23.水面の上と下~戦聖女
今回は聖女の種類と、ユリエルがどんな任務についてきたかのお話です。
ユリエルと同じタイプの、ユノがメインの戦場です。
聖女の仕事といってもいろいろある訳で、それによって待遇やイメージにも差があります。
聖女の分類は、佐藤謙羊さんの「『駄犬』と呼ばれパーティも職場も追放されたオッサン、『金狼』となって勇者一族に牙を剥く!」の勇者分類を参考にしました。
この作品は今は更新停止中ですが、欠かさず読んでいたくらい大好きなざまぁ作品です。
いろんないい聖女や悪い聖女が登場するので、聖女とざまぁが好きな方は今からでも読んでみてください!超オススメです!!
人と人が、入り乱れて戦っている。
手に手に人を傷つける武器を持ち、相手の息の根を止めんと敵意をぶつけ合う。
ここは教会の教えとは真逆の、修羅の場だった。
そこに、土ぼこりと返り血に汚れた白いローブが翻る。
「やあああーっ!!」
勇ましい声とともに、兵士たちに交じって槍を振るう聖女の姿があった。前線で味方を鼓舞し、近くの味方の傷を即座に癒し、自らも敵に裁きの刃を振り下ろす。
聖女と言うより戦乙女のように働くのは、ユノだ。
ローブの上に軽鎧をまとい、引き締まったウエストを際立たせるベルトにはナイフが二本ささっている。
完全に、体を張って戦う者の装備である。
「敵は崩れてる!
このまま押し込むよ!!」
ユノは周りの騎士たちより勇ましく、敵に突撃する。
そうするとユノにつられて、あるいはユノを死なせまいと、周りの騎士や兵士たちも恐れを振り払って突撃する。
そうやって人の波を操り軍を勝利に導くのが、ユノの役目。
だが、今日はその人の波が少しばかり小さかった。
「図に乗るな小娘ぇ!!」
敵の中にも強豪はいる。それが、ユノに狙いを定めた。
周りの兵士を弾き飛ばした大剣を、ユノは槍の柄で器用に滑らせて防ぐ。しかし何度も受けると、衝撃で腕がビリビリしてくる。
(くっ……まずい、もう魔力が……!)
いくらユノでも、魔力が切れたら自分を強化することも癒すこともできない。そして今日は、そのタイミングが少しばかり予想より早かった。
身体強化が切れて押し込まれるユノに、敵が大剣を振り上げたその時……。
「やらせん!!」
大槍が大剣の刃を突き、阻んだ。
「大丈夫か、ユノ!?」
「お、お父様……!」
ユノの父である騎士団長が、助けに来たのだ。
その隙にユノは後方に避難し、騎士団長と敵の豪傑がぶつかり合う。結局今日も、敵の陣地を破ることはできなかった。
「……ごめんなさい、お父様。私が足を引っ張らなければ……」
「いや、おまえは十分働いてるさ。
しっかり働ける奴がいなくなったんだ、仕方ない」
ユノと騎士団長は、疲れた体を引きずるように陣地に帰る。そこでは、既に幾多の負傷兵が待っていた。
陣地を見渡せば、隅から煙が上がるのが見える。
助からなかった者を焼いているのだ。
それを見ると、ユノはさらに陰鬱な気分になる。
(……ユリエルがいてくれたら、あの中のどれだけ助かっただろう。
お父様の、大事な部下たちを……)
ここは教会の軍でも冒険者でもない、王国騎士団の陣地。ユノは父である騎士団長と共に、ここで戦っていた。
教会から出された、大々的に賊を討伐しろという要請によって。
おかげでユノはまた学園都市を離れ、国境近くの山岳地帯まで来ている。しかも賊の抵抗は思いのほか激しく、なかなか帰れそうにない。
こんなに戦いがうまくいかない原因に、ユノは心当たりがあった。
いつも側にいて少し後方で支えてくれていたユリエルが、ここにいないから。
すぐにでも横になりたいのをこらえて、ユノは負傷者の治療テントに赴く。
もう魔力は残っていないし、回復薬もけっこうお腹に溜まるまで飲んでしまったが、せめてできることをしたくて。
テントの中では、級友の神官たちが疲れた顔で懸命に負傷者のお世話をしていた。皆もうとっくに魔力が尽き、傷の消毒や手当てに徹している。
その中に一番大事な人の姿がないと、ユノは気づいた。
「……ミエハリスはどこ?」
ユノが怖い顔で問うと、神官たちは渋い顔を見合わせた。
「……う、腕を折って帰られた、将校のところに」
「またなの!?」
ユノは思わず、声を荒げた。
今回もユノの他にもう一人、聖女が学園から派遣されている。要はユリエルの穴埋めだが、その働きはユリエルには程遠い。
貴族の娘できれい好きなミエハリスは血や傷を見るのも嫌がり、そのうえ名を売るのに熱心ですぐ貴族の将官のところに行ってしまうのだ。
傷だらけで助けを求める、一般兵たちを差し置いて。
おまけに貴重な水や薬を、聖女権限でがっつり自分や軽傷の将官に回してしまう。当然、一般兵の士気と希望はだだ下がりだ。
(あいつ、戦場で何が大事か全然分かってない!!
ユリエルなら、ちゃんと分かって動いてくれたのに……)
こうなると、そのユリエルがいないことがますます悔やまれる。
聖女や神官の中では少ない、前線の回復役をいつも引き受けて一緒に来てくれたユリエル。ユノとは、学友以上に戦友でもあった。
ユノほど戦うのが得意ではないけれど、癒しの力では上回り、兵士たちにも慕われていた。
ユノが最前線で戦うのに対し、ユリエルは戦場の後方で進む兵士を強化したり、負傷兵をその場で癒して治療テントまでつないだりしていた。
怪我の手当ては、早いに越したことはない。ユリエルが戦場で早期治療をしてくれたおかげで、助かる者は多く兵の回復は早かった。
ユノも、安心して戦いに魔力を回せた。
それが今は……。
代わりのミエハリスや数合わせの神官たちは、怖いとか危ないとかゴネて戦場に出ようとしない。
結果、早期に傷を塞げず殉職したり、長く寝込んだりする者が増えた。
すると軍全体の攻撃力が落ち、ますます戦が長引いて怪我人が増える。この悪循環で、国軍は想定を超える被害を出していた。
眉間にぎりっとしわを寄せるユノに、神官たちは身を寄せ合って震える。
ユノは、慌てて釈明した。
「ああ、ごめんね!別にあなたたちに怒ってるんじゃないの。
あなたたちはただ、実力と上の指示に従っただけよね」
この数合わせの神官たちは、いつもは教会で治療や儀式の手伝いをしている身で、癒しの力もレベルも高くない。
彼女らに聖女と同じレベルを求めるのは、無理がある。
しかしミエハリスは、少なくとも癒しの力ではユノを上回るはずなのに……。
ユノは、半ばあきらめかけた気持ちを叱咤してミエハリスの下に向かった。
ミエハリスは、若い将校の専属メイドにでもなったようにべったりとくっついて手当てをしていた。
折れた腕だけでなく軽い打ち身や擦り傷まで、丁寧に手を添えてゆったりと撫でながら癒している。
テントの負傷兵をまるっきり無視して温存した魔力を、惜しげもなく使って。
この接待のような癒しに、若い将校は大満足だ。
「ああ、君は素晴らしいよ!
君の優しさと慈愛が、この身に満ちるようだ!」
「うふふ、光栄ですわ。わたくしは、あなた様を癒すためにここに来たのです」
ミエハリスが上品な笑みで言うと、若い将校はますます目を輝かせて鼻息を荒くする。そして治してもらった腕を、ミエハリスの腰に回した。
「君は、今まで出会った中で誰より素晴らしい聖女だ!
可愛くて献身的で柔和で、誰を癒すのが一番大事か分かってる!そのうえ細かい所までよく気づく、まさに聖女の鑑だ!!」
「まあ嬉しい、そんなに喜んでいただけるなんて。
もし記憶に留めていただけるなら、実家のセッセイン家にまた遊びに来てくださいませ」
貴族の子息である将校を夢見心地にさせ、すかさず実家である貴族家の売り込みをかけるミエハリス。
しかしそこに、怒声とともに入って来る者がいた。
「ちょっとミエハリス、まーたこんな所で油を売って!
魔力が残ってるなら、早く治療テントの方を手伝いなさいよ!!」
その声の方を向いて、ミエハリスは青ざめて若い将校にすがりついた。
「ひぃっ……鬼……!」
見た目だけで言えば、あながち外れてもいない。そこには白いローブを返り血でべとべとにし髪は戦いで乱れ、疲れと怒りで鬼の形相のユノがいたのだから。
若い将校は、ミエハリスをかばうように言い放つ。
「こんなに真面目で献身的な女性に、その言い方は何だ!?
ミエハリスは油を売ってなどいない、働いているのが分からないのか!!」
だがユノも、他の兵の命がかかっているので退けない。負けじと、現実を叩きつけるように言い返した。
「あなたの怪我は、もう放っておいても治ります。そうでない兵がたくさんいるのに、そちらを助けないのが問題なのです!
真面目で献身的なら、より多くの命に尽くしなさい!!」
しかしミエハリスは、いかにも自分は悪くないというように言い訳する。
「ああーん怖い~!
だって、この方もこれから急変するかもしれないし、苦しいとお心が傷つきますわ。それにこの方は軍を率いる者、わたくしは大事な方をお守りしているのです。
なのに、そんな言い方ぁ~!」
自分が一番とヨイショされて、若い将校はますますミエハリスにのめり込む。気分はもう、純真な正義の乙女を守る勇者だ。
若い将校は、治してもらったばかりの腕でサイドボードをバーンと叩いた。
「それ以上言うな!!
彼女は守るべきものを分かっているのだ、それが分からんか!?いくら雑兵がいても指揮官である私がいなければ戦は成り立たん、そんなことも分からんのか!?
団長の娘が、笑わせる!
親に権力があれば、どんなひいきも許されると思うなよ!!」
「えっ……それは、あなたたちの話……!」
若い将校はあろうことか、ユノを悪役令嬢のごとく断罪してきた。
こいつは若い貴族のボンボンによくいる世間知らずと、貴い自分たちさえ無事なら下はいくらでも代えがきくという思考の持ち主だ。
誰が自分を敵の突撃から守ってくれているのか、誰のおかげで課せられた任をこなすことができるのか分かっていない。
そんな彼にとっては、ユノこそが世間を歪める分からず屋だ。
若い将校は、うんざりしたようにぼやく。
「全く、なぜおまえのような女が聖女なのだ?
聖女とは清らかでおしとやかで、汚れなき存在のはず。なのにおまえは汚くて粗忽者で、よく聖女を名乗れるな。
服装だって、そんな殺伐として可愛げのないのは聖女じゃないだろ!
だいたいな、癒す仕事なのに戦聖女なんてのがいるのがおかしいんだ!!」
その一言が、ユノの胸にぐさりと突き刺さった。
戦聖女……文字通り、戦場での働きを主な仕事とする聖女のことだ。
癒しの力を戦場で用い、人間の正義を守り導く者。聖女でありながら癒しだけでなく、敵を傷つける戦闘技術も積極的に身に着けている。
そしてローブは装飾が少なく、深いスリットの入ったワンピースをベルトで締める形。その下に、形だけの者は主にタイツ、ガチ前線担当はズボンをはく。
ユノやユリエルは、もちろん後者である。
前線で戦う者には間違いなく、救いの女神なのだが……前線の現実を知らない、もしくは認識できない者には嫌われてすらいる。
清らかで可憐で尊い、聖女のイメージが壊れると。
端的に言って、戦聖女は地位の高い男に人気がないのだ。
聖女には、種類がある。
一般のおとなしい仕事をしている聖女、芸能で人を楽しませる楽聖女、特に強い力を持った高貴な役目につく大聖女。そして、戦聖女。
種類によって、ローブの形や装いも違う。
分かりやすいのは、楽聖女と戦聖女だ。
楽聖女は簡単に言えば可愛らしさ華やかさに重点を置いた、魅力重視の衣装。個人の着崩しや改造も、余程でなければ黙認される。
一般の聖女は冒険者のヒーラーや普通の女神官と大差ないローブに、聖印章がついただけ。
大聖女になると、金色の刺繍が入って、デザインも人によってはドレスに見えるほど飾られている。
この中で人気が高いのは、楽聖女と一般の聖女。
楽聖女はアイドルのような存在で、一般の聖女は手が届きそうな清楚な子。
特に地位の高い男は、自分に逆らわないし素直でか弱くて守ってあげたいこれらを好む。戦える女は癪に障るし、怖いから。
結果、戦聖女の地位は聖女の中では低い。
楽聖女や一般の聖女の方が、より有力な男に気に入られて影響力を持つ。
だから戦聖女になろうとする聖女は少なく、教会上層部も戦聖女を軽んじる。どうせ命の危険があるんだし、まず切るのは戦聖女となってしまう。
それでも戦うユノやユリエルがどれほど強い守りの意志を持っているか、実際どれだけの人を助けているかすら、上層部にはどーでもいい。
そんな報われない立場にユノはいるし、ユリエルはいた。
涙をこらえて仕事のことを考えながら、ユノは治療テントに入る。
周りの兵士たちからは気の毒そうな目を向けられるが、表立って励ましてくれる者はいない。皆、上司を怒らせないのに必死なのだ。
こうして一人で耐えていると、ユリエルの笑顔が思い出される。
(私が守らなかったから……もう、側にいないんだ!)
いつも、力を合わせて戦場で働いてくれていたユリエル。辛い目に遭っても支え合って折れないように歩んできたユリエル。
将来は軍属希望と言っていたから、ずっと一緒にいられると思っていた。
なのに、戦場の事情すら関係なく、理不尽に奪われてしまった。
自分は自分を守るために派手に声を上げないでいたけれど、結果ユリエルがいなくなって、味方も一番必要な場所の癒し手も失ってしまった。
(これは、私への罰かしら……)
仕方がなかったと割り切ったはずなのに、心が落ちているとそんな風に感じてしまう。
それでも手を止めるなと己を叱咤して治療テントに入るも……。
「あら、これは……」
ふと、白い小さな虫がうごめいている小瓶を見つけた。といっても、これは戦場では見慣れたものだが。
「……ああ、ウジが必要な患者さんがいるのね。
で、誰につけるの?」
ユノが問うと、神官たちは目をぱちくりさせて答えた。
「つけるって……これは、傷口に湧いてたから取ったんですよ!こんな邪悪で汚いものがいたら、傷が治らないじゃないですか!」
「え……?あのね、こいつらは逆に傷を治してくれるんだけど……」
ハエの幼虫であるウジ。汚い場所でよく見るゆえ嫌われがちだが、腐った傷口に放つと悪い部分だけ食べて早く治してくれる。
ユリエルが初めてこの治療法を用いた時はユノも驚いたが、効果は確かだった。
安く労力少なく使えるので、今やユノの父率いる騎士団ではこれがいい治療法として認められている。
だが、数合わせに引っ張られてきただけの普通に虫嫌いな神官たちは……。
「ユノさん、しっかりしてください!虫ですよ虫!しかもすっごい汚いヤツ!」
「こんなのが体にいい訳ないじゃないですか。ユノさんともあろう方が、そんなこともお分かりにならないんですか?」
「ユリエルさんが使ってたって……だから破門されたのよ!」
「ユノさん、あんなのの味方だなんて……やっぱり、ミエハリスさんに従うのが身のためよ!
兵士の皆さんも、惑わされないで!!」
心からの善意と使命感で、ユノを警戒してミエハリスにすがり、早く治りたくてウジを守ろうとする兵士にすら破門をちらつかせてウジを取ろうと迫る始末。
ユノは、目まいがした。
せめて鍛錬で体を動かして気を晴らそうとするも……相方のユリエルはいない。
ユノの心も戦況も晴れないまま、国防の要からは不協和音が流れ続けていた。
照り付ける偽りの太陽の下、ユリエルは鍛錬に精を出していた。
自分の身長ほどもある長弓を力強く引き、よく狙いを定めて矢を放つ。しかし飛んでいった矢は、谷の対岸にある的からだいぶ外れて岩に刺さった。
「くぅ~難しいな!
今まで使ってた短弓と、矢の飛び方が全然違う」
ユリエルは、悔しそうに的をにらんだ。
今、ユリエルは大幅に上がった攻撃力を生かすために訓練中だ。具体的には、今までの短弓とは段違いに強い長弓を使えるよう練習中だ。
タフクロコダイルガイの肉を食べて上がった分に加え、装備による上昇分もある。ユリエルの腰には、タフクロコダイルガイの皮に歯の飾りがついたベルトが巻かれていた。
これで、攻撃力に加え防御力とスタミナもだいぶ上がる。
……が、これを生かすには、物理攻撃が敵に届く距離で戦わねばならない。
危険は増すし、元々物理攻撃が得意でないユリエルには手段も限られる。
「アラクネちゃんはいいなぁ……重い武器振り回して敵に突っ込めばいいもん。
私も、もうちょっと接近戦の練習しとけば……いや、元の能力で出張ってたらとっくに殉職してる。
私じゃなくてユノなら、もっとこの力を有効に使えたのに。ああ~私にユノくらい武術の才能あったらな~!」
武を鍛えていると、どうしてもユノのことを考えてしまう。
(そう言や、私が戦場からいなくなって……ユノ大丈夫かな?)
戦場であんなに働いて命を救って、人の嫌がる場所で駆けずり回っているのに、なぜあんなに評価が低いんだろうといつも不満だった。
ユリエルは自分が勢力の主になることで、それから解放された。
だがユノは今も……。
「私が教会に戦いを挑んで、前線の癒し手は必要なんだって分からせたら、少しは戦聖女の地位が上がるかしら?」
ユリエルは、ふと呟いた。
もう並んで戦うことはできないけれど、それくらいならしてやれるかもしれない。
だが、別の可能性もある。
(逆にもっと人手不足になってしわ寄せて疲れ果てたり、捨て駒みたいに私の討伐隊として投入されたら嫌だな。
ユノ自身は私が保護できても、そうなったらお父さんへの影響は避けられんだろうし。
……とにかく、また会うまでに殉職だけはしないで!)
かつて共にあった戦場を思い出し、ユリエルは切に祈る。
……だが、ユノがどうしてもユリエルを殺さなければならない場合は、こちらも一切手を抜く気はない。
(その場合、ユノは強敵になるな。
できればやり合いたくないけど、考えないでぶっつけ本番で勝てる相手でもないんだよなぁ……)
戦聖女は戦の隠れた要石。ユノがその役目に誰よりも忠実で、類稀な才能と努力を備えていることを、ユリエルは知っている。
その背中をいつも憧れて見つめ、守ってきたから。
……だが、その大切な絆すら引き裂いてしまうのは、他ならぬ教会上層部であった。
上に立ってあぐらをかいている者たちは、全く分かっていなかった……聖女でありながら自ら醜い戦場に赴く、戦聖女のありがたみを。
そして理不尽な使いにも折れず戦場を駆け続けた戦聖女が、どれだけ鍛えられすぎているかも。
そんな戦聖女を敵に回したらどうなるか……教会が思い知る日は近い。
ウジ:ハエの幼虫で、死体や腐肉によく湧く。だが壊死した組織のみを食べ、周囲の組織を細菌から守る働きがあり、医療にも用いられている。効果は確かなのだがやはり見た目が衝撃的なため、同意してもやっている最中に精神をやられる患者がいるのが難点。
実戦部隊を軽んじてひどい目に遭うのは、ざまぁのテンプレですね!
嫌な役目を引き受けて必死で働いていた奴を追放して敵に回すと……ざまぁ復讐ものはだいたいこの始まり方です。




