剣を作る材料には神石が良いと言っていましたよね。神石っていろいろ純度があると思うのですが、やっぱり高純度神石がいいんですよね?」


「もちろんです。純度の高い神石がより良い材料ですよ」


「ちなみに、どうやって神石の純度を計るのですか?」


 僕達はアイテムボックスに入れれば分かる。

 この世界にある魔道具のアイテムボックスは、あくまでも出し入れするだけだ。

 アイテム名が見れたり、説明文が見たりするわけじゃない。


「うちでも中純度ぐらいの神石なら測定できますよ。神石の純度を計るための水晶があるんですよ」


 ドワーフはいつも会計で使う水晶とは違う水晶を持ってきた。

 透明度がより高いな。


「高純度以上の神石はどこで測定するんです?」


「神石を取り扱う専用のお店にいくか、ギルドですね」


 あ~ギルドで測定できるのか。


「高純度神石ってどれくらいの価値があるんです?」


「大きさにもよりますが、高純度で拳ほどの大きさがあれば1個500万Gが相場でしょうね」


 きたねこれ。この最高純度神石(大)は最高純度で、大きさは僕の頭ぐらいありますよ。


「高純度よりもっと高い純度の神石ってあります?」


「最高純度と呼ばれる神石がありますね。このクラスになると、そもそも扱えるのが聖位を持つ人達だけです。最高純度の上には聖純度と呼ばれる神石があります。これは最高純度の神石の中心に僅かに存在している場合ある神石です。聖純度となれば聖位の中でも扱えるのはナール様だけとなりましょう」


 わ~お! もともと依頼できるのが聖位に限られるのね。

 しかも、さらに上の純度があったか。聖純度ね。

 この最高純度神石(大)を見せたら腰抜かすんじゃないかな。

 っていうか、この最高純度神石の中心に聖純度神石あったりして!


「最高純度神石の中に聖純度神石があるかどうかも、ギルドで測定したら分かります?」


「ギルドなら分かるでしょう」


「ありがとうございます。参考になります。あと材料で鉄や鋼と言っていましたけど、鋼以上の材料だと何がありますか?」


「ミスリルでしょうな。しかし貴重すぎますので、これも一般に出回ることはないでしょう」


 ミスリルね。

 金剛石のことは知らないのか。


「僕のギリシア王国に「金剛石」というとても貴重な鉱石があったんだけど、こっちで聞いたことあります?」


「なっ! ギリシア王国には金剛石があるのですか?!」


 おっと、驚ききたね。

 これもやっぱりすごいものなの?


「ぼ、僕も見たことはないんだけどね」


「やはりギリシア王国でも貴重なものなのですね」


「こっちにはあるの?」


「1000年前の神々の戦争ラグナロクにて、聖樹王に仕えた伝説のゴブリンが持っていたメイスが「金剛メイス」と言われております。もちろん実在したのか分かりません。伝説の話ですから」


 伝説じゃないよ。金剛メイスを持っていたゴブリンは実在したよ。

 ゴブルンのことだろう。

 1000年前に聖樹王に仕えていた……僕のことを聖樹様と呼んだのと何か関係があるのか?

 それにしても金剛メイスか……ゴブルンは素手だったけどな。

 今度ミニゴブルンに聞いてみよう。

 案外ミニゴブルンが持っているかもしれない。


「つまり伝説の中にあるだけで、金剛石を見た人はいないんですね」


「ええ、私の知る限りではですが。王城になら知る者や見たことのある者がいるかもしれませんね」


 ま、このドワーフの知識がこの世界の真実ではないからね。


「ありがとうございます。本当に参考になりました。また寄らせてもらいます」



 王城バッキンガムに行ってみるか。


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