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赤の記憶  作者: えかな
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月夜の影

月の明かりに照らされ、人影がうかぶ。

「いたぞ!!あっちだ!!絶対に逃がすなぁ〜」

役人達の怒鳴り声が夜の砂漠の町に響き渡る。

本当なら昼も夜も人々であふれかえっているはずの王都。

しかし町の家々からは一筋の光もなく、ゴーストタウンのように静まり返り、役人達の声だけが響いている。

「待てぇぇ〜!!」

一瞬月の明かりが雲に遮られる。

さっきまで動いていた人影は跡形もなく消えていた。

「どっ、どこに行った!!」

「こっちにはいません!」

役人達は見失った影を探し、また駆け回る。

新しい王が即位してからというもの砂漠の治安は悪くなる一方だった。

「隊長!申し訳ありません。やつらを見失いました。」

数名の若い役人が隊長らしき人に駆寄る。

「またか・・・。今月に入って何回目だ。」

隊長は顔をしかめながらつぶやく。

「確か7回目だと。やつらいったい何者でしょう?まるで我々の動きを知っているかのようで。」

若い役人は不思議そうに言った。

「つい1ヶ月前には誰も知らなかったのに今や砂漠中に名前が知れ渡っている」

他の役人が答える。

「あぁ。悪どいやつからしか襲わない‘義賊’とちまたでは人気だと聞くが。」

「ふん!!盗賊は盗賊だ。お前達無駄口たたく暇があったらやつらを探せ!!」

いつの間にか集まってきた役人達に隊長の怒鳴り声が響く。

「はっはい!!」

役人達はちりぢりに散らばっていった。誰もいなくなった後、隊長は静かにつぶやいた。

「義賊・・クロス・・・盗賊団」

と・・・・

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