130.手詰まり感はお互い様
休日中にダイナミックリカバリー!!
それはそうと、最近ゾンビ小説の「屍記」と「ゾンビ百人一首」が頻繁に地味にランクインしています。そちらも愛読者がついたようで嬉しい限りです。
大討伐最初の分水嶺、軍配はどちらに上がったのか。
そして、その些細な勝負に関わらず、ユリエルたちにとって本気で思わしくない事態とは。
一方、タカネノラたちも皆得意の絶頂にいる訳ではなく……それぞれに事情を抱えた、行き詰った状況とは。
「みんな~今日もありがと~!」
4階層の峡谷に、タカネノラの歌声が響き渡る。
洞窟の川と峡谷をつなぐ滝の口が魔法でライトアップされ、タカネノラが激しく踊りながら陽気な歌声を放っている。
タカネノラたち討伐軍は、何とかその日のうちに再び4階層に到達したのだ。
貴族軍の力を予定外に引き出しての、強行軍の結果である。
だが、外はもうとっぷりと日が暮れる時間だ。なので峡谷もすっかり暗くなっており、ライトアップが映える。
「へえー、遅いと思ったけどこういうのもいいよな」
「滝でライトアップなんて、普段見られねえもん。
参加した甲斐があるってもんよ!」
荷運びのファンたちは能天気にそう言って、滅多に見られないライブに夢中だ。
しかし、歌っているタカネノラは焦りまくりだ。タカネノラの予定では、こんなになるはずではなかったのだ。
(はああぁ危なかった!!
マジでたどり着けないかと思った!!
しかも夜になっても働くなんてあり得ない、聖騎士たちと遊ぶ時間ないじゃん。
そもそも今日は4階層を超えて、あわよくば7階層に拠点作る予定だったのに……丸一日潰されやがったああぁ!!)
進めはしたが、計画通りではない。
非モテのクソ魔女にここまで阻まれたと思うと、タカネノラは腸が煮えくり返る思いだった。
「くっそおおぉ滝まで行かれた!!」
一方のユリエルも、滝で歌うタカネノラを見てギリギリと歯ぎしりしていた。
タカネノラが今日中にここまで来られなければ、明日から歌の効果が切れたところで大惨事だと思っていたのだが……。
討伐軍は見事に4階層の洞窟の川まで攻略し、つないでみせた。
「ふむ、今日はひとまず痛み分けといったところか。
時間稼ぎには成功したし、まあよくやった方じゃないか」
ミツメルが、他人事のような調子で言う。
だが、こいつの評価は他の仲間と比べてかなり辛口だ。それを考えると、まんざらでもないと思っていいだろう。
「そうね……一日稼げただけでも、熱病とアレルギーの仕込みはできたし。
明日からの期待値が上がったことにしとこう」
ユリエルは、少し落ち着いて呟いた。
ユリエルが今日仕込んだ熱病とアレルギーは、効果が出るようになるまで三日以上かかってしまう。
つまり、効果が出る前に深く潜られたら無駄になってしまう。
それを考えると、今日という一日を稼げたのは貴重だ。
「5階層より下は、基本的に道が平らで開けてるし……それだと、きっとあいつら爆速で進むんだろうな。
今日仕込めて、本当に良かったわ」
「そうだぜ姉御、こういう時はいい方に考えろよ。
むしろそういう状態の敵を深入りさせてからが勝負だろう?」
レジスダンも、面白そうにニカッと笑って言う。
「初めから勝っちまうと、敵が警戒してどんどん隙がなくなっちまう。時間をかけりゃ行けるって思わせとくぐらいがちょうどいい。
浅いところじゃねえ、退くも地獄の深いところでこそ、いいように壊してやれる。
いい気にしときゃ、人は多少不調でも判断を誤るモンなんだよ!」
その言葉に、ユリエルはしみじみとうなずいた。
これは、レジスダンの実体験から出た言葉だ。
レジスダンは人間だった頃、事が思うように進んでいると思い込んで虫けらのダンジョンに攻め込み、最深部で退路を断たれて全滅の憂き目にあった。
仲間も自分も毒に侵されて体調が思わしくなかったのに、うまくいけばと思って無理をしてしまったのだ。
もちろん、他に行き場がなかったという事情はある。
だが、人間は目の前に成功の予感をぶら下げられると無理をしてしまうものだ。
あの時はユリエルとワークロコダイルが力を合わせて、レジスダンたちにうまくいっていると思わせた。
今回の場合は、多少トラブルがあったり遅れたりしてもきちんと進めているという安心が、タカネノラの慢心の元になるだろう。
そして、味方の状況が手遅れになるまで突き進ませてくれるだろう。
それこそが、ユリエルたちの勝ち筋だ。
……しかし、真の目的への道筋は未だ見えてこない。
タカネノラをただ倒すだけでは、ユリエルとしては不十分だ。今回はタカネノラやワイロンの嘘を多くの人目に晒し、教会への疑問を抱かせるのが本命だ。
なのに、そのための道が見えない。
暴けば評価がガタ落ちの真実はいくつも掴んでいるが、それを多くの人目に晒して信じてもらうのが大変なのだ。
「これまで掴んだのは、タカネノラが処女じゃないこと、自分も虫が混じったものを食べるって言っといて食べてないこと。
ワイロンは、あのフビンダって女の人が本当は無理矢理従わされてること。
正直、これだけで突き崩すのは厳しいなぁ……」
ぼやくユリエルに、ミツメルもうなずく。
「ああ、こちらが証明したとて信じてもらわなければ意味がない。現状では、こちらがいくら喚いても向こうの数と立場で弾かれるだけだ。
それに、もっとその嘘の害を一般人や兵士が切実に味わうものでなくては」
ミツメルの言う事は、真理だ。
今掴んでいる嘘を暴いたって、それだけで討伐軍が戦えなくなることはない。嘘自体が、討伐軍の人々の生死に関わる話じゃない。
それでは、教会の信用を崩すまでには至らないだろう。
おまけに立場と権力ある者がそれで得をしているせいで、こちらが証拠を出しても全力でもみ消しに来るだろう。
人間の中でユリエルが嘘まみれと信じられているのも相まって、どんな証拠もこちらが出す限り信じてもらえそうにない。
「あのクッサヌのおじいさんがフビンダさんの件を暴くかなと思ったけど、本人が拒否しちゃ無理にって訳にいかないし。
……そもそも、今それをやっても人間同士の家内の問題で終わっちゃうよね」
「早く救われてほしいでありんすが……わっちらからすれば、今じゃないでありんす」
オリヒメも、複雑そうな顔で唸った。
今掴んでいる問題でも、タカネノラたちの嘘のせいで他の人々がひどい目に遭って怒っている状況なら追い打ちとして有効だろう。
しかし、そこまで持っていくネタがないのだ。
「強化は本当に強いし、あれだけ強いヤツがいるから本気出されると厳しいな。
どうにか、致命的なとこまで来られる前にもっと強いネタを掴まないと……」
心配そうにため息をつくユリエルに、ミツメルは仕方なさそうに言った。
「分かった、頃合いだな。
明日からは湿地と毒沼、開けた場所だ。危険はあるが、僕が直接顔の目玉で見てみるとしよう。
僕が捕縛されないように、援護は頼んだぞ!」
どうにもならない手詰まりに、ユリエルたちはついに秘蔵の目を投入することにした。
倒したいのはタカネノラや討伐軍ではなく、教会の信用なのだ。どうかそれを揺るがす秘密があってくれと、ユリエルたちはどこへともなく祈った。
一方、タカネノラたちの方も淀んだ空気が渦巻いていた。
「ワイロン殿、ここにおられましたか!
どうか、タカネノラ様をなだめていただきたく……」
イケメン聖騎士に声を掛けられて、ワイロンは嫌な顔で振り返った。
「やだね、どうせ荒れてるタカネノラのうっぷんをぶつけられるだけだろ。
だいたい、今の僕の扱いを見れば、タカネノラが僕の言う事を聞くかどうか分かるだろ。おまえらでダメとなるとな。
僕は、そんなのに巻き込まれたくないね!」
ワイロンは、自棄になったように言い放った。
その言葉に、聖騎士は悔しそうにうなだれた。
聖騎士たちだって知っている……最近タカネノラはどんどん傲慢になり、不都合な真実を封じるワイロンすらぞんざいに扱っていることを。
勇敢で強くてイケメンな自分たちと遊びたいあまり、ワイロンの求めに応じなくなっていることを。
そして、以前はワイロンが真実をバラすと脅せばそれなりに言う事を聞いていたが……今はそれでも聞かなくなってしまった。
「僕の代わりはいくらでもいるだの、ファンが黙ってないだの……まあ本当だろうよ。
僕はあいつにとって、その程度になっちまった訳だ。
だから、そっちがかぶってるモンはそっちで何とかしろよ。僕よりたくましくて夜も楽しい、新しいおもちゃ共!」
その言葉の棘は、イケメン聖騎士の胸に甘美な痛みをもたらした。
おもちゃ呼ばわりは腹立たしいが、ワイロンは今聖騎士たちの方が自分よりカタネノラに愛されていると認めているのだ。
認めているから、タカネノラを諫めるのを諦めるのだ。
しかし聖騎士としては、はいそうですかと引き下がることはできない。
「……いや、しかしな……こういう時に何とかなりそうなのは、おまえしかおらんのだ!
一番若い仲間が、タカネノラ様のお怒りに触れてしまってな……今、ひたすらなじられて虐められている。
このままだと、嫌な役目を押し付けられて全てを失うかもしれん!
いや下手をすれば、俺たちがあいつに陥れられるかも……!」
聖騎士はひとしきりまくしたてると、ひどく困った顔で頭を抱えた。
「タカネノラ様に気に入られれば、将来安泰で何でもできると思っていたのに……まさかこんな事になるなんて!!」
聖騎士の嘆きに、ワイロンは同病相哀れんだ。
「ああ認めるとも、僕たちは夢見てたんだよ!
タカネノラはいつまでも可愛いアイドルで、気に入った男が優しくしてれば機嫌よく利益だけをもたらしてくれると」
そうではないという残酷な現実に、今ワイロンと聖騎士たちは直面している。
デビューしたての頃の素直なタカネノラが、今では遠い幻のようだ。
その頃からずっと側にいるワイロンには、今との落差が胸を抉るように突き刺さる。こんなはずでは、なかったのにと。
聖騎士が、途方に暮れたように呟く。
「……やはりあの時、プロデューサーを……司祭様を切ったのは間違いだったか。
今思えば、司祭様の言った通りになってしまった」
その言葉に、ワイロンは腹立たし気に鼻を鳴らした。
「フン、そこだけはプロデューサーの方が分かってたってことか。
しかし、今さらプロデューサーに助けを求めるのはどうかな。タカネノラも僕たちも恨むプロデューサーのことだ、どんな風に仕返しされるか分からんぞ!」
「確かに、それはある……。
我々はタカネノラと組んで、プロデューサーを裏切ってしまったからな」
ワイロンの手厳しい意見に、聖騎士はとてつもなく苦い顔をした。
タカネノラの横暴に対し、上に告げて処分するぞとお灸をすえてくれていたプロデューサーは、もう頼りにならない。
タカネノラに唆された自分たちが手を組んで信用を奪い、自分たちの都合のいいように取り計らう奴隷のようにしてやったから。
その時のワイロンと聖騎士たちは、自分たちもゆくゆく同じ目に遭うなんて夢にも思っていなかったのだ。
「やめろ、あいつの肩を持つんじゃない!
そんな事をしたって、おまえたちもいずれ捨てられるんだぞ!!」
タカネノラに氷のような目で見下ろされ、優越感に満ちたワイロンと聖騎士たちに囲まれて、プロデューサーは必死にそう訴えていた。
ウザいプロデューサーを潰して好きにやろうとタカネノラに持ちかけられ、言われるがままにプロデューサーを脅した時のこと。
タカネノラは、こいつさえいなければもっとあなたたちと愛し合えるのにと言った。
だからワイロンは審問官という立場を武器に、聖騎士たちは正義の刃という建前の武力をかざしてプロデューサーを脅した。
これで自分たちは、もっとタカネノラに気に入られて好きにやれると思って。
しかし、それはほんの一時の夢だった。
プロデューサーの監視がなくなったタカネノラは、ワイロンたちの想像を絶するほどに増長して手がつけられなくなった。
自分はどこまでも上に行けると思い込んで女王様のように振舞い、ワイロンたちをただの踏み台と見るようになった。
顔が良くて遊んだら楽しいけど、将来まで共にするには足りないおもちゃだと。
「私を誰だと思っているの?
隣にいたいなら、もっと私にふさわしい男になりなさいよ!」
タカネノラはそう言って、ワイロンにはもっと貢げと命じ、聖騎士たちは体と力を道具のように扱った。
しかしワイロンと聖騎士たちは、もはや逆らえない。
さらに上に真実を明かす権限を持っていたプロデューサーを、寄ってたかって陥れて力を奪ってしまったから。
もはやプロデューサーはタカネノラの言いなりで、何も止めてくれない。
自分たちが若く未熟で考えが足りなかったのだと、今気づいても後の祭りだ。
聖騎士は、がっくりと肩を落としてぼやいた。
「タカネノラ様は、今回の戦がこれまでとは違うことを分かってらっしゃらない。
これまでの戦は、地上の開けた場所で大軍同士がぶつかり合うものだった。だからタカネノラ様が歌えば、簡単に勝てた。
でも今回はそうじゃない、だから計画通りいかなくても仕方ない。
なのにタカネノラ様は、ちょっとうまくいかないだけで癇癪を起して、あいつに怒りをぶつけてるんだ!」
被害者ぶって喚く聖騎士に、ワイロンはぴしゃりと言い放った。
「何だよ、戦のことはおまえらのが余程知ってるだろうに。
なのに始めちまうまで、タカネノラをおだてるだけで何も言わなかっただろうが!」
「……それは、俺らも波風立てずに上手くやれたらって……」
聖騎士は、悔しそうに目を泳がせた。
タカネノラに虫けらのダンジョン討伐の仕事を持ってきたのは、プロデューサーだ。これで皆で羽ばたくがいいと言われ、これまで勝ち続けていたのもあってあまり考えずに受けてしまった。
聖騎士の中からは、これまでとはタイプが違うとの指摘が出たが、誰がそれをタカネノラに言うかでもめて結局言えずじまいだ。
結果、ちょっと計画通りに進まないだけで報いが跳ね返ってきている。
うまくいけばいいと信じて何もしないのは、うまくいかなかった場合のリスクを無防備に受けるということだ。
それが敵によるものか味方によるものかに、関わらず。
ワイロンは、聖騎士を突き放すように言った。
「……まあ、それもこの任務までにさせてもらう。
魔女を討伐して富と名誉を手に入れたら、僕はもう身を引くぞ。後は、もっと手練れの先輩でも紹介しておくさ。
後は立場と名声でいろんなところから賄賂を巻き上げりゃ、まあ不自由なく暮らせるだろ」
ワイロンは、既にタカネノラに見切りをつけていた。
このままでは、自分はタカネノラに何もかも吸い取られてしまう。それに、タカネノラが何をやらかしても止められない。
あんな女のために破滅するなど、まっぴらごめんだ。
だから今はタカネノラつきの審問官という立場を全力で利用して、タカネノラから離れた時のために賄賂を漁っているのだ。
それを聞くと、聖騎士は驚いて目を丸くした。
「それでは……おまえが守っている彼女の秘密は、どうするんだ?」
「次の奴に知らせるかは、タカネノラ次第だろ。
もっともそれでどんな面倒が生じても、僕は知らんがね!」
その答えに、聖騎士はごくりと唾を飲んだ。
この聖騎士たちだって、この状況から逃げるためにタカネノラから離れることになれば、同じ選択をするだろう。
「……ただ一つ言えるのは、離れてもあの秘密は黙っておくことだ。
あれのおかげで、僕たちは莫大な利益を得てきた。バレたら、僕やおまえたちも無事じゃ済まない。
あいつはそれを分かってて、僕らを見くびっているんだ」
ワイロンは、残念そうなありがたそうな複雑な顔をした。
タカネノラには今は冷たくされているが、共に世に出せない秘密を抱え、そして自分を大きく引き上げてもらったのは確かだ。
だからワイロンや聖騎士たちは、タカネノラを破滅させようとは思っていない。
それは、自分たちの破滅にもなるからだ。
そこまで話が及んだ時、ワイロンはふと聖騎士たちに尋ねた。
「……そう言や、聖者落としのダンジョンのミツメルが魔女の味方をしているとか。
奴は敵を鑑定する能力を持っているらしいが、対策は大丈夫なんだろうな?」
聖騎士は、そこは自信たっぷりに答えた。
「ああ、もちろん対策はしてある。
タカネノラを守る結界は、あのレベルのヘルズアイデーモンごときに見通すことはできん。
魔石の消耗は激しいが……ま、今のペースなら大丈夫だろう」
「分かった、守れるなら問題ない。
お互い、この任務が終わるまでの辛抱だ!」
ワイロンと聖騎士は、お互いのこの先の人生を祝うような視線を交わし合った。
タカネノラと共にどこまでも高みに昇る夢は、どうやら行き詰ってしまった。だがここさえ越えれば、きっと今より自由になれるはず。
こんなダンジョンの迷宮のような日々を抜け出して……。
皆が嘘を守って笑っているように見えるタカネノラの仲間たちも、内情はこんなものであった。
年長の聖騎士が帰ってこないテントで、タカネノラはひたすら一番若い聖騎士に苛立ちをぶつけていた。
「……でさあ、何が仕方ないって?
誰の予定が遅れてるって?
あのね、私はちゃんと歌ったのよ!夜まで仕事したのよ!なのに仕方ないって何よ、誰に向かって言ってんの!?」
「も、申し訳ありません!!あなた様を責める訳では……!」
「そういう問題じゃない!!
あのねえ、私はこの任務から戻ったら、ワーサと聖楽大会に出るの。そういうスケジュール組んでるの!
なのに遅れでもしたら、私の恥が広まるだろうが!それの何が仕方ないだ!!」
「そ、そんなの聞いてませ……ひいい!!」
言ってもいないことへの配慮が足りないと、タカネノラは鬼のように一番若い聖騎士をなじる。
自分に不都合が生じているから、誰か何とかしろと。
しかし、こんなやり方では誰も助ける気が起こらない。
一応、もし期日までにタカネノラが戻らなければ聖楽大会を延期するとインボウズは約束したが……それが自分のせいになるのが、我慢ならないのだ。
そしてタカネノラは、こんな風につまずくのに慣れていない。
(もう、一体何なのよ今回は!
ワイロンはともかく、聖騎士たちも大丈夫って言ってたのに。こんなん私の戦いじゃない、早く元に戻ってよ!)
誰のせいで自分の栄光の道が詰まっているのか、タカネノラには分からない。
だから、きっとこんなのは長く続かないと信じて、ダンジョンというトンネルを抜けた後の飛翔をタカネノラは夢見た。
その原動力となる翼が顔を覆って泣いていることには、背を向けたままで。
ユリエルたちはタカネノラの小さな秘密をいくつも知りますが、教会の信用転覆レベルのものはそう簡単に見つかりません。
タカネノラたちもそれが生命線であることは分かっており、知る者を限って手厚く防御しているのです。
ただし、タカネノラ自身の増長によって、秘密を知り共に歩んできた者たちの心は既に彼女から離れつつありました。
そんなタカネノラとワイロンたちにはめられた、かわいそうなプロデューサー……どこかで出てきませんでしたか?具体的には総本山で。
共犯者が、バレた時に少しでも罪を軽くする方法は……。
次回から、戦いのフィールドががらりと変わります。
開けたフィールドで、ミツメルの目はカタネノラに通じるのか!?




