三蛇の巣窟
「『三蛇の巣窟』のクエストって、詳しくはどうなんだ?」
俺はアリシャの店knightで、『三蛇の巣窟』について聞いていた。
『三蛇の巣窟』の内容は、三体の蛇の親玉が住む洞窟があり、最近になって頻繁に蛇系モンスターが出現して困ってるから、ボスの三体を倒して欲しいということだった。
「……ん。その洞窟に行って、奥に進んでいくとその三体がいるから、討伐する」
まあ、そうだけどさ。
「じゃあ、対蛇系モンスターの注意事項は?」
聞くことを変える。
「……かなりある。噛まれると全状態異常の内のどれかになる。上位のモンスターは何個も状態異常にさせられる。口から毒を吐くモンスターもいる。それも全状態異常の効果あり」
状態異常か。厄介だな。
「……あとは、巻き付かれないように注意。巻き付く力よりSTRが高くないと抜けられないから、ほぼ今の段階じゃ不可。巻き付かれて噛まれるパターンで死ぬプレイヤーも多いと思う」
なるほど。巻き付きと噛みつきだな。
「……あと、問題は邪眼」
「邪眼? 何だよ、それ?」
「……有名所ではバジリスク。その眼を見てしまうと石化してしまうとか」
「ああ、あれか。こういうゲームだと邪眼の能力ってあるよな?」
「……ん。蛇は状態異常と特殊な能力を持つから注意が必要」
蛇って厄介なんだな。強さで言えばドラゴンの方が上でも、厄介で注意すべきことが多いのは蛇の方だな。
「よしっ。アルティを連れてって、援護してもらおう」
洞窟の中じゃ、他の三体は無理だし、シルヴァはまだレベルが低い。追いついてないからな。
「そういや、アリシャ」
「……何?」
「DDDってどんなスキルだ?」
俺は物知りなアリシャに、『闇竜の討伐』で手に入れたまま使ってない『ドラゴン・ドラグーン・ドラグオン』について、聞いてみた。
「…………持ってるの?」
アリシャは若干驚いたように、他ほとんどが責めるような顔をして睨んできた。
「あ、ああ。『闇竜の討伐』でな」
珍しく怒っているようなアリシャに戸惑いながら、答える。
「……あまり人前で使わないで。DDDを含む、五つのアルファベットが三つ並ぶ伝説のスキルは、他のプレイヤーには知らせない方がいい。…………特に、“乗っ取り女王”の手下には」
「……どういうことだ?」
アリシャは深い部分でこのゲームに関わってるんじゃないかと、一瞬だが、思う。
「……詳しい説明は後。ただし、クイーンの手下にその五つのスキルが取られるのも危うい。リューヤが運良く全部手に入れてくれればいいけど」
「……まあ、アリシャの事情は話せる時に話してくれればいい。その五つのスキルって、どうやって手に入れるのかわかってるのか?」
「……不明。DDDって、正式名は?」
正式名はアリシャでも知らないのか。
「『ドラゴン・ドラグーン・ドラグオン』。ドラゴンのスキルなのはわかるけどな」
「……ん。どれがどのアルファベットかも知らない」
「……そっか。アリシャが知らないんじゃ仕方ないか。んじゃ、クエスト行ってくる」
「……いってらっしゃい」
アリシャに見送られて、俺は『三蛇の巣窟』のクエストに向かった。
▼△▼△▼△▼△
「……」
俺はある巨大な洞窟の前に来ていた。
『三蛇の巣窟』のクエストの場所だ。別名スネーク・ヘブンズと呼ばれている。
蛇の天国。洞窟の主である三蛇の庇護により、蛇は安心出来る。
「……あなたが今回来てくださった方ですか?」
「っ!?」
後ろから話しかけられて、驚いて振り向く。
「そんなに驚かないでください」
話しかけてきたのは、女性だった。
しかし、上半身が女性で下半身が紅い蛇だった。
「蛇!?」
俺は身構える。
「……そんな反応をされると悲しいです」
そいつは悲しそうな顔をする。
「当たり前だろ。俺はこの洞窟の蛇を討伐しに来たんだぞ」
「それもそうですが、話を聞いてください」
「聞くだけなら」
俺は頷く。人間に警戒されて悲しむのが少し気になった。
……今アルティはいない。このクエストはテイムモンスター、サモンモンスター禁止だ。
「私はこの洞窟の主の一人、ナーガです。私は人間を襲うのを止めようと言っているのですが、他二人が人間を襲うのを止めないんです。だから、こうして依頼して他二人を討伐してもらいたいんです」
……大体の事情はわかった。
「……わかった。俺としても、美人と戦うのは控えたい」
ナーガって結構美人なんだよな。
紅い長髪に黄色い瞳。上半身にタンクトップを着ているだけ。
「……褒めても、何も出ませんよ」
ナーガは照れて顔を真っ赤にして言う。
「まあ、行こうぜ」
「はい」
と言うわけで、俺はナーガと洞窟に入っていった。
「……出ないな」
蛇がいるって聞いたんだが、一匹もいない。
「私も主ですから。主に逆らう者はいません」
なるほど。
結局、奥に着くまで一匹も戦わなかった。




