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36.小休止の理由

 たくさん誤字報告をありがとうございました!

 打っていて、疲れてくるとよく「インボウズ」が「インボズウ」になっていると自分でも気づきます。直しきれないので指摘していただけると助かります。


 さて、前からちょくちょく出て来ていた「アンデッド掃討」のお話です。

 戦争が別の戦争によって中断するのはよくあること。学園都市が本来戦うべき相手とは。

 戦勝祝いが終わると、ユリエルたちはすぐまたダンジョンの改造に着手した。

「イエーーーッ!!DPがいっぱいだー!!

 次が来る前に、ダンジョンをもっと長くするぞ!」

 今回の戦いで、ダンジョンはうなるほどのDPを手に入れた。

 元々カツカツでの運営しか知らないオリヒメにとっては、魂がどこかに吹っ飛んでいきそうな額だ。

 が、いつまでも悦に入って眺めている訳にはいかない。

 次の敵がいつまた来るか分からないし、ダンジョンは敵がいる階層を改造することができない決まりがある。

 やれるうちに、やれることをやらなくては。

 しかし、ユリエルはどこか気が抜けていた。

 柔らかい草の上にごろんと転がり、フサフサの毛虫を愛でのほほんとしている。

「あのー、ユリエル?

 いつまた敵が来るか分からないんだよね?」

 今回は大勝したが、オリヒメは気が気でなかった。

 教会が自分とユリエルを許すわけがないのだから、次は必ずまたあるはずだ。しかもダンジョンが成長する前にと、敵は急ぐかもしれない。

 だとすると、すぐにまた、今度は前より厳しい戦いに……。

「ああ、すぐ必要な改造はもうやった~。

 後はまたしばらく、虫さんたちに工事してもらわないと」

「って、浅いとこいじっただけじゃない!

 もっとこれからを考えてさ、深くするとか……!」

 ユリエルがやったと言い張った改造を見て、オリヒメはますます不安になった。こんなんで、前以上の敵を防ぎきれるのかと。

 しかし、ユリエルはすっかりくつろいでいた。

「あー大丈夫、前より強い敵はたぶん、しばらく来ない。

 冬の、聖神祭辺りまでは大丈夫だと思うなぁ」

「何か、事情があるのかね?」

 ワークロコダイルのシャーマンが、ふしぎそうに首をかしげる。これは本当に、ユリエルにしか分からないことだ。

「うん……そっか、みんなはよく知らないか。

 分かった、説明するね」

 ユリエルは、絡まった黒髪を毛虫からほどいて身を起こした。


「学園都市からもうちょっと離れたところにさ、ここよりだいぶ大きいダンジョンがあるんだけど、知ってる?」

 ユリエルの問いに、オリヒメは首を横に振り、シャーマンはうなずいた。

「ああ、アンデッドが主力の、聖者落としのダンジョンってとこだね。

 あそこの魔物にやられるとアンデッドにされちまうから、この辺の魔物も秋はあそこにゃ近づかないよ」

「そう、そこなんです!

 で、もうすぐ夏が終わって秋……そこが重要なんですよ」

 ユリエルは、ニンマリと笑った。

「この学園都市と聖職者を育てる学園は、元々あっちのダンジョンを抑えるために国に誘致されてできたの。

 だから今でこそ、不定期にアンデッドがあふれるなんてことはなくなった。

 でもあそこは深いし手ごわい敵が多いしで今も健在で、まるで挑戦するように定期的に魔物を出して人間を殺そうとするの。

 決まって、秋に……あそこの知能の高い魔物は『死肉祭』とか呼んでるわ」

 学園都市の戦力が最も動員される、毎年恒例のアンデッド掃討。それがこの、秋の死肉祭りである。

 ユリエルも、中等部で学園に来てからずっと参加している。

 このイベントは、聖者落としのダンジョンと学園都市の力のぶつけ合いだ。

 学園都市と教会は、ダンジョンの悪意と野望を挫くべく、死肉祭の少し前から戦力を投入してダンジョン内の戦力を削ぐ。

 聖者落としのダンジョンは、侵入してきた人間を食らってアンデッドとして戦力を補いつつ、死肉祭にダンジョン外に魔物を放出する。

 学園都市に多くいる聖職者がアンデッドと相性がいいこともあり、ここ数十年は人間の街や村に被害は出ていない。

 しかし、侮れぬ相手ではある。

 何より、ダンジョン自体が深いため攻略して止めるのも困難だ。

 そのうえ教会の上層部が腐っているため、攻略するより民に教会のありがたみを分からせるのに使おうと、抑えるだけで攻略しようとはならなかった。

 その厄介なダンジョンが暴れる時期が、近づいている。

「死肉祭を無事乗り切るために、教会もギルドもこれ以上戦力を失えないはず。

 だから、私が外を攻撃しなければ後回しにされると思う」

 ユリエルの話を聞いて、オリヒメは感心した。

「へえー、いいタイミングじゃないか。

 それなら、多少ゆっくりしてても大丈夫だね。運がいいこともあるもんだ」

「えへへ、実はここの乗っ取りを考えた時からそこは計算に入れてて……夏の終わりまで耐えれば、一息つけるかなって。

 追放されたのが夏が厳しくなってきた頃だから……うん、いいタイミングだった!」

 ユリエルは、感慨深そうに言った。

 この辺りの全人間から敵として追われるユリエルにとって、死肉祭はその手が緩むありがたいイベントだ。

 なので最初から、ここまで守り通せば何とかなると踏んで計画を立てていた。

 シャーマンが、感心して言う。

「なるほど、今回負傷した人間の回復や物資の調達まで考えたら、奴らはこっちに回す手なんかないね。

 むしろ、今回失った分をどう埋めるか頭をひねるところだ。

 あははっこりゃ大した嫌がらせだよ!」

「ええ、私を追放した奴ら、みんな困るだろうね!」

 シャーマンが笑うのに、ユリエルも黒い笑みを合わせた。

 インボウズも衛兵たちも冒険者も街の人たちも……あとひと月もすれば、ユリエルどころではない相手と戦わねばならない。

 このタイミングでユリエルに戦力を削られた以上、例年通りにはいかないだろう。

 だが、インボウズが冤罪で聖女を追放し、誰もそれを咎めなかったからこうなるのだ。少しは苦しい目に遭って、己のしたことを省みるがいい。

「教会は総本山や他の地域から援軍を呼べるから、負けることはないでしょうけど……インボウズがどんだけ転げまわるか見ものね!

 で、その間に私たちはここをもっと強化しておく」

 しかし、ここでユリエルは真顔で告げた。

「ただ、物事には順序ってものがあるわ。

 今回このダンジョンで多大な犠牲が出て、私たちに力を与えてしまったことは、教会やギルドも分かってるはず。

 そのうち、調査団くらいは来る可能性が高い。

 深く成長させるのは、それを適当なところで追い返して死肉祭が始まってからね」

 確かに今すぐ深くすることはできるが、これもタイミングというものがある。

 今回痛い目に遭った敵は、これからはこのダンジョンを注視していることだろう。それで急速な成長が見られれば、手段を選ばず潰しにかかられる。

 ここからは、駆け引きも重要だ。

 それもあって、ユリエルは今はゴロゴロと心身を休めていた。



 一方、インボウズたちはさっそくその対策にてんてこ舞いになっていた。

「ぐっ……一月後には死肉祭への対抗戦を始めねばならんのに、冒険者も衛兵も人手が足りん!

 一月あれば大半の負傷者は動けるようになるだろうが、貧しい者には癒しを恵んでやらんと復帰が間に合わんか」

 ギルドマスターが、はげかけた頭をかきむしる。

 インボウズと大将軍とギルドマスターたちは、今回の戦いの被害と残存戦力を確認し、頭を抱えていた。

 例年動員する数を考えると、どうしても足りない。

 教会軍の騎士や聖騎士は、それほど減っていない。しかし彼らの支援や露払いを務める冒険者と衛兵が、足りない。

 ギルドマスターが、眉間に山脈を作って歯ぎしりしながら訴える。

「どうしてくれるんだ!冒険者ギルドは、はっきり言ってまともに機能しとらんぞ!

 今回のダンジョン戦だけじゃない、前の賊や魔物の掃討でもかなりの被害が出とるんです!その損失を取り戻そうとして、今回無理をして犠牲になった者も多い。

 一体どれだけ、うちの人材を奪えば気が済むと!?」

 ギルドマスターは、立場の違いも振り切ってインボウズに噛みついていた。

 今一番苦しいのは、冒険者ギルドだ。

 教会に命じられた二度のミッションで、冒険者全体の3割に迫る死傷者が出ている。しかも、普段から仕事熱心な者たちの多くが失われた。

 本来アンデッド掃討のために来ていたBランクパーティーも、餌食になってしまった。

 このままでは冒険者ギルドは、アンデッド掃討どころか通常業務すら覚束なくなってしまう。

 ギルドマスターは、ひしひしと危機を感じていた。

「だいたいな、破門聖女を捕えるのも虫けらのダンジョンの管理も、本来あなたの仕事でしょうに!

 しかも、虫けらのダンジョンはレジスダンの襲撃以前にユリエルの手に落ちていたと?

 それで我ら冒険者に内通の嫌疑をかけるなど、言いがかりもはなはだしい!うちが払った糸の損害賠償に、迷惑料を乗せて返してもらいましょうか!!」

 虫けらのダンジョンで発覚した事実は、ユリエルの思惑と審問官の懸念通り、ギルドマスターの教会への怒りを爆発させていた。

 だがインボウズは、頑として突っぱねる。

「フン、冒険者のせいでない証は出ていない。

 それとこれとは別問題だ!」

 インボウズだって、いろいろと予想外の出費を強いられて、これ以上金を出したくないのだ。それに、ユリエルを捕まえられなかった件で冒険者ギルドを逆恨みしてすらいる。

「虫けらのダンジョンの管理は、おまえたちに下ろした仕事だ!むしろ君が僕たちに迷惑料を払うべきだろう!

 何度も冒険者に見に行かせて、異変を察知できんなど、怠慢が過ぎるわい!」

「それは、レジスダン襲撃後の卿も同じでしょう!

 それに、小娘一人にまんまと倒されるような冒険者しかあの仕事を受けないのは、報酬が足りないからです。

 しっかり仕事をしてほしければ、正当な対価をよこせよ!!」

 こう言いながらギルドマスターもしっかり報酬を中抜きしているため、同罪だ。

 事情をだいたい察している審問官と鑑定官は、死んだ目をして宙を見つめている。

 このあまりに不毛な言い争いに、オニデスがこめかみをピクピクさせながら割り込んだ。

「お二人とも、今論じるべきはそれではないでしょう!!

 こうしている間にも、将来のために打てる手は数えきれないほどあるのですよ!今この時間が傷口を広げていると、お分かりになりませんか!!」

 叩きつけるように言い争いを終わらせると、ギルドマスターをにらみつける。

「おまえは、誰のおかげでその地位にいられるのか考えてみるがいい。我らに逆らった者の末路は、何度も味わったはずだ!

 ……おまえがそうなりたいか?」

 ギルドマスターは、ぐっと唇を噛みしめた。

 味わってきたとも……謂れなき罪で破門されて泣き叫ぶ、元聖女たちを。希望を与えたり取り上げたりして、弄んできたとも、

 ギルドマスターはインボズウと癒着していたため、楽しむ側に回っていられた。しかし、もしそれを自分から切ろうものなら……。

「むぐぐぅ……だが、しっかり仕事ができる体制を整えてもらうぞ!

 そうでなくては、働きたくとも働けぬからな!」

 ギルドマスターは、観念して言い放った。

 オニデスは冷たい目で一瞥し、今度はインボウズの方を向いた。

「よろしい、今後の働きに期待しよう。

 だそうですので、枢機卿、冒険者に慈悲を。

 なに、予算をかけずとも動かせる駒はありますよ。枢機卿はこの学園の理事長であられるのですから。

 回復役なら、特に」

 その言い方に、インボウズは悪どい笑みを浮かべた。

「なるほど……冒険者共に恩を売りつつ、ユリエルの敵をもっと増やしてやるか。実習ということにすれば、給料も払わんでいいしの!」

 自分が損をしない方法を見つけると、途端に機嫌が良くなるインボウズ。オニデスは、そんな上司の扱い方を心得ていた。

 そして、自分の子以外の学生には鬼のように冷徹だった。

 インボウズの懐をできるだけ傷つけずに搾りやすいところから絞るやり方を、この出世の鬼は何より得意としていた。

 すると、その方法ならインボウズを動かせると気づいたギルドマスターが、にわかに下手に出て言う。

「さすが理事長、学園の力は全てあなたの力であられる。

 ここで一つ、自分も学園の力をお借りしたいことが……」

 ギルドマスターは、小声でインボウズにささやいた。

「ユリエルを追放する時、あの尻軽女の名前を出されましたかな?ユリエルも冒険者共も、うまく誘導されておりまして。

 民の人気取りにも、使えるかと。

 それに世の中にそういうものだと思わせておけば、いざという時は……」

 インボウズも、その企みには思わず頬が醜く緩んだ。

「なるほど、君も悪いねぇ~!

 いいだろう、それ採用。どうせ僕の仕事は増えないし、保険はいくらあってもいい!」

 インボウズとギルドマスターは、げらげらと笑い合った。

 学園都市全体の戦力が少々削られようが、金銭的に出費を強いられようが、インボウズはそれを自分の懐ではない所から補填できる。

 何の関係もない人から、権力で吸い上げて。

 インボウズがそれができる立場にある限り、ユリエルが思うほどインボウズは苦しめられないのだ。

 逆に、インボウズがユリエルを悪としてそれをやればやるほど、世論はユリエルを憎む。

 もっとも、もしユリエルが無実だと分かれば、その時は民の恨みが何倍にもなってインボウズに返るだろうが……。

 そんな日が来るはずはないと、インボウズは神よりも信じていた。


 ……が、死肉祭が迫っていても、ユリエルを捨て置けるかは別問題だ。

 死肉祭対策にある程度目処が立つと、インボウズはまた未練がましく虫けらのダンジョン攻略に話を戻してしまった。

「だって、成長されたら困るだろう?

 僕だって、ダンジョンが侵入者や犠牲者を力の源にしてるのは知ってるよ。今回ので、あの魔女はどれだけ儲けたと思う?

 これが死肉祭の間に成長されたら、奴の思うつぼなんだよ!

 これ以上街への脅威が増えたら、また責任を問われるじゃないか!」

 インボウズの言う事にも、一理ある。

 虫けらのダンジョンがこのまま大きくなって定着してしまうことは、全員にとって避けたいところだ。

「退けたといっても、たかだか普通の騎士を五人ぽっちだろ。

 だったら、死肉祭が始まる前に騎士団と聖騎士を総出で向かわせたら、禍根を断てるんじゃないか」

「それは一つ考えとしてあります……死肉祭に間に合えばの話ですが」

 オニデスも、ひどく悩みながらうなずく。

 オニデスやギルドマスターだって、早くユリエルを潰したいのはやまやまだ。ただ、死肉祭と共倒れになるのを恐れて板挟みになっているだけ。

 ギルドマスターが、困った顔ながらも提案した。

「敵の戦力を削るには不足だが、生きて帰ってくるのが得意な偵察部隊なら、何とか差し向けられんことはない。

 これで、聖騎士が魔女を倒してどれくらいの期間で帰ってこられそうか……一週間以内に目処がつくはずだ。

 鑑定官がいれば、成長具合も見られる。

 その結果を見て、対処を決めるべきだろう」

 その提案を、インボウズは受け入れた。

 すぐ強力な力を使って潰したいが、敵の内情が分からないのは危険だ。

 もし突入させた騎士や聖騎士が死肉祭までに戻ってこられなければ、そちらでさらに失態を犯すことになる。

 さりとて虫けらのダンジョンが急激に成長するようなら、さらに資金を投入して恥をかなぐり捨てて援軍を呼んででも早く潰さねば危ない。

 インボウズたちの面子と権威を犠牲にすれば、正直な話、二つの戦いを両立する戦力を揃えることは可能なのだ。

 もっとも、それはインボウズが本当に限界までやりたくないことだ。

 ゆえに、今はそこまでやる必要があるかの見極めが重要だ。

 今回の戦いで確かにこちらは大被害を出した。しかしユリエルたちの側も被害が大きく成長どころでないならば、それほど急ぐ必要はない。

 インボウズが面子を投げ捨てることもない。

「よし分かった、一週間待とう。

 朗報を待っておるぞ」

 これで適切な対処ができるはずだと、インボウズは安堵した。

 そして差し迫った不安から解放されると、すぐまた欲が頭をもたげてきた。

「ユリエルをすぐ叩き潰せそうなら、蜘蛛女郎に進化したアラクネを再び僕たちの手に……聖騎士を使えば可能だ!

 そうすれば前のアラクネ糸より、さらに上質な糸が採れる!

 そうなった暁には、僕はこの戦いを全て手の内だったことにして、ダンジョン飼育の達人として伝説になるんだ!!」

 インボウズは、まだオリヒメの糸を諦めていなかった。

 進化したオリヒメを取り戻せば、今しばし糸を納品できない不名誉を挽回できると信じていた。

 どこまでも強欲で、都合のいい頭である。

 そんな果てなき欲望と保身をユリエルに見透かされ、手の内を読まれていることなど、本人には想像もつかなかった。


 話し合いが終わると、ギルドマスターは鑑定官と共に帰路についた。

 インボウズとオニデスの手前都合のいいことを言って笑い合っていたが、奴らが目の前からいなくなると後悔が湧き上がってくる。

(ハァ……何でこんなひどい事になるんだ!

 こんな事なら、聖女の処女を買う金で高級娼館に入り浸った方がましだった!)

 ギルドマスターは早くも、インボウズの聖女堕としと売買に関わってしまったことを後悔していた。

(くっ……それさえなければ、奴の政敵に身売りして堂々と責められたものを。

 懐を痛めてわざわざ高い女を買わされてこれでは、割に合わん!)

 今思えば愚かな事だが、ちょっと前まではそれをステイタスと思っていたのだ。

 結果、ギルドマスターはインボウズに首根っこを掴まれ、共犯者として共に隠し通すしかなくなってしまった。

 そのせいで教会に自分の手駒までいいように使われ、消耗させられて。

 だが、ギルドマスターとて大人しく潰れる気はない。

(枢機卿に学園があるように、僕にもギルドがある!

 幸い、ここが安全で美味しい街だというブランドはまだ崩れていない。ここに移住したい地方の冒険者なら、いくらでもいる!

 奴らがここでどうなろうが、全部自己責任と魔女のせいだ!

 何をどれだけ使っても、生き残ってやるぞ!!)

 上層部が私物化した組織を全力で使って足掻くせいで、ユリエルを巡る惨事はどんどん多くの人を巻き込んでいく。

 それが最終的にどちらの追い風になるかは、神のみぞ知るところであった。

 これまで、教会とユリエルの戦いは軍と冒険者とダンジョンに限られていました。

 しかし、これからはインボウズとギルドマスターにより都市の全てが引きずられていきます。権力者が権力を使って足掻くのは当たり前のこと。


 そうなった時、学園の他の聖女たちは……。

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