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126.津波は歌とともに

 風邪をひいてひどい目に遭った(汗)

 子供がいると、いろんな病気を家庭に持ってきますね。

 これは子供がいないとできない体験であり、これも自分の愛された証なのだと思いながらインフルの警報に怯える毎日。


 虫けらのダンジョンに、タカネノラの与える高揚のまま突っ込んで来る討伐軍。

 これまでの討伐では、勢いで突っ込むとろくなことがありませんでしたが……今回は、数も質も強化も段違いです。

 果たして、ユリエルの築いてきた防衛陣は通用するのか。

「来た!!」

 ユリエルたちは、リストリアから虫けらのダンジョンめがけ攻め上がって来る軍勢を見ていた。

 ドドドと重い地響きとともに、盛大に土ぼこりを上げて迫って来る人の群れ。しかも街からここまで、速度を落とさない。

「ひ……こ、こんな勢い、初めて見ますえ!」

 オリヒメが、久しぶりに本気で怯えている。

 死肉祭で攻められるのに慣れているミツメルも、これには眉を寄せた。

「ふむ……勢いがすごいな。

 普通、行軍というのは戦う体力を温存するためにゆっくり行うのが原則だが……これは消耗を無視しているな。

 いや、時間制限のある加護を有効に使うには最適解か」

 ミツメルによると、タカネノラの歌には精神を高揚させ身体を強化し、おまけに一定時間疲れを感じなくする効果があるらしい。

 それで、あの強行軍だ。

 敵が予想しない速さで進めば、戦いで先手を取って有利になる。それにものすごい勢いで迫られると、それだけで敵は怖気づく。

 タカネノラはこれまで、そうして勝利を導いてきたのだ。

「……でも、疲れを感じないにしても限界はあるでしょ。

 私のダンジョンは元から、できるだけ時間を稼ぐように作ってあるわ。その限界が来るまで持ちこたえれば……」

「どうだかな、今回は教会の正規軍に聖女や神官がかなりいる。その回復との相乗効果で、どれだけ続けられるか分からんぞ」

「じゃあ、いつもみたいに補給を断てば……」

「補給要員も、強化されているからな。

 見ろ、明らかに一般人が背負える量じゃない荷物を持って走っている。しかも数の暴力もある。

 あれをそう簡単に止められるか……」

 ユリエルは一応いつもの対策を並べてみるものの、今この状態の人間たちにいつものように通じるとは思わない方が良さそうだ。

「フン、で、でもうちは時間稼ぎと分断には自信あるんだから!

 上の方の道は狭いし、大軍で来るなら来てみなさいよ!」

 これまで見たことのない敵の様子に戸惑いながらも、ユリエルたちはとりあえず敵の出方を観察することにした。


 津波のように押し寄せる軍勢は、すぐにダンジョン内に侵入してきた。

 しかし、一気に入ってきて渋滞を起こすのではない。まず素早さの高い斥候と何らかの魔道具を持った者が突入してきて、次の階層への通路の大まかな位置を探った。

 そうして進行する方向を決めると、次にスコップやツルハシを持った兵士たちがたくさん入って来た。

 そいつらは、大軍では通れないでこぼこの細い道を、壁を削り地面をならして広げて整え始めたのだ。

 作業中に虫たちが襲ってきても、魔法使いが強化された魔法で迎え撃つ。

 地中や壁から奇襲をかけられても、身体が大幅に強化されているせいであまりダメージを負わず作業を続ける。

 そうしてあっという間に出入り口付近が広くなると、作業はさらに加速した。

 スペースが広がれば広がるほど掘削道具を持った人間が入ってきて、掘った土をバケツリレーのように外に出してしまう。

 谷を見つければ、すぐに土の流れを変えて埋めにかかる。

 みるみるうちに、狭く曲がりくねった難路は広く平らな道に変わっていく。

 途中で落盤が起きても、作業は止まらない。強化された人間たちは、埋まってもゾンビのように力で這い出てくる。

 そのうえ広く人が多くなったところでは、水魔法の使い手が殺虫剤を壁にしみ込ませ、土魔法の使い手が壁や天井を固めてしまう。

 これでは、虫たちが奇襲をかけるのも一苦労だ。

 こうして、ダンジョン上層の難路は形を失っていった。


 その様を、ユリエルたちは驚愕して見ていた。

「あ、あわわわ……せっかくの、道が!」

「なるほど、おまえの防衛戦術の裏をかかれたな!」

 ミツメルが、厳しい口調で説明する。

「おまえは上層部で虫たちがあらゆる方向から奇襲できるように、天井や壁も虫たちが掘れる土や岩にしてある。

 その形自体がダンジョンの構造物ではなくてだ。

 だがその場合、人間側もそこを力で掘ることができる。今回のような強化を伴う人海戦術が可能であれば、地形を変えてしまえる訳だ」

 その指摘に、ユリエルは悔しそうに歯噛みした。

「くぅ~~~……その発想はなかった!

 でも、言われてみればそうだ。虫たちが掘れるってことは、その他の敵でもその気になればできちゃうんだなぁ」

 ユリエルは、状況を味方だけに都合よく解釈していたことを反省した。

 土や岩を掘ることは、虫たちだけにできることではない。時間と労力をかければ多くの生物にできるが、それほど積極的にやらないだけだ。

 しかし、今回ほど人が多く、そのうえ力を強化されていたら話は変わる。

 人は元々、数の力で大工事を成し遂げる生き物だ。そのまま攻略するのが大変なら、手数の力で地形を変えてしまう。

 そうすれば四方八方からの奇襲に怯えなくて済むし、罠もほとんど無効化できるし、分断からの各個撃破も防げる。

 集団で作業をすることで、集団の強みを生かし続けて進軍できるのだ。

 これは、これまでの冒険者たちや討伐軍にはないやり方だった。

「うぅ……私、油断してたのかな。

 これまでうまくいってたからって……」

 しょげかえるユリエルに、シャーマンは落ち着いて言った。

「いや、あんたはすごいうまくやってたよ。これまでの敵に対しては、あんたの作戦がうまくはまってたじゃないか。

 今回は、想定してない質の敵が来ただけだ」

 レジスダンも、うなずいてユリエルを励ました。

「ああ、姉御は自分と戦う相手をしっかり考えて合わせてた。

 最初は冒険者、次にそこの兵士を加えて数だけ揃えた討伐軍。数人単位から、せいぜい数百人だ。

 姉御がまず考えなきゃいけなかったのは、そいつらを撃退すること。

 たとえ大軍でも、ここまで統率が取れて大工事してこなけりゃ、あの難路で分断は有効だ。

 姉御は何も間違ってねえ!」

「敵が主様の処女を認めなきゃ、こんな大軍は来ないはずだったもんな」

 ケチンボーノも、困ったように言った。

 大前提として、ユリエルは教会が過ちを認めなければ本気で攻められないはずだった。ユリエルが処女でないなら、魔族に大きな力を与えられるはずがないのだから。

 しかし教会は、ユリエルを別件で神敵認定して本気で潰しに来た。

 折しも魔族の方でも美王を怒らせてしまって内戦の兆しがあり、ユリエルはそちらにも備えねばならなかった。

 目まぐるしく状況が変わるうちに、後回しにしていた対処が間に合わなかったというのが本音だ。

「……まあ、それほど慌てることはない。

 下の階層にはきちんと、大軍が長い期間をかけて攻略するほど効いてくる仕掛けが用意してある。

 進むはよいよい、しかし深入りしたところで窮する……それは機能すると信じよう」

「信じようとか言わないでよ!

 ま、あれだけ大勢で力ずくで作業したら、物資の消耗は激しいだろうけどさ」

 ミツメルにたしなめられてかえって反発しながらも、ユリエルは今できる対処を考え始める。

「このまま何もないみたいに進まれてたまるか!

 そうね……人は強い力で抵抗するけど、荷物は抵抗しないはず。中に拠点を築こうとしたら、物資だけでもダメにしてやる。

 それに、強化はあっちの専売特許じゃないんだから。あっちが壁や人の体を丈夫にするなら、こっちも仲間を強くするまで。

 なめてかかったらどうなるか、思い知らせてやるんだから!!」

 逆境でも決して考えるのをやめない、それがユリエルの強さだ。

 それが一番大事なんだと頼もしく思いつつ、仲間たちは敵の様子に目を光らせた。


「ラ~~~ア~~~♪

 私の道を~光の道を~開くのは、あ・な・た♪」

 虫けらのダンジョン出入り口では、タカネノラが高らかに歌声を響かせていた。その前を、人々が流れるように行き来している。

 こうして、ダンジョン内で作業する者が皆自分の歌を聞くようにしているのだ。

 タカネノラの歌と舞いによる強化は、タカネノラから離れてもしばらく持続する。なので今はダンジョン内で作業する人を入れ替えれば、ダンジョン内にいる者全員の強化を維持できるのだ。

「どうか私に力を貸して みんなで一緒に歩いていこう♪

 私はみんなのために歌うの だからあなたはそれに応えて♪

 私とあなたの~真実の絆~♪それさえあれば~誰にも負けない~♪」

 タカネノラは歌に乗せて訴える。

 自分のことが好きならば、自分とつながりたいならば、教会と自分のために力を貸せと。

 その歌を聞いたファンたちはタカネノラが自分を求めてくれていると悶絶し、ものすごい勢いで働き続ける。

 その様子は、まるで本能で女王に尽くす働きアリだ。

「フゥ~……さすがにちょっと疲れたわ。

 ワイロン、作業はどんな感じ?」

 時々休憩を取りながら、タカネノラはワイロンに戦況の報告を受ける。

「お疲れ様です、お嬢様。

 万事順調、それどころか速いくらいですよ。既に二階層まで整地して道を広げ、安全地帯を拡大しております。

 犠牲者は今のところなし。お嬢の強化の前には、虫共の攻撃などかすり傷も同然。敵は、こちらに手も足も出ません!」

「キャハ!当たり前よねぇ~。

 こーんなに、愛されてる私に、外道な手を使わなきゃモテない雑魚以下のヘボが勝てる訳ないもの。

 結局世の中、愛が全てなのよ~!」

 非の打ちどころもない進捗に、タカネノラはふんぞり返って笑う。

 ついでに、モテなかったと評判のユリエルを口汚く侮辱する。

 だって邪淫の魔女とか言われて神敵にすら認定されながら、ユリエルが聖騎士三人以外の男を堕としたという話は聞かない。

 あんなに魔王軍の力を借りておきながら、だ。

 タカネノラはそれを、単純にユリエルが劣っているからと解釈し、優越感に浸った。

「聖騎士を堕としたって言っても、あいつが堕としたのって神学を修めてもいない強さだけの猿でしょ?

 その点、私はもっといい聖騎士からこーんなにたくさん愛されてるもの!」

 群衆から見えない所で若く美しい聖騎士たちとベタベタしながら、ユリエルの真実を知りそれに尽くそうとしたロドリコたちまで言いたい放題である。

「キャハハハッ哀れよねぇ!

 格の違いを見せつけてハッラ一党のおもちゃにでもしてやったら、あのアバズレはどんな顔をするかしら?

 楽しみ~!!」

 こうしている間にも、ダンジョン内の作業をしていた聖騎士が交代で戻って来て、快進撃の報告をする。

「わが軍は2階層を突破し、3階層に入りました。

 この調子なら夜までに4階層に達し、タカネノラ様を案内できますかと」

「へえー、これって討伐隊として最速じゃない!?

 やっぱ、どんな作戦より人望より、人を動かす力が全てよね。街にいる能無しの将軍たちより、私の方がずっと強い!」

 全てを見下して有頂天になるタカネノラに、ワイロンがおだてながら仕事を促す。

「その通り!お嬢より強くて尊い者などおりませんよ!

 その名声をさらに確固たるものにするために、もう一働きお願いします!」

 タカネノラは気だるげに自分をマッサージしていた聖騎士の手を払い、テントの隅でじっとしていた楽士の子に声をかけた。

「魔力はきちんと回復した?

 ここでへばったら、許さないからね!」

 楽士の子は、身をすくめてうなずいた。

 タカネノラは底意地の悪い笑みを秒で弾けるような純粋な笑みに作り変え、再びファンの前に出ていった。


 掘削作業はものすごい勢いで進み、その日の夕方には三階層を突破した。

 すると、そこからは中に拠点を築くため、食糧や薬などの物資をどんどん運び込むようになった。

 拠点となるのは、虫けらのダンジョンで最初にコアルームがあった3階層の広間と、安全な水が補給できる4階層だ。

 特に3階層の元コアルームは安全地帯として、多くの人が寝泊まりするよう陣地が築かれつつあった。

 しかし、その固めて殺虫剤をかけたはずの天井がいきなり崩れたのだ。

 そのうえ、土砂に混じって足切り虫やケラの化け物が降って来た。

「うわっ安全じゃなブフゥッ!?」

 なまじ土を固めてあっただけに、その大きな破片が当たると強化されていてもそれなりにダメージを受ける。

 そうして人間たちが動揺した隙に、虫たちは物資を一山囲んで土に埋め始めた。

「な、なんだこの虫共、強いぞ!」

「地面は固めたんじゃなかったのか!?つか、殺虫剤は!?」

 すぐに騎士や兵士たちが攻撃を始めたものの、倒せたのは数体。物資はあえなく地面に引きずり込まれてしまった。

「何だよこれ、話が違うぞ!」

「広すぎて、殺虫剤が薄くて土が固まっていない部分ができていたのかもしれん。

 タカネノラ様に醜態を見せる訳にはいかんぞ!魔法使いども、早急に薬剤散布と土固めをやり直せ!」

 被害は軽微だ。しかし無視はできない。

 討伐軍は、拠点を築くための殺虫剤と魔法を倍使わされるはめになった。


 虫が殺虫剤と固めた土を突破したとは、考えなかった。だって虫に殺虫剤で対処するのは、当たり前なんだから。

 虫特効の道具を正しく使えば怖くなどない、と思い込んでいた。

 ……討伐軍の誰も、どのくらいの広さにどのくらいの量まけばいいのか知らないのにだ。

 元々畑の作物用に作られ、毒性の強さで違法となったそれに、魔物討伐用の用法用量などある訳がない。

 だが、誰もそれを気に留めないのだ。

 これが、大量に使うと人間にも害があるということも。

 そんな無知では、自分たちに迫る本当の危機に気づけない。中毒を起こした自分たちに、強化されたスーパー耐性虫が襲ってくるということに。


 その危機は、別の場所ですぐにでもやって来た。

 殺虫剤をまいたはずの道で、荷運びの一人が下半身を虫に地中に引きずり込まれたのだ。強化された力で抵抗するも、一向に抜け出せない。

「何だ、だらしねえな」

「ああ、すまねえ……引っ張ってもらえるか?」

 仕方なく、数人の兵士が荷運びの上半身を掴んで力一杯引っ張った。

 すると、一体何が起こったか。

「そいやー!!……あ、ああっ……か、下半身がああぁ!!」

 なんと、荷運びの上半身と下半身が引きちぎれてしまったのだ。内臓がぶちまけられて広がり、辺りは血の海となった。

「ありがとよ……ちょっと、痛えけど……まだ、働け……。

 え、な、何だよ……これ……?」

 それでもちぎれた本人は、苦痛をあまり感じないらしく、自分の状態が信じられずきょとんとしている。

 タカネノラの歌の効果で、痛みの感覚が鈍っているせいだ。

 しかし、これで無事に済む訳がない。ちぎれた上半身からはみるみるうちに夥しい血が流れ出していく。

「うわあっ早く薬を!」

「馬鹿、こんなん治せるかよ!

 誰か、癒しが使える奴を呼んでこい!」

 すぐに近くで警護していた修道女が呼ばれたが、神の力も使えない修道女がこんなもの治せる訳がない。

「む、無理だよ、下半身全部再生なんて!傷を塞いだって、これじゃ助からない!」

 荷運びはみるみる血の気を失い、目がうつろになっていく。

「あれ……おかしいな……あんまり、苦しくねえ……のに……。

 悪い……ちょっと、眠り……」

「ああ、安らかにお休み」

 死にゆく荷運びに、修道女はせめてもの膝枕をし、優しく額を撫でながら送ってやった。程なくして、荷運びは安らかに息を引き取った。

 しかし、見ている周囲はとても安らかではいられなかった。

「何てこった……どういうことだ!安全じゃなかったのかよ!!」

「いい加減に薬をまきやがって、魔法使いども!きちんと仕事しろ!!」

 動揺する兵士と荷運びたちの中心で、修道女……クラリッサもだらだらと冷や汗を流していた。

(うっわヤバいヤバいマジパネエ!

 ユリエルの本気えぐすぎる……いや、これまだジャブ打ってこっちの出方見てるだけか?それでこれかよおおぉ!!)

 クラリッサの百戦錬磨の勘が、これは偶然などではないと警鐘を鳴らしていた。

 ユリエルは、見る者の精神にダメージを与えながら観察している。討伐軍がこの惨状をどのように受け取り、どう対応するかを。

 そしてもちろん、今のこの反応はユリエルにとって思い通りなのだろう。

 そのために、ユリエルは自分を殺しに来る軍に属するなら、一般人でも容赦しない。

 クラリッサは、事前に調べてユリエルと通じておいて本当に良かったと思った。


 初めての犠牲者は、全体に動揺を与えないように静かに迅速に処理された。それでも見てしまった一部は、本当にここに来て良かったのか考えてしまった。

 だがダンジョンに入ってきたタカネノラの歌声が聞こえてくると、その恐怖は薄れて消えていった。

「ラ~~~ア~~~♪

 私の歌は~みんなのために~♪みんなの力は~私のために~♪

 恐れず進んだその先に~明るい未来は開かれるの~♪」

 タカネノラの歌声は、体だけでなく心も強くする。気分を高揚させ、苦痛を鈍らせ、いくらでもやれる気分にしてしまう。

 目の前の惨劇に一時は手を止めてしまったファンたちも、タカネノラのためなら何でもできるとばかりに再び力強く作業を始めた。

 怖くない、怖がったら負けだ。

 たった一人の運が悪い奴に、自分がならなければいいだけのこと。

 必要な恐怖にすら蓋をして、人間たちはものすごい勢いでダンジョンを下っていく。

 そして日が沈むころには、ダンジョンの出入り口から4階層の峡谷までが人間に埋め尽くされていた。

 まるで津波にでも飲まれたように、魔の領域は人に塗り替えられた。

 その人の陣地を見下ろす、4階層の岩山の頂上で、タカネノラはふんぞり返って高笑いを放った。

「キャーハハハ!!なーにが難攻不落よ!

 私にかかれば、どんな敵だってこんなもん!

 なーんか一般人が一人死んだみたいだけど、そんなの私のファンの数考えたら痛くもかゆくもないもんねー。

 所詮弱い者いじめしかできない雑魚が、私に勝てやしないのよ~!」

 不気味に飛び回るコウモリのようなものに見せつけるように、タカネノラは嘲笑の声を響かせていた。

 道が険しければ、道を変えてしまえばいいのだ。

 ユリエルが虫さんの移動を思って、ダンジョンの地形を破壊できる普通の岩や土にしておいたのが仇となってしまいました。

 味方が掘って通れる場所、敵が掘れないと思うなよ。


 しかし、それでも一矢報いるユリエル。

 下半身がはまって何されてるか分からない落とし穴は、タカネノラの苦痛鈍麻によって痛みの警報すら届かないリアル感覚遮断落とし穴と化した!

 でもこの程度の抵抗では大勢を変えるには至らない、怒涛の侵攻!

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