バハムート見せ合いっこ
「……見せて」
「また今度な」
俺とアリシャはこのやり取りを数分間やっていた。
「……リューヤの意地悪」
アリシャは拗ねたような顔をする。
このやり取りは、クイーンが現れた後、俺が無限迷宮に行ってため見れなかった『バハムートの襲来』のMVP報酬武器を見せて欲しいと言っている。
それを俺が拒んで、こうなったわけだ。
「そう言うなよ。いつか見せるからさ」
拗ねるアリシャを宥める。
「……むぅ。いつかじゃ遅い」
アリシャ、武器のことになるとなると頑固だからなぁ。
「リューヤさんいるかな?」
「リューヤいる?」
二人の少女が店に入ってきた。
『双子のエルフ』のダブルギルドマスター、エフィとナーシャだった。
「いるけど、何か用か?」
何かあったのか?
「大した用事じゃないんだけど、お互いのバハムートを見せ合いっこしよ、ってことなんだけど」
「ああ、そういうことか。いいぜ、草原に行こうか」
バハムートは街中で出すもんじゃない。
俺達四人、アリシャも含めて、西の草原に向かった。
▼△▼△▼△▼△
「バーハちゃん!」
エフィがモンスターBOXからちっちゃな赤いバハムートを出す。
「おっ? 突然変異か」
「うん。レッドバハムートのバーハちゃんだよ」
「……レッドバハムートは鋼属性に加え、赤い属性を持つ。火とか熱とか」
俺のツインフレア・オブ・チェンジエッジと似たような感じか。
「【サモンバハムート】」
ナーシャが青いバハムートを召喚する。召喚するのは大人だ。
「……アイスバハムート。バハムートの突然変異で、氷と鋼属性を持つ」
ほうほう、氷のバハムートか。
「二人共突然変異って、凄いな」
ウチのアルティみたいなもんだろ?
「ラウネちゃんはダークバハムートだって」
「……ダークバハムート。バハムートの突然変異で、闇と鋼属性を持つ」
皆突然変異か。
「そっか。皆突然変異なんだな」
案外、普通のヤツの方が少ないかもしれないな。
「……リューヤは?」
アリシャが催促してくる。
「はいよ。シルヴァ」
俺はモンスターBOXからちっちゃなバハムートを呼び出す。
鋼ではなく、銀。尻尾の先に剣のようなモノがある。
「っ!? ……シルバーブレードバハムート。バハムートの突然変異で、銀という属性が使える。全金属を使える。鋼の上位属性みたいなモノ。シルバーバハムートの変異種、希少種で、魔法でいう『剣魔法』に近いモノが使える」
アリシャが驚いて言う。
『剣魔法』ってのは、魔法で剣を作るモノだ。【火剣】とか【氷剣】みたいな感じでな。
「よいしょっ。それで、もう一体の方な。【サモンバハムート】」
俺はシルヴァを両腕で抱えて、もう一体のバハムートを召喚する。
黄色いバハムートが召喚された。
「……サンダーバハムート。バハムートの突然変異で、雷と鋼属性を持つ」
「ま、こんな感じだ」
ボーッとしている二人に言う。
「……結局、私達より強い種なんだね」
「種なんて関係ないだろ? 俺のクリスタとリヴァアだって、他の二体と同等に戦えるからな」
「……成長率がちょっと違うから。そこは個性」
アリシャもフォローしてくれる。
「そうだね。あと、リューヤさんにお願いがあるんだけど」
「ん?」
エフィが言う。何だろうか?
「『闇竜の討伐』というクエストだよ。それを手伝って欲しいんだけど、いい?」
「ああ。それで、内容は?」
「……普通は内容を聞いてから受ける」
「……あ、うん。闇竜っていう別名を持つ、ダークドラゴンを討伐するのに協力して欲しいの」
……俺に頼むってことは、難易度は高いか。ただ連れてくだけなら新メンバーでもいいしな。
「テイムモンスターとサモンモンスターにしたいわけか。報酬だろ?」
「うん。けど、各一体ずつだから、リューヤさんには『召喚魔法』と『テイム』をセットしないで欲しいの。手に入る闇竜剣・ダークドラゴンはあげるから」
「マジ!? 聖竜剣・ホーリードラゴンの対みたいなヤツか? だったらいいぜ。それでいこう!」
俄然、テンションが上がった。
「……闇竜剣・ダークドラゴン。リューヤの言う通り、聖竜剣・ホーリードラゴンの対の存在。今のレベルじゃ無理」
「「「……」」」
邪悪竜並みだったら、難しいよな。
「聖竜剣・ホーリードラゴンじゃダメなのか?」
邪悪竜にはかなり効くらしいけど。
「……ん。聖竜剣・ホーリードラゴンは確かに強力。でも、闇竜は邪悪竜より強いから」
そうなのか? 名前は邪悪竜の方が厄介そうだぞ?
「邪竜、暗黒竜、闇竜、黒竜、暗竜、邪悪竜の順だから。闇竜の方が強い」
暗竜と闇竜って読み方が同じなんだが。
「まあ、もう少しレベル上げてから挑戦しようぜ」
「うん。アリシャちゃんの情報は正しいから、私達もレベル上げてからリューヤさんを誘うね」
「はいよ。じゃあな、二人共。新メンバーの指導頑張れよ」
「うん。じゃあね、リューヤさん、アリシャちゃん」
「またね、リューヤ、アリシャ」
軽く手を振って去っていく二人。
「さて、俺も何か報酬のいいクエスト探すかな」
「……じゃあ、『三蛇の巣窟』がいいと思う。難易度はそう高くないのに、死者は十人を越えてる。リューヤなら大丈夫だと、思うけど」
アリシャは言って、不安そうな顔をする。
「わかった。念のためシルヴァのレベルを上げてからな。じゃ、帰ろうぜ」
俺はアリシャに言って、街に戻った。




