123.沈黙の勇気
天王山というべき大討伐を前に、情報を交換し合うユリエルと討伐隊。
マリオンは、これだけ皆頑張ってるからと、ユリエルに土産を与えて激励しますが……。
人間の仲間たちが、何のためにユリエルを助けようとしてきたか。
その願いは、既に届くところにあるとは限らない。
柔らかい下草に突っ伏してしゃくり上げる少女を、ユリエルとマリオンたちは静かに見つめていた。
とりあえず、緊急の危機を知らせることはできた。
これでこの少女は、世界の残酷さと己の危機を正しく認識し、ユリエルたちと助け合える同志になった。
しかし同時に、これはたった一人のちっぽけな変化でしかない。
これから、ついさっきまでのこいつと同じような人間が大量に攻めてくるのだ。
その大攻勢を耐え抜くためにどうするか、その後にこいつらをどう使って状況を好転させるかが課題であった。
しばらく泣いて、少女はどこか吹っ切れた顔を上げた。
「本当に、ありがとうございます……私なんかに、手間を取らせてしまって。
こんなに大変なことに、何を言われても気づけなかった馬鹿な私に」
低頭平身で謝る少女を、ユリエルはしょうがないなあと笑って許した。
「いいよいいよ、証拠を見たら認めてくれたし。
自分を卑下しなくていい。調べられる道具があっても自分を疑えない女騎士なんかより、あんたの方がずっとできる子!」
その言葉に、少女は複雑な気持ちになった。
あんなに気高くて憧れたフェミニアだが、結果はユリエルの言う通りなのだ。
むしろ少女から見れば、フェミニアの方がずっと強くて行動力もあって正義の心にあふれていたのに。
それがかえって、仇になってしまうとは。
その原因が、今の少女にはよく分かった。
「そんな……フェミニア様は、私なんかとても及ばない素敵な方でした!
でも、きっとそんな正しくあろうとする方だからこそ、きれいに騙されてしまったんですね。偉くて正しそうな人が、周りのみんなが言う事を信じて。
それが間違ってるって気づきさえすれば、きっとあなたを助けようとしたはずです!」
少女の訴えに、鑑定官も悲しそうにうなずいた。
「ああ、その通りだ。
でも今は、教会の頂点が腐って嘘を押し通そうとしているせいで、世の中のほとんどの人がそうなってるんだよ。
それをどうにか終わらせるために、私たちはこうしてユリエルと力を合わせている」
「ああ、こんな間違ったことは早く終わらせにゃならん。
領主様も、力を貸してくださっている」
ハゲツルヌスも、語気を強めた。
ここにいるのは、教会の悪徳から人々を解放するレジスタンスなのだ。まだほんの数人に過ぎないが、騙されて不幸に突き進む人々を真に救おうとしている。
自分もその一員になれるのだと思うと、少女は胸の奥が熱くなった。
「すごーい、領主様まで!
私も、みんなが早く真実を知れるように頑張ります!
手始めに、炊き出しに来てる人たちに私から話して、信じてくれない人にはここで証拠を見せ……るのはダメですか?」
熱く語り出した少女の言葉は、しかし実行段階で急に尻すぼみになった。
少女自身にも、何となく分かっているのだ。自分がすぐにでもやりたいこの方法が、いい方法ではないと。
それでも断ち切れない希望を、マリオンはばっさりと切った。
「ダメに決まってるだろ、おまえ。
何で俺たちが今まで何も言ってねえと思ってんだ!」
少女は、しゅんと肩を落としつつも納得した。
そこにユリエルが、諭すように理由を突きつける。
「あのねえ、この状況で一般人が簡単に真実を信じるとか、思っちゃダメなの。
私たちが情けをかけて味方の暴力から助けて、そのうえ審問官の嘘で殺されかけたあなたでさえ、あの有様よ。
どっちもないし、何なら被害しか受けてない人は、どうなると思う?」
反論の余地もないド正論に、少女は俯いて肩をすくめた。
あんなに分かりやすいユリエルの優しさを受け取り、審問官の悪意に晒されて命が危なかった自分でも、あんなに信じられなかったのだ。
どんなに誠実に正直に伝えたって、人々が信じる訳がない。皆、教会が正しいということを、天地の理のように信じているのだから。
訴えたら、神敵の味方として見せしめに処刑されるのがオチだ。
たとえ素直に聞いて協力するという人がいても、手放しで喜んではいけない。
内心これでユリエルにとどめを刺してやると思っていて、信用させて罠を仕掛けたり仲間を一網打尽にしたりするかもしれないからだ。
少女もマリオンに拘束された時その考えが頭をよぎったので、間違いない。
さらに、蜘蛛女……オリヒメがもう一つ付け足す。
「それに、真実を知ったって善意で動くとは限りませんえ。人間は、間違っていても簡単に欲に流される生き物でありんす。
弱者を潰して簡単にいい思いができるなら、平気で悪い奴になびきますえ。
おまえさんを襲ったのも、そういう男でありんした」
「……おっしゃる通りで」
少女は、自分を襲った男どもを思い出して痛感した。
世の中、真実より欲を優先する輩はごまんといる。それはもう枢機卿からチンピラまで、どこにでもいる。
そんな奴らに、この反抗を気づかれてはならないのだ。
「だから、君が私たちに協力して地上に帰るのに、絶対守らなきゃならないことが一つ。
私たちの仲間と確定している人以外に、このことをしゃべらないこと」
鑑定官は、口に人差し指を当てて真剣な顔で言った。
「もし君が前のように口を滑らせたら、君だけじゃなく最悪私たちみんなが捕まって無残に殺される。
そしてユリエルと真実は、日の下に出ることなく葬り去られる。
そうならないために、君はこのことを黙っていること。そして、できるだけ何もなかったように日々を過ごすこと。
できるね?」
「は、はい……!」
少女はうなずいたが、その声は揺れていた。
だって黙っているということは、他の騙されて死に向かう人々を見殺しにするも同じ。
もし真実を告げたら、その不幸や死から救える可能性がわずかばかりあるとしても、それに手を伸ばすことができない。
ひどく残酷で、もどかしい所業だ。
その救えるかもしれない中には、他ならぬユリエルも含まれているのに。
そう思ってユリエルの方を見ると、ユリエルは半ば諦めたようにぶすっとしていた。
「いいよ、私のことは。そんなに慌てて助けようとしなくても。
私もいい加減分かったのよ、急いで行動してもすぐにどうにかなるもんじゃないって。
処女を証明しようとして魔族に血を渡して真実を叫ばせても、気づいてくれた聖騎士さんと仲間になっても、状況は悪くなるばっかり。
結局、人が信じてくれるか次第なのよね」
その言い方に、少女は胸が痛んだ。
自分も世の人々も、ユリエルが魔族と手を組んだり聖騎士を裏切らせたりしたと聞いて、何て悪い奴なんだと憤慨していた。
しかしそれは、誰にも信じてもらえなくなったユリエルの悲鳴だったのだ。
自分たちが一方的に決めつけて話ができなくしたくせに、そうでない方法で何とか真実を示そうとしていたのを、表面だけ見て断罪して。
あまつさえ、それを理由にますます悪い奴に協力して被害者を追い詰めて。
それでも、やっている方はそれが間違いだと頑なに認めないのだ。
「ごめんなさい……私も、ユリエル様のことを全然信じられなくて。
助けてくれたあなた自身に、あんなこと言って……」
「ああ、あれは正直効いたわよ。
……でも、今こうして信じてくれたから、助けて良かったって思えた」
謝る少女に、ユリエルは喜びと酷薄さの同居する笑みを向けた。
それが、ユリエルが救う相手を選んでいる証だと思えて、少女は背筋が寒くなった。信じた自分は救われた、しかしそうでない大多数は……。
ユリエルはこれから、騙されて攻めてくる人をどれだけ殺すことになるのか……。
怯える少女を引き戻すように、鑑定官がパンパンと手を叩いた。
「そうだ、私たちはこの状況を何とかせねばならん。
そのために、この大討伐で教会が決定的に間違っている……民衆を騙していることを、人々に思い知らせてほしい」
鑑定官のお願いに、ユリエルたちダンジョン勢は剣呑な顔でうなずいた。
「なるほど、やってやろうじゃないの!
狙うは、この子を陥れようとしたワイロンって審問官ね。それだけ嘘審問を安請け合いするようだと、バレたら困る事がいくらでもありそうだし」
「審問官の判定に疑問を持たせれば、ユリエルに着せられた罪にも疑いを向けられますえ!」
ユリエルは、希望と嗜虐のこもった笑みを浮かべた。
審問官は、教会の正しさの拠り所なのだ。
教会が全て正しいと信じられているのは、審問官の決して偽ることのできない審問あってこそ。
つまりそこを崩せば、人々に教会を疑わせることができる。
そもそもユリエルの冤罪だって枢機卿が言い出したのを、討伐軍とともに来た審問官が保証したものだ。
そこを突き崩せるのは、大きい。
そして今から聖歌手とともにここに来るワイロンは、自分が得をしそうならガンガン不正をしていく人物だ。
うまく叩けば、それはもう素晴らしいほこりの嵐になるだろう。
「よっしゃ、そこまでズルしといてここに飛び込んだことを、後悔させてやる!
嘘つき野郎は、地獄に落ちろ!!」
気合が入るユリエルに、マリオンはもう一押し。
「それでよー、それをできるだけ大勢の、立場がある人に見せてほしいんだ。
ほら、兵士や冒険者ばっかりだったり少なかったりすると、死肉祭の時みたいに粛清で黙らされちまうだろ。
そのための作戦材料を、たんまり持って来たぜ!」
マリオンはそう言って、マジックバッグから大量の資料を取り出した。
「こいつぁ、これから攻め込む討伐隊の情報だ。
そこからどんな奴が、どのくらいの兵力で参加するか、全部書いてある。参加してる奴同士の関係も、できる限り。
領主様からの手土産だ、存分に使ってくれ!」
その思わぬ贈り物に、ユリエルたちは目を丸くした。
「ええっ……こんなに!?
ありがとう、絶対に無駄にしないわ!!」
ユリエルたちにとって、喉から手が出るほど欲しかったものだ。
敵を知り己を知れば、負ける確率はぐっと下がる。ミツメルの鑑定だけでは得られない事前情報は、宝の山だ。
心から感謝するユリエルに、マリオンは告げた。
「俺がこいつを持って来られるように、学園の仲間も頑張ったんだぜ。
カリヨンはアノンの聖呪の契約文を世に晒したし、ユノは国軍上層部と領主様をつないで反撃の下地を作ってる。
ミザトリアだって、インボウズとオニデスの仲を悪くさせた。
おまえが決定的な手を打てば、一気にひっくり返せるように備えてんだ!」
それを聞いて、ユリエルはすまなさそうにぼやいた。
「そっか……きちんと、助けようとしてくれてたんだ。
私、ユノたちが何もしてくれないって思ってて……私が何をしてもどうなっても届く形で動いてくれないって。
でも、そうだったんだ……疑ってごめんって言っといて!」
それを聞いて、マリオンたちは切ない気分になった。
自分たちはユノたちの頑張りを間近で見ているが、ダンジョンに閉じ込められて状況が変わらないユリエルには分からないのだ。
今その土産をその証として持って来て、本当に良かった。
ユリエルが完全に人間に失望し、友に刃を向ける前に。
マリオンは、敵の中の味方についても告げる。
「それから、今回参加する修道女隊の中にも知ってる奴がいるぞ。覚えてるか?中1の時に変な学級通信書いて退学になったクラリッサだ」
「あー……あいつ今修道女なの。
そっか……実際に邪淫を犯したあいつが、無実の私を討つ側と」
突如としてユリエルが放った殺気に、一同はびくりとした。
ユリエルとしては、それは業腹だろう。軽いとはいえ本当に邪淫の罪を犯した奴が、正規軍の一員として何もしていない自分を殺しに来るとは。
マリオンは冷や汗を流しながら、必死で釈明する。
「で、でもあいつは味方だぞ!
お前がそんなことする訳ないって、状況的におまえが正しいって信じて、内通するから助けてくれって言いに来たんだ。
それに、クラリッサだけじゃない。修道女隊はもう嘘のために死ぬのが嫌になってて、お近づきの印にこれだけ情報を流してくれた。
クラリッサと連絡を取り合えば、協力できるはずだ!」
それを聞いて、ユリエルの目の色が変わった。
「やった!!それはありがたい!
それなら、クラリッサを通してワイロンを誘導するとかもできそうね」
感情的に憎たらしい相手でも、この状況で手を取り合えるなら話は別だ。喉から手が出るほど欲しかった、敵の身中の虫である。
そうして手札を明かして大まかな方針が決まったところで、ハゲツルヌスがさらに使える手札について告げた。
「教会の不正を暴くならば、クッサヌ家の者の前でやるといい。
あいつらは頭が固いが、不正や曲がったことを嫌う清廉な一族だ。その目で不正を見れば教会相手でも容赦せんし、金や利益で転ぶこともないだろう」
「ああ、あの方々ならそうでしょうね」
少女は、フェミニアと法廷で助けてくれた男二人を思い出した。
あの時法廷で、クッサヌの男は真実を告げろと審問官のワイロンを怒鳴りつけていた。手荒だが、頼もしい真実の味方だ。
さらに、鑑定官からも耳寄りな情報がもたらされた。
「ワイロンを狙うのはいいが、奴もそれなりに警戒はしているだろう。
聖歌手の方を狙うと見せて、攪乱した方がいいかもしれん。
……実は聖歌手の方も、何か不正をしている疑いがある。私が鑑定しようとしたら、聖歌手と楽士の方まで弾かれた。
力の秘密を敵に見せないという建前だが、何か知られたくないことがあるのか」
「ふーん、それは暴けたら大きそうね」
聖歌手を擁する討伐軍は、とてつもなく強大だ。
しかしその中には、付け込めそうな隙が見える。
そして同行する者の中には、ユリエルたちに協力する者と真実に忠実な者が混じっている。
それらをうまく使えば、討伐軍を力で潰走させなくても勝てるかもしれない。
そこから教会自体の悪しき信用も突き崩せることを願って、ユリエルたちは希望の眼差しを交わした。
一通り話が終わると、マリオンはユリエルの手を握って励ました。
「負けるなよ、死ぬなよユリエル!
おまえにゃ届いてねえが、おまえを助けるための味方は確実に増えてる。現状に疑問を抱く奴もだ。
だから、希望を失うな!
この戦いで腐った坊主共をひっくり返して、またみんなと一緒に生きようぜ!」
しかし、ユリエルはとても切ない顔で首を横に振った。
「うん……冤罪は、晴らせたらいい。
でも、またみんなで暮らすのは、もう無理かな。だって……」
その時、ユリエルの背中にふわりと蝶のような羽が出現した。それが優雅に羽ばたくと、ユリエルの体が少し宙に浮いた。
マリオンは、目玉がこぼれ落ちそうなほど見開いた。
「ユリエル……おま……え……!」
言葉を失う人間たちに、ユリエルは自分の身に起こったことを明かした。
この大討伐を迎え撃つために、ダンジョンをもっと成長させねばならなかった。しかし20階層を超えたダンジョンは、並の人の器では扱いきれない。
それに勝って冤罪を晴らしたとて、その過程でユリエルが出した犠牲は消えない。人の世に出れば、その恨みからは逃れられない。
そして、魔族の中にたくさん心を許せる人ができた。
それらの理由で、ユリエルは既に人を捨てた。
「そ、んな……畜生……遅かった!間に合わなかったってのか!!」
マリオンが、悲痛な叫びをあげて、拳を地面に叩きつけた。
これまで、ユリエルを助けられなくてもどかしくは思っていた。それでも頑張って動いているし、いつか助けられたら元に戻れると思っていた。
しかし、そんなものは都合のいい幻想でしかなかった。
ユリエルにとって、助けてもらえないのは何もないのと同じ。だから自力で自分を守るために、あらゆることをするしかなかった。
その結果、ユリエルは人の世界に戻れない一線を超えてしまった。
「畜生……ごめんよ……こんなつもりじゃ……俺たちが、もっと早く動いてれば……!」
むせび泣くマリオンを優しく抱きしめて、ユリエルは言った。
「いいよ、大丈夫、私はちゃんと生きてる。ここに来てくれたら、会えるよ。
それに、焦ってみんなが死ぬのも嫌だから、無理はしなくていい。ユノたちにも伝えといて、もう慌てる必要なんかないって」
最後の一言には、隠しきれない恨みと嫌味がにじんでいた。
しかし、もうどんなに悔いても嘆いても、元に戻せやしないのだ。できることは、この状況の中で最善の道を探っていくのみだった。
そのあまりに悲しい光景を、少女は震えながら見ていた。
さっき知った真実だけでもこんな事があっていいのかと思ったのに、現実はさらにその上をいく。
陥れられて人の世界の全てを奪われた清らかな聖女が、さらに人であることすらも奪われてしまうとは。
残酷すぎて、言葉が出ない。
いや、本当はすぐにでもこの現実を他の人たちに叫びたい。自分たちがどんな事に加担しているか、叩きつけてやりたい。
だって、黙っていたらもっとひどい事になるかもしれない。
それを見過ごすことなんて……。
「おい大丈夫か!?絶対言うなよ!皆死ぬんだぞ!!」
鑑定官にたしなめられても、少女は歯を食いしばってうなずけない。
このままでは、やはり地上には帰せないかと思われたところで……いきなり、金髪にカソックコートと目隠しの男が少女の前に現れた。
「哀れだな、目先の悲しみに囚われて未来を守れぬとは」
「そんな、私は、守りたくて……これ以上失いたくなくて!」
泣いてかぶりを振る少女に、目隠しの男……ミツメルはささやいた。
「そうやって我慢できないことで、本当に取り返しのつかないものが失われるのが分からないか?
その沈黙は怠惰ではない、勇気だ。
ただ、人間は見返りがなくば力が出ない生き物だからな……おまえに、さらに多くの守るものを負わせてやろう。
これから言う事は、仲間にも告げてはならん。
もし、ユリエルが勝つまで黙っていられたら、僕は……」
これから言う事は、本当に少女にしか聞こえないささやき。
「死肉祭を、終わらせてやる!」
その一言に、少女の肩がびくりと跳ねた。そして、一瞬でうなずいた。
「分かりました……私、守ります!このままだとどんどん死んでしまう人たちのために、口が裂けても黙っています!」
ミツメルがどういうつもりかは少し気にかかったが、少女の覚悟が決まったのはいいことだ。
ユリエルは、この素直で純粋な少女にも願いを分かつことにした。
「街で、困ってる人たちをよろしくね。お名前は?」
「カサンドラ、です」
信じられぬことを叫んで死ぬより、黙して己も他人も守れ。そんな己との戦いが少しでも早く終わるように、カサンドラはユリエルの勝利を心から祈った。
カサンドラ:ギリシャ神話で、太陽神アポロンに愛され捨てられた予言者。アポロンに予知能力を与えられたが、呪いで言ったことを誰も信じないようにされてしまう。どんなに本当のことを叫んでも相手にされず、トロイア陥落を見届け、悲劇の最期を遂げた。
必死で泣いて訴えるよりも、自分だけが知っている事実を黙ってうまく立ち回った方が生き残れたであろう。
この作品のカサンドラは一度痛い目に遭いましたが、果たして黙っていられるか……。
そして、ミツメルは既にこの戦いの後のことを考えています。
負ける気のない、その思いは届くのか。




