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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
最終章

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161/165

共に戦う仲間達と

「頼んだぞ、皆ッ!!」


 太陽の落下は止まらない。ジュンヤが盾を上に構えて太陽の落下地点の中心に立っている。

 味方全員を庇う【全滅か自死か(オール・オア・ダイ)】を発動している彼が攻撃を全て受けてくれるので、その間俺達は安心して攻撃できる。

 アタッカー達は思い思いの攻撃手段を一斉に使ってラスボスを攻撃していた。


 しかし思ったより減りが悪い。ラスボスだけはあって、おそらくこれまでで一番のステータスを誇っているのだろう。


『わー。チクチクするねー』


 攻撃を受けている女王は遊んでいるような気楽さだ。いや、相手からしてみればこれは遊びなのだろう。

 攻撃を繰り返す中、遂に太陽が着弾する。ジュンヤ以外にダメージは入らないが、白い光の球体が炸裂するエフェクトは眩しく、攻撃を中断せざるを得なかった。フィールド全体に影響を及ぼしているようなので、間違いなく全体攻撃と見ていいだろう。


 エフェクトが収まってまず確認すべきはジュンヤの状態だ。彼がこの一撃を耐え切れるかが希望を掴む一手となる。


「――……」


 ジュンヤのHPはレッドゾーンだった。ギリギリ残っている。『死地にて戦え』が発動しているならHPが1しか残らないためほとんど見えないはずだが、HPが残っていることを視認できるくらいには残っていた。


「ジュンヤ!」

「ああ、発動していない!」


 メナティアの声に、やや喜色を乗せて返す。……第一段階は突破か。


『じゃあ、普通に攻撃しちゃうねー』


 だが、敵はそこを突いてきた。右一番上の腕に持った大剣を掲げて、ジュンヤに向かって振り下ろす。当然だが、大技を耐え切ってもその後の攻撃で『死地にて戦え』が発動してしまっては元も子もない。


「させるかッ!!」


 速度もかなり速く、ステータスの高さや武器そのモノの大きさなどから考えて威力も高いだろう。ジュンヤが大技に耐え切れるようにするには、効果時間が短いアビリティなどの強化もあったため、通常攻撃一発でHPが持っていかれる可能性が高い。

 敵の狙いがわかってもジュンヤではどうすることもできないため、そこは機動力の高いメアが対処した。


 大剣の刃に対して横からぶつかるように無理矢理軌道を変えたのだ。


 強引なやり方だったためメアのHPも削れてしまうが、すぐに回復が行われる。

 今回の攻略に当たり、回復役はそれぞれ担当を分けていた。特に大きな戦力となるプレイヤー達と、壁役。もし後方に被害があった時など。メアはメアが遠慮なく攻撃できるように、彼のHPを回復する担当が控えているのだ。


『【太陽生成(サンメイク)】っと。ん~、やっぱりやるねぇ。思ったより楽しめそうかなー』


 少し暗くなっていた景色が、瞬時に創られた太陽によって明るく照らされる。……次弾装填完了ってことか。ラスボスにMPなんてモノがあるのか怪しいが、大技を連発するだけのボスにする気はないだろう。多分ここぞという時にまた使うんだろうが。


『【武具瞬閃モーション・アジリティ】。どんどんいくよー?』


 アビリティを使用して自身になんらかの強化を付与した女王は、そのまま六本腕を機敏に振り回して攻撃を仕かけてくる。


「ぐわあぁぁぁぁ!!」


 盾を構えて受けた壁役の一人が大きく吹き飛ばされた。


『んあー』


 気のない声と共に口を大きく開けて、口の前に光を集束させていく。十中八九光線だろう。しかも吹き飛んだプレイヤーに狙いを定めている。


「チィ!!」


 そこもメアが救助に向かった。だがあまり余裕がなかったために蹴飛ばす形になり、代わりにメアに直撃して墜落する。……HP満タンの状態から四割。しかも今のメアは相当防御力が上がってるはずだぞ。


『頑張るねー』


 小さい虫の悪足掻きを楽しむかのように言いながらも、六本腕の攻撃は止まない。……俺は攻撃を回避できるが、このままじゃジリ貧だ。ほとんどの壁役が堪えられる威力じゃない。あと多分だが吹き飛ばす効果もある。盾で受けるのが不向きな相手だ。

 となると腕を減らすのがこの戦いを有利にするための条件。それは他の皆もわかっているだろうが、ラスボスの部位を破壊するなんて真似がそう簡単にできるとも思えない。……【絶牙】を当ててどうか、ってところか。


「――【絶牙】、発動」

『わ、それ怖いなー。なにするつもりかなー?』


 俺が全身に黒い影を纏うと同時に、ラスボスが俺に目を向けてきた。俺達のスキルはある程度割れているし、なんならハッキングで全て見てしまっている可能性が高い。だからどれを警戒すべきかわかっているのだろう。俺が数多く持つアビリティの中でも最高峰の攻撃力を誇る【絶牙】は警戒するに値するはずだ。

 身体が大きい故に攻撃は当て放題。発動することでステータスの大幅上昇がかかるため、攻撃を避けるのも楽になる。


 とはいえ油断は禁物だ。ラスボスが持っている六つの武器の一つは杖だ。叩く攻撃もできるが、主に魔法による攻撃をしてくるので軌道が読みづらい。ただ接近していれば他の五本は腕が細長いせいもあって近くを攻撃しにくいはずだ。時折口からの光線を放ってくるが、溜めが大きいので避けやすい。そのせいで後方のプレイヤーに攻撃がいってしまうのは申し訳ないが、その辺は気にするなと事前の会議で言われていた。


「――【絶牙】、抜刀ッ!!!」


 最大まで蓄積した段階で、俺は腕の一本に向けて強烈な一撃を叩き込む。

 大剣、槍、杖、刀、ハンマー、斧。この六つの武器を持つ腕から一本を斬り落とすとすれば。プレイヤー達が一番受けにくいヤツを狙うべきだろう。

 全体を任意に攻撃できる杖。これが一番厄介だ。俺は迷わず杖を持っている腕を斬りつけた。


『いったああぁぁぁぁ――いなぁもうっ!!』


 敵本来の悲鳴と女王の声が同時に響く。一発で斬れるかは微妙なところだったが、見事腕を斬り落とすことができていた。しかし技発動直後を狙われて、仕返しとばかりに迫ってきた大剣が俺の右足を斬り落とす。すぐに残HPを確認。六割は持っていかれていた。俺の防御力が低めであることを考えれば上出来か。更に迫ってきた槍の柄を剣で弾くことで吹き飛ばされ、その途中で回復が行われたので地面に激突してもHPが全損することはなかった。


「アルティ」


 達成感も喜びも今はいらない。【絶牙】が使えなくても充分強いが、それならアルティにも戦ってもらい他のアビリティを使った方がいいと思う。アビリティを解除してアルティを呼び出すと、


「そのままでも大きくなっても、人型になってもいい。好きに戦ってくれ」

「キュウッ!」


 戦力の一人として参戦してもらうことにする。アルティは俺の胸の前に来るとぼふん、と人型になってぎゅっと抱き着いてきた。


「いってくるね」

「ああ、気をつけてな」


 華やかな笑顔を見せて離れると猛然とラスボスに向かって駆けていった。因みに人型になっても【グロウアップ】で大人になることができ、その姿は俺が見惚れるほどの美人さというのは本人の言だ。どこまでが本当かはわからないが、戦力としても格段に向上するのでいざという時に使いたい。制限時間があるのでタイミングを見計らう必要はあるが。ステータスだけで言えばアルティはプレイヤーより強い。テイムモンスター故の縛りがあると思うのだが、人型アルティはそこを跳び越えているのだ。参戦するだけでも心強い。


 俺が持っている他のテイムモンスターは大きすぎて他のプレイヤーの邪魔になってしまうなどの理由により待機中だ。『UUU』と単独行動は両立しないため、参戦しやすい方から使っていくとしよう。


「【銀鋼竜騎士・シルバーブレードバハムート】」


 応用のできるシルヴァとの『UUU』を発動した。シルヴァは本来成体の姿で固定されるはずだったのだが、アルティを見てか小さいままでいたいと思い姿が小さいままになっている。大人の巨大な姿にもなれるのだが、小回りの利く小さな姿も重宝していた。なので早めに使って貢献してもらいつつアルティのように単独で行動してもらうとしよう。


『【融解光線(メルトレーザー)】』


 口元に灼熱の光を集束させ、斜め下の地面に向けて放つ。着弾した箇所が赤熱して溶けていた。


「回避-ッ!!」


 すぐ近くにいたエアリアが声を張り上げる。だが壁役は回避が難しい。そしておそらく壁役には受けられない攻撃だ。

 顔を上げるように光線の範囲を伸ばしていく中、避けられなかった壁役の一人が残りHPの八割を消し飛ばされて退場した。他のプレイヤーはなんとか回避していたのだが、プレイヤーに当たらない高さまでいった途端早く顔を上げたことで上空にいたメアに光線が当たってしまった。


「ぐっ!?」


 機械の片翼が焼かれた程度だったためHPは消し飛ばなかったが、それでも少なくないダメージだ。……メアがフォローに回ろうとしてるせいか被弾が多いな。高威力の攻撃ほど、最後の戦いで妹が間違っても死なないようにと思ってるんだろうが、ちょっと心配だな。とはいえ俺も他人の心配をしてる場合じゃないか。


 シルヴァの能力を使って戦闘を続けている。ラスボスのHPは徐々に減っていっているが、【絶牙】以降大きな減りはなかった。


『おー、二割減ったねー。じゃあ第二段階に移行するよー。引き続き頑張ってねー』


 女王の声が聞こえて、敵の全身が光り輝く。同時に俺が斬った腕も再生されてしまった。更に額に縦の目が出来て、見開くと敵の周囲に赤黒い紋章が出現する。紋章から赤黒い刃が無数に発射されていく。

 当たってもダメージは大きくないが、一定時間刺さったまま残るようだ。加えて、額の目が俺を真っ直ぐに捉えた瞬間身体が動かせなくなった。


「ッ!!」

『チャンスだねー。【大地烈斬(ガイアスラッシュ)】』


 俺の動きが止まったと見て女王が動く。大剣を大きく振り上げて地面に叩きつけた。叩きつけた地点から巨大な斬撃が地を這い俺にまで飛んでくる。なんとか身体が動かないか足掻くも全く動く様子はなく、銀を操って分厚い壁を形成しなんとか耐えられるよう調整した。

 直撃する寸前で解除され、動いたと思った時には半身を抉られる。HPは残ったが凶悪だ。壁で視線を阻害しても金縛り? は解けなかったので一度発動したら一定時間解除されないタイプと見た。


「額の目に見られると五秒間動けなくなる!」

『そうだよー。対象は一人だけだけど、ランダムで動けなくなる術をかけるようになってるの。ランダム性は弄らないであげるからねー』


 俺が全員に告げると、女王から補足してきた。バレても不都合のない効果ということか。後は隠れていれば防げるのかどうかも試したいが……。


「視界を塞ぐ!」


 俺は銀の翼で空を飛び接近する。そのまま額の目を銀で塞いだ。俺の次のプレイヤーが動けない状態だが、これを維持して次のプレイヤーに効果があるかどうかだが。


『無駄だよー。視線は誰にかけたかをわかるようにするためのモノだからねー』


 真実を言っているとは限らないとは思ったが、実際なんの不自由もなく三人目にかけられてしまった。……チッ。無効化はできないか。石化なら俺には効かないはずだが、別分類の束縛らしい。タイミングが悪ければ厄介な効果だが、問題は大きくないと見ていいのか?

 とはいえ最悪なタイミングで発動する可能性はあるし、女王がランダムから指定に変更してくる可能性もある。今はランダムにしているだけで俺を狙っていた可能性もなくはないんだが確証は持てない。

 しかもそのまま銀で貫いて破壊してしまおうとしたが、全く攻撃が通らなかった。破壊されない部位に設定されているのかもしれない。


 だが、俺がランダムで引き当てたのだとしてもそこを相手が狙ってくるというのは充分に厄介だ。


「動けなくなった仲間が狙われたなら互いにフォローし合ってくれ!」


 ジュンヤが槍の一撃を受けながら指示を飛ばす。『SSS』の効果も高まってきて、かなり安定した防御ができるようになっていた。女王もそれはわかっているのかジュンヤに対して杖の魔法を使うことはない。武器攻撃に関してはジュンヤから受けに行っているのと範囲が広いため半ば諦めているようだ。

 ただダメージは無効化、軽減できても吹き飛ばし効果は受けてしまうらしく、完全に受け切るというのは難しいようだ。


 ジュンヤの活躍もあってか、魔法がわかりやすく後衛を狙うようになっていった。

 リィナが張っているフィールドは経過時間に応じて徐々に拡大していくらしく、重要な回復を担当するプレイヤーの何人かはフィールドの範囲内に入って魔法だけは無効化しているようだ。


『【雷撃天雨(ライトニングレイン)】』


 と思っていたら後衛全体を雷撃の雨が襲った。リィナがいる周囲以外は雷に打たれてHPが削られてしまう。前衛の生命線でもある後衛が減るのはマズい。特にツァーリ達は攻撃特化故に防御力が低めだ。魔法防御の方が高いとは思うが、それでもかなり減ってしまっている。

 リィナのフィールド内にいて無事だったプレイヤーが中心になって後衛全体をすぐに回復していく。その間、前衛の俺達は後衛にこれ以上攻撃させないよう攻撃を続けるしかなかった。


「くっ……!」


 空中でメアが術を受けて停止する。動けなくなるのなら墜落するはずだが、その場で固定していた。身体を停止させるのではなく、空間ごと固定してしまうのかもしれない。


『隙見っけ。【極光波動(グレイトライト)】』


 そこに天上から極大の光線が降り注いだ。


「ぐうぅ……!!」


 防御も回避もできない状態での直撃。機動力のある俺も姉ちゃんもメアの位置から遠かったため、カバーすることができなかった。HPがごっそりと削れて、なんとかレッドゾーンで留まる。


『【流星掃射(メテオスナイプ)】』


 続けて女王がアビリティを使った。上空でなにかが光ったかと思うと、高速で小型の隕石が落ちてくる。隕石は一つだけだが、おそらく対象指定。メアを確実に仕留めに来ていた。メアの回復役は後衛の立て直しに忙しく、メアはまだ動けない。俺や姉ちゃんなど助けに行けそうな者を六本腕の攻撃で妨害していた。


「避けろ、メア!!」

『当たるまで動けないよー。間に合うように撃ってるからね』


 俺は叫ぶが、他でもない女王に否定される。……クソッ。全て計算通りってわけかよ。ってことはあの動けなくなる術も指定できるって思った方が良さそうだ。


「……クソッ」


 動けないメアは頭上から迫る隕石を目だけで追って、しかしどうすることもできない。回復役が気づいて魔法を唱えるも、もう間に合わない。

 小さな隕石はメアに激突して爆散した――。

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