夢
「誰?そこで泣いているのは・・・どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」
赤く燃え上がる炎の中で泣いている女の子がリノアの赤い瞳に映った。
「やだ・・・・」
女の子の口から言葉がこぼれた。
「おいてかないで!!」
炎の中で女の子の声が響く。
女の子の周りにはリノア以外に誰もいない。
「・・おいてかないで・・・」
リノアは女の子に近づこうとするがなかなか足が前に進まない。
「あっ!?」
突然光がリノアを包み込んだ。
『・・ア』
(誰なの?)
『・ノア』
(・・・?)
「リノア!!」
(えっ・・・・)
「リノア!早く起きて」
バサッ!
聞き覚えのある声にリノアが飛び起きた。
寝起きで意識がもうろうとしているリノアの前に心配そうな顔をした、ミア ティースの顔があった。
「ミア?どうしたんだ、そんな顔して。」
リノアはそう言ってベットからおりる。
「どうしたんだ、じゃないだろ。リノア、お前またうなされてたんだ。大丈夫なのか?」
そう言いながらアール スウェルが部屋へ入ってきた。
「大丈夫だよ、ただ変な夢見ただけだからさ。それより早く支度しないとな。仕事仕事。」
リノアは2人に背を向ける。
「村を・・・焼かれた時の夢を見たのか?」
「・・・」
一瞬リノアは言葉を失った。
「もうその話はしない約束だよ。思い出したくもない・・・。」
リノアの代わりミアの声が部屋に響いた。
ミアの黒い瞳には少し光るものがあったが、彼女はそれを必死に隠そうとしていた。
バン!!
「リノア!!」
沈黙を破ったのは、双子のレンとランの馬鹿でかい声だった。
「早く行こうぜ!!獲物が逃げちまう。」
「みんなリノアの事待ってるよ。」
レンとランは待ちくたびれた様子で言った。
「だそうだ、お頭。」
「行こう!リノア。」
いつの間にか部屋の暗い雰囲気はなくなり、アールとミアに笑顔が戻る。リノアは頷き、
「クロス盗賊団出撃だ」
と笑みをうかべながら言った。




