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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
流れる冷水編

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絶望の三蛇と希望の主

最近更新遅くなってすみませんm(__)m


 八月下旬からはさらに遅くなるかもしれないので、ご了承ください。

「ねえ。リューヤの様子、おかしくなかったですか?」


 ナーガ、バジリスク、ヤマタノオロチの三蛇はリューヤが何故か白蛇様と話がしたいと言い、自分達は洞窟でのんびりしようと帰る途中だったが、ナーガが不意に言う。


「まあ、確かにね。もしかして、白蛇様に私達を下さいって頼みに言ったのかもよ?」


 バジリスクが冗談っぽく言うが、ナーガの顔は険しい。


「……私、戻って見てきます」


 ナーガは結局、するするとリューヤと白蛇様の所へ戻っていった。


「……私も行く」


 それにヤマタノオロチが続き、


「……しょうがないわね」


 バジリスクもついていった。


「……」


 物陰に隠れたナーガの隣に二人も並び、リューヤと白蛇様の会話に聞き耳を立てる。


 一見当然のように行っているが、三蛇は上位の蛇だけが使える隠密スキルを使っている。だからこそ、リューヤにも白蛇様にも見つかっていない。


 蛇系モンスターは『索敵』や『気配察知』一回では見つからない。蛇神ともなると、それらを無効化し、襲いかかる直前まで気付かれないと言う。


「穢らわしい人間風情が、この私に触るなあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 三蛇は最悪と言うか最高と言うか、絶妙なタイミングでそれを聞いた。


「……えっ?」


 声を出したのは誰だったか。三蛇は呆然と、豹変した白蛇を見ていた。


「はっ! その醜い本性であいつらの親を殺させたんだろ!」


 三蛇には嫌な情報しか入ってこない。


「……そう。私があいつらの親を殺させたんだよ。私が命じたとも知らず、私を信用しきるあいつらを見て、何度笑いそうになったか」


 それが決定打となった。白蛇本人から真実を聞くことで、三蛇は絶望に突き落とされた。


 信じていた恩人が本当はメドゥーサを操っていた黒幕で、真の親の敵だった。


 そんなことを聞かされて平然としていられるわけがない。残るのは絶望と虚無。


 信じていた恩人は自分達を道具としか思っていないと言う絶望。


 信じていた恩人の本性を知ってしまってこれからどうすればいいかわからないと言う虚無。


「今更私の本性をあいつらに告げたとして、信じると思うか? 否」


「すでに私の道具だ」


「絶望するだろうな」


 そんな、嫌な言葉しか耳に入ってこず、しばらくの間全く動かなかった。


「ーー俺がお前に怒ってんだよ。あいつらのためじゃない」


 リューヤの怒鳴り声が聞こえた。


「ーー俺の仲間に手を出したことに怒ってんだよ!」


「「「っ!」」」


 三蛇は絶望から顔を上げる。


 リューヤは自分達を仲間と言ってくれた。一夜を共に過ごした仲としてなかなかに寂しいモノがあったが、生きる意味もなくなった、絶望の淵にいた三蛇にとってはまさに救いだった。


「私達は……」


 ナーガが呆然と呟く。


 三蛇が色々考えている内に、リューヤは白蛇のHPを全て真っ白にしてしまった。


「っ!」


 ナーガが物陰から飛び出し、二人も後に続く。


「……お前ら、どうした?」


 リューヤは特に驚いた様子もなく三蛇に声をかける。


 すでに『ドラゴンフォース』も『竜紋』も『ドラゴン・ドラグーン・ドラグオン』も解いていて、美女の姿に戻った白蛇に剣を突きつけていた。


「……おぉ、三蛇。この者は私に乱心したようです。捕らえてください」


 白蛇は一部始終を見ていたとは知らず、救いを求める。


「……いいえ。白蛇。私達は全てを聞きました。あなたが私達の親の敵であることも……!」


「……聞いてたのか。まあ、もう白蛇は俺が倒した。お前らの敵はもうすぐ死ぬ」


「何を言っている? 私はお前達の恩人だぞ?」


 白蛇は呆然と、絶望に突き落とされたような顔をしている。


「……お前らはもう、復讐なんてするな。復讐の後には何も残らないぞ」


「わかったわよ」


「……うん」


「その代わりに」


 リューヤの言葉に頷いて。


「「「責任は取ってもらうから」」」


 三人同時に言った。


「白蛇様。これまで育ててくれてありがとうございました。おかげでリューヤさんに会えましたし」


 ナーガは白蛇にそう言い、もう用はないとばかりに見向きもしなくなる。


「お、おい。嫌だ。私はまだ死ねない! 死にたくない!」


 白蛇は絶望と共に消えていき、やがて完全に消失した。


「……悪いな。恩人を倒しちまって」


「いえ。騙されていた私達を救ってくれたんですから、謝らないでください」


「……そうか。で、これからどうするんだ?」


 リューヤは穏やかな表情で言う。


「何言ってるの? もう洞窟に戻ってもやることないのよ?」


「……もちろん、リューヤと一緒に行く」


「……マジ?」


「はい。私達をリューヤのテイムモンスターにしてください」


 三蛇はリューヤに深々と頭を下げてお願いする。


 ーー蛇神・ナーガ、蛇神・バジリスク、蛇神・ヤマタノオロチが仲間になりたいようです。名前を付け、仲間にしますか?


 というウインドウがリューヤの前に出現する。


「……」


 リューヤはその、名前を入力する欄とyes/noの表示を見る。


「……名前か」


「名前を貰えるんですか?」


 三蛇は嬉しそうに頭を上げる。


「……俺が決めていいのか?」


「……ん。両親には貰えなかった。リューヤに付けて欲しい」


 ヤマタノオロチの言葉に、名前を貰う前に殺されたから、名前がないのか、と納得するリューヤ。


「わかった。俺が付けるよ」


 リューヤは言って、悩みながら名前を入力していく。


 結果、ナーガはナーフィア。バジリスクはリエラ。ヤマタノオロチはシャーリーと名前を付けられた。


「ありがとうございます、リューヤさん」


「ありがと、リューヤ」


「……ありがと、リューヤ」


 三者三様に礼を言い、何かに解き放たれたように笑った。

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