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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
幻想世界の異常編

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『黒の兵団』殲滅

「……で、お前って喋れたんだな、シルヴァ」


 俺達は歩いて山の反対側に向かって歩いていた。俺はその道中でシルヴァに尋ねた。


「……」


 だがシルヴァはぷいっとそっぽを向いて答えない。……あんなにカッコ良かったのに、何でだろうか。


「シルヴァ?」


「……」


 なるべく優しくを声をかけてもそっぽを向いたまま答えない。


「……何で綺麗な声なのに喋らないんだ?」


 だがここで引いては聞くチャンスを逃してしまう。俺はシルヴァの無視を無視して尋ねる。


「……」


 するとシルヴァがピクッと反応した。


「……綺麗、ですか?」


 透き通り凛とした綺麗な声を丁寧な口調で紡ぎ、シルヴァはようやく反応してくれた。……まだ俺を方を向いていないが、これは進歩だ。


「ああ。アルティもそう思うよな?」


「キュウッ!」


 余程さっきのシルヴァがカッコ良かったんだろう。アルティは俺の肩ではなくシルヴァの首に掴まるようにして乗っていた。


「……そうですか」


 シルヴァは照れたのか頬を染めて少し俯いた。……シルヴァって銀色の身体をしてるから分かりやすいんだよな。表情の変化は薄いから普段は大丈夫なんだが。


「……それで、何でいつもは話さないんだ?」


「……アルティとは話しました。フレイさんやリヴァアさん、クリスタさんやナーフィアさん、リエラさんやシャーリーさんとも話しました」


 ……つまり俺以外の全員と話したということらしい。


「……何で俺とは話さないんだよ」


 俺は少し不満そうな空気を出して言う。……だって俺だけに話さなかったっていうんだぜ? そりゃ不満にもなる。俺一応、お前達の主なんだが。


「……特に意味はありません」


 シルヴァはぷいっとそっぽを向いて言う。……怒ってるのかもしれないな。何故かは分からないが。


「……怒ってるのか?」


「……怒ってません」


 だが俺が恐る恐る尋ねてみると、シルヴァはそのままの口調できっぱりと言った。……違うのか? まあ本人が怒ってないって言ってるんだから怒ってないとしても、何で俺だけにそんなに冷たいんだろうか。母親を殺した一人だから――ってのはさっきのバハムートとの一件で払拭されたからな。本気で分からない。


「……」


 アルティが何やらシルヴァにコショコショと耳打ちしていたが、声を小さくしているので分からない。聞こえたとしても、アルティとは長い付き合いになるが身振り手振りがないと読み取るのは難しいかもしれないのだが。


「……そうですね」


 アルティの耳打ちに対しシルヴァは頷き、スッと俺の隣へ寄ってくる。……何でかはよく分からないが、近付くように言われたのかもしれない。


「……シルヴァ」


 だが俺がそれを聞く前に、邪魔者が入った。足音を聞いたのか異様な気配を察知したのかは自分でも分からないが、兎に角そいつらに気付いた。


「……分かっています」


 俺が真剣な声音で言うと、シルヴァも同じように真剣な声音で応えた。アルティ、シルヴァ、フレイの三体はすでに気付いていたようだ。俺よりも五感が優れているからな。ってことは味覚が優れたアルティやシルヴァが好んで食べる女将の料理は本当に美味しいということなのかもしれない。


 ザッザッザッザッ。


 一定の間隔で足音を刻む軍隊の行進のようなそれに気付いた俺達は、表情を真剣なモノにして身構える。


「……」


 いずれも黒で全身を覆った集団、『黒の兵団』だ。人数は五十人程で先導するように歩くヤツは漆黒の騎士のようだった。……“黒騎士”か。確かに異様な空気と強者の気迫を纏っている。十人しかいない強者らしいからな、きっと強いんだろう。


「……先頭のヤツは俺がやる。――『ウエポンチェンジ』」


 俺は三体を置いて先に先頭のヤツに向かって駆け出す。その途中『ウエポンチェンジ』を使って聖竜剣・ホーリードラゴンを左手に出現させた。


「……」


 黒いローブを纏った両手に短剣を逆手持ちしたヤツがいきなりこの中で言えばキングを取ろうとした俺に対し跳びかかってくる。


「……邪魔だ!」


 俺はこれでも、こいつらに対して怒っている。とりあえず幻想世界からこいつらを掃討したいと思う程度には。聖竜剣・ホーリードラゴンを両手で持つと、腰辺りに一閃し容赦なく真っ二つにして倒す。……HPの減りが大きいな。黒いし闇系統属性なんだろうか。それで聖属性を持つこの剣に弱いと。まあ分からないけどな。


「【グロウアップ】!」


 さらに襲いかかってこようとしたヤツを手で制した“黒騎士”は、腰の剣と盾を構えると、俺を迎え討つ構えを取る。俺は一対一に持ち込むため、アルティを大人に成長させ俺に遅れて続いた三体に周囲のヤツらを任せる。


「……っ!」


 三体は二十倍はないがかなり数で不利な戦力の差をモノともせず蹴散らしているが、俺は両手で持った聖竜剣・ホーリードラゴンで剣を裁き盾に攻撃するがなかなか破れない。……どうやら防御を主体に攻撃を展開するタイプの騎士のようだ。丁度『軍』のメッシュと同じようなタイプだろうか。


「……【聖竜・八咲(やつざ)き】!」


 俺は剣に聖の竜のオーラを纏わせ八連続攻撃を行う。だが防御は崩れないし大きなスキルを使ってしまったため隙が出来てあわやという攻撃を放たれる。……やっぱり隙がないのに大きいスキルを使うのは下策。でもやっぱり力押しで戦いたい。


「……仕方ないか。【レイヴンピーラー・アーノルド】!」


 『闇魔法』の系統と『羽根魔法』を組み合わせることで発見された『烏魔法』の一つ。烏の黒い羽根で構成された漆黒の柱が上下、左右、前後に渡るように虚空と地面から放たれた。……確かレベルが上がると縦横無尽から滅茶苦茶に攻撃出来るって話だが。


 何分数ヶ月前に発見された(もしくは報告された)ためそこまで上がっている者が少ない。


「っ……!」


 だが俺が放った魔法は相手を包み込んだが、剣で横一閃に切り裂かれてしまった。……面倒だな。


「……『ウエポンチェンジ』」


 俺は一気に押し切ろうかと、聖竜剣・ホーリードラゴンを左手だけで持ち、右手に闇竜剣・ダークドラゴンを出現させる。再度“黒騎士”に向かって突っ込みながら、


「……【ランス・オブ・パレード】!」


 俺が使ったのは『槍魔法』という様々な属性の槍を放つ魔法の内、魔力をかなり消費するがランダムに選ばれた属性の槍が三十本放たれるというモノだ。


 無数の魔方陣が展開され様々な属性の槍が“黒騎士”に向かって放たれる。俺はその後ろから駆け、槍と“黒騎士”がぶつかった時には懐に向かって一直線に走り、衝撃から晴れた“黒騎士”が気付き対処するまでの間に剣を盾を横に払い無防備な状態にさせると、二本の剣を乱舞させてHPを削る。


「……【聖なる竜の一撃】、【闇たる竜の一撃】!」


 俺は追撃として各剣に元となっている竜のオーラを纏わせ聖竜剣を上から、吹き飛んだ“黒騎士”を下から闇竜剣で攻撃し、“黒騎士”のHPは半分を切った。


「――!」


 “黒騎士”はドス黒いオーラを全身から溢れさせると、盾を放り投げて剣を両手で持ち上がった速度で俺に突っ込んでくる。


「……チッ!」


 どうやらドス黒いオーラは“黒騎士”がHPを半分切ると発動させるステータス強化のスキルらしい。俺は舌打ちして二本の竜剣で“黒騎士”の攻撃を受ける。だが一撃一撃が重く、じりじりと後退させられていく。


 ……どうする? 冷静に見ていれば受け切って耐えることも出来るが、ここは『ドラゴンフォース』を使って倒すか。『闇竜紋』や『ドラゴン・ドラグーン・ドラグオン』でもいいが、一気に決めるのが得策か。


「……『ドラゴンフォ――」


 俺が『ドラゴンフォース』を発動しようとすると、銀が“黒騎士”に絡みついて動きを阻害した。俺はその隙を逃さず一歩踏み込んで聖竜剣を一閃し、兜のついた首を切り飛ばす。


 ……何とか倒せたが、こんなヤツが十人いるという。MP消費が大きく強い強化スキルを使わないと一人じゃ倒せないとなれば、トップクラスのプレイヤーでも二人ぐらいで対応するのが一番安全かもしれない。


 どこかの忍者おっさんは対人戦闘に自信ありと言っていたので一人で戦うかもしれないが。


「……ありがとな、シルヴァ」


 すでに他のヤツを殲滅したらしい三体は、“黒騎士”を倒した俺の方に寄ってくる。大人アルティを子供に戻しつつ、俺は最後に手を貸してくれたシルヴァに礼を言って頭を撫でる。


「……いえ。大したことではありません」


 シルヴァは頭を撫でられるのが恥ずかしいのか頬を赤く染めていたが、冷静な声音で言った。


「……とりあえずバハムートんとこ戻るか」


 俺はシルヴァから手を放し、肩に飛び乗ってきたアルティの頭を撫でフレイにも労いの意味を込めて頭を撫でてやると、


「……助けなければ良かったと思います」


 何故か拗ねた様子のシルヴァがそんなことを言った。どうやら気に障ることをしてしまったようだ。そんなに頭が撫でられるのが嫌だったのかと思ってしまう。……シルヴァも子供の頃はちょこちょこ後をついて回るようで可愛かったのに、今じゃ反抗期かもしれない。これが大人へと近付いていく娘の反抗期というヤツなのか。


「……怒るなよ」


 俺は苦笑してシルヴァの頭を撫でる。……嫌かもしれないが、シルヴァは頭を撫でられると怯むのだ。そして怒りを先送りにしようという魂胆だが。


「……」


 シルヴァは俺に頭を撫でられるのに身を任せているが、ぷいっとそっぽを向いてしまった。


「……てめえやっぱぶっ殺す!」


 とは戻ってきた俺達を迎えたバハムートの言葉である。

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