104.神敵
新章開始!前の枢機卿会議で決まったことが、ついに世の中を動かし始めます。
今回は、それに対するユリエルの仲間と街の反応。
ユリエルを救いたい学友たちは、この大惨事に何を思うのか。
しかし、何も知らない他の生徒や一般人の反応は。
そして、インボウズが聖呪失敗を挽回するために売り出した免罪符とは、どんなものだったのか。
これまでの状況が全て色香と妄想に絡めとられて逆回転していく、胸糞回!
新年のドタバタが終わり、ようやくリストリア女学園の授業が再開される日が来た。
大聖堂の邪気は衰えないが、大結界を維持し続けて封印しているので今のところ大きな影響は出ていない。
久しぶりに集まった聖女や神官たちは、どうか自分たちが卒業するまで何事も起こりませんようにと切に祈った。
しかしそれを嘲笑うように、始業の全校集会で重大発表があるとの予告があった。
生徒たちは、これ以上一体何があるのかと恐れおののいた。
だが一部には、何となく想像がついた。数日前に枢機卿会議があったことを知っている、カリヨンたちである。
「これは……おそらく、何か重大な事が枢機卿会議で決まったのでしょう」
「でも、その内容は分からないのよね?」
「ええ、お父様からこれまでに連絡はありません。
こういう時連絡がないのは、お父様が周囲を警戒して発信を控えていることが多いです。もしくは、お父様が対処に走り回っているか……」
「それは……あまりいい決定じゃなさそうね」
カリヨンの話を聞いて、ユノとミザトリアは苦々しい顔をした。
聖呪が飛ばない件は、インボウズの信用を揺るがす大事件だった。これで少しでも世間のユリエルとインボウズへの見方が変わってくれたらと、三人は思ったのだが……。
どうやら、逆の事態が進行しているらしい。
一体どんなことが決まったのかと、三人は重苦しい気分で集会場に向かった。
インボウズの演説は、ここ最近定例となっているユリエルへの憤慨と嘆きから始まった。そして、おまえたちはそうならないようにと信仰と服従を促す。
だがその中で、インボウズはこれまでにない言葉を使った。
「さもなければ、おまえたちも神敵として永劫に呪われることになるぞ!」
瞬間、会場の空気が一気に冷えた。
理事長は今、何と言ったか。
神敵、それは神とこの世界そのものに逆らう敵のこと。
決して相容れず決して許されることのない、絶対悪。
教会がそれと認定した者には、教会とそれに協力する人間の全ての機関から討伐されることになる。
この世にあってはならない、最上級の罪人。
青ざめてしーんとする生徒たちに、インボウズはおどろおどろしく告げた。
「このたび、魔女ユリエルを神敵と認定することとなった。
罪状は邪淫、ふしだらな誘惑で聖騎士に道を踏み外させたためじゃ!
昨年末、ゴウヨック君とミザリー嬢が聖王母の桃を食べて不治の病となった。それを持ち帰った聖騎士共は、既に惑わされて悪の道に堕ちておったのだ。
その証拠に、虫けらのダンジョンから戻った三人の聖騎士はファットバーラ卿に歯向かい刃を向けた!」
それを聞いた生徒たちから、悲鳴が上がった。
聖女や神官たちにとって、聖騎士の裏切りはとてつもない恐怖だ。
非力な自分たちは、聖騎士のような強者に守られてこそ安心して力を発揮できる。それが、背中から刺してきたら……。
震え上がる生徒たちに、インボウズは仰々しく言った。
「これは由々しき事態である!
ゆえに、ユリエルは教会の総力をもって除かねばならぬ!
そして裏切った聖騎士たちも、もはや正気を失って手遅れ。これ以上被害を広げる前に、同じく神敵として討伐することになった。
何と悲しく恐ろしい事か!
あの魔女は、恐るべき邪淫でここまで世を歪めたのだ!!」
生徒たちは、泣きそうになってまた悲鳴を上げた。
こんなひどい事が、この世にあっていいのか。
聖騎士たちはいつも信心深く正義に満ちて、自分たちや民を邪なものから守ってくれているのに。
ユリエルは、そんな当たり前の安心すらも奪いにくるのか。
これまでも十分悪い奴だと思っていたのに、まさかここまで悪い奴だったなんて。
愕然とする生徒たちに、インボウズは心配のふりをして平然と追い打ちをかける。
「おまえたち今年の卒業生は、不幸にしてあの災厄と同級生になってしまった。何かの機会に、疑われることがあるやもしれん。
だが、魔女討伐に誠意をもって取り組めば、そのような疑いは晴れる!
諸君、これから世に出て人々を守る前哨戦として、我らが学園も総力を結集して魔女討伐に向かおうではないか!!」
要約すると、ユリエルとの関係を疑われたくなかったらもっと教会に協力して身も財も捧げよということだ。
だが生徒たちは、追い立てられるように必死になって拍手した。
何としてもユリエルを世の中から消さなければと、強迫観念のように思わされていた。
だって、何であんな孤児院出の変人のために自分たちが疑われなきゃならないのか。自分たちは何も悪くないのに、ひどすぎる。
そのうえ憧れの聖騎士たちの心まで奪われたら、自分たちは誰に守ってもらえというのか。
聖女や神官たちにとって、付き合って結ばれたいナンバー1は聖騎士である。それを淫らに奪いに来るユリエルは、女として絶対に許せない泥棒猫の女王だ。
インボウズの話をさらに夢見る乙女心で曲解して、生徒たちはそう思い込んだ。
それを否定する材料は、何一つ彼女たちの耳に入らない。
裏切った聖騎士たちがユリエルの潔白を知ったことも、刃を向けられたファットバーラ家が裏で非道な事をしていたのも、教会に都合の悪いことは全て。
ユリエルがどれだけ真実を訴えてもロドリコがどれだけそのために声を上げても、聞く耳持たない。
だってそいつらは、あってはならない神敵だから。
耳を傾けて同類とみなされるなど、もっての外。
「冗談じゃないわ、こうなったら、みんなのために全力で戦いを支援するのよ!」
「ええ、私の憧れの聖騎士様まで堕とされてたまるもんですか!」
「あんなにモテなかったのに、邪道でちょっとうまくいって生き延びたら調子に乗ってこんなことまで……。
あのクソ喪女がここまでやれるなんて、とんでもない魔の力を借りているに違いないわ!」
ユリエルが邪な色香で聖騎士を思いのままにしたと誤解し、嫉妬と女としての対抗心で言いたい放題である。
ただし、内心これまで以上に支援しても倒せるかの不安はあるのだが。
しかしインボウズは、安心させるように告げた。
「なに、心配することはない。
ユリエルが神敵となった以上、教会も討伐に本腰を入れる。
近いうちに聖歌手のタカネノラが、討伐パーティーの一員として来るそうじゃ。輝かしい先輩の勇士を、見届けるが良い!」
「キャーッ!!」
一転、大興奮の黄色い声が上がった。
タカネノラと言えば、この学校を卒業して聖なる歌で有名になった楽聖女である。
その歌声はたまらぬ高揚を与えると同時に強化魔法としても強力で、タカネノラは戦いにライブに忙しい日々を送っているという。
それが、この学園に来てくれるとは。
生徒たちは、正義の戦いとアイドル来訪に沸き立った。
「他にも、教会の本気の戦力がかけつけてくるぞ。
皆、大切な彼らに万が一が起こらぬよう、奮って支援するんじゃ!」
インボウズが締めると、爆発的な拍手が巻き起こった。
これが無実の同級生の尊厳と真実を賭けた戦いだなどと、もう大多数の生徒には知ったこっちゃないし考えるのも面倒くさい。
未来の旦那様を守り、憧れの聖歌手に会える。
それが正義なんだから、自分たちの人生を懸けて支援する時だ。
たとえどんな恐ろしい魔女でも、正しい幸せを望む女の子の気持ちは絶対負けないと、的外れな闘志を燃やしていた。
その気持ちでずっと戦い続けているのが当のユリエルであることなど、彼女たちは考えることもできなかった。
このおぞましい発表を、カリヨンたちは悔しさを噛みしめて聞いていた。
自分が濡れ衣を着せて無関係な人にここまで被害を出しておいて、まだ白を切るどころかさらに巻き込むとは。
この理事長で枢機卿とかいう肩書のクズに、人の心は欠片もないらしい。
だが、本当にもどかしいことだが、これで自分たちが声を上げるのはもっと難しくなった。
ユリエルが教会認定の世界の敵とされた今、それに味方すると判断されたらどうなるか……分からないカリヨンたちではない。
(まずいですね、神敵ということは他の枢機卿も賛成したということ。お父様は、賛成しなかったから目をつけられたか……。
反逆されたファットバーラと罪を暴かれたブリブリアント、ユリエルは理事長以外の枢機卿の恨みも買ってしまったのね)
最近の教会の動きから、カリヨンは何となく察した。
ユリエルは、インボウズ以外の大多数の枢機卿にとっても、消えてほしい邪魔な存在になってしまったのだと。
(……まあ、あれだけ血をばらまいて被害を出したらそうなるわよね。
魔族の強化で被害に遭った人たちや枢機卿は、どうしたってユリエルを憎むもの)
ユノも、地獄の戦場を思い出して頭を抱えた。
ユリエルが潔白を証明したいのは、分かる。人間の中でその手段がないことも、よく分かる。
ついでにユリエルが事実を信じず自分を捨てた人間を恨む気持ちも、人として自然な感情だろう。
しかし、それに従ってこれでもかと頑張った結果がこれだ。
北風と太陽のように、冷たく激しく吹けば吹くほど人は頑なに拒絶する。
(……といっても、私だって人間の中でどうすればいいかなんて分からないもの。
聖騎士が裏切ったのだって絶対そっちが正しいんだろうけど、こうなっちゃったら完全に逆効果ね。
……一体誰がどうやったら、ユリエルは報われるのよ!!)
何をどう足掻いても壮大に裏返る展開に、ユノは頭が痛くなった。
だが、これが現実であり、悪徳枢機卿の手腕なのだ。自分たちが今声を上げれば、潰されるだけでなく、またユリエルを追い詰めるのに利用される。
そうだけはなるまいと、ユノとカリヨンはぎゅっと唇を噛みしめた。
しかしその肩をちょんとつついて、ミザトリアがささやいた。
「我慢できるあんたたちはいいわよ。
でも、シノアのあの顔……大丈夫なの?」
はっとシノアの方を見ると、シノアはだばだばと涙を流しながら、何かを決したような顔をしていた。
同時に、こちらを探る視線に気づいてびくりとする。
その出所は、インボウズの隣に立つオニデス大司教。
その娘であるワーサがまだ聖女になっていないことに気づいた途端、ユノの背中に冷たいものが流れた。
街の教会でも、ユリエルの神敵認定のことが大々的に発表された。
これだけで、インボウズに少なからず疑問を持っていた人々も、やっぱり教会が正しいのかなと思ってしまう。
「神敵って……あの変人娘がか?」
「いやでも、それくらい大事ってことだろ。
教会がここまでやらんといかんってことは、やっぱ一筋縄じゃいかんのだろうな」
「私たちは疑ってしまったが、枢機卿も苦労しているのかも。
オトシイレール卿だけでなく、他の枢機卿も認めるような世界の敵だから」
聖呪が飛んでいかないのも、そこまで重大と認められるような敵なら仕方ない。きっと、自分たちには思いもつかないような何かがあるに違いない。
インボウズだけではなく教会全体の判断なのだから、正しいに違いない。
人々は簡単に、そう信じ込まされてしまう。
インボウズはやらかしたが、人々にとって他の枢機卿はまだ信用できる。そして、魔に降って人を殺す奴の言うことなど聞きたくない。
何より、神敵をかばう奴だなどと言われたら生きていけない。
そうして信仰心という名の服従に引き戻された人々の前に、今までになかった免罪符が並べられた。
「皆さま、神敵の言うことを少しでも本当だと思いかけたことはありませんか?これはそのような悪の誘惑から皆さまを守り、その罪を清めてくれます。
それからこちらは、実際に戦う方用のになりますが……」
冒険者ギルドは、新しい免罪符の話でもちきりだった。
「おいおいマジかよ!」
「ああ、大マジだ、何たって教会が売ってるんだぞ」
冒険者たちにとっても今回の免罪符は、予想斜め上をいくものだった。しかし、つい鼻の下が伸びる、夢と股間が膨らむ代物だ。
「神敵と交わる罪を許し、誘惑に堕ちず神敵に罪を分からせる免罪符!
すげえもんが出てきたな」
言葉の通りである。
要は神敵となったユリエルやその仲間を犯しても罪になることなく、しかも誘惑で従わされずに済む。
ユリエル一味を倒して犯すためだけと言っても過言ではない、ふざけた免罪符だ。
「……そう言や、汚れがうつるとかいって犯すの禁止されてたな」
「なるほど、これがあればノーリスクで楽しめるのか!
聖騎士すら堕とす、隠れた極上の女体を……ヒヒヒッ!」
ユリエルが神敵とされた理由から妄想を膨らませて、男の冒険者たちはますます下卑た笑みを浮かべる。
聖騎士が堕とされるくらいだから、きっとユリエルの肉体はすごいに違いない。
思い返せば胸は大きい方だったし、いつもズボンをはいていてよく分からなかっただけで、脱いだらすごいのかもしれない。
言動が変わっていたので今まで誰も味わわなかっただけで、体は極上の名器だったのかもしれない。
なまじ誰も知らないせいで、男どもの夢はどんどん膨らむ。
中には、なぜユリエルと付き合わなかったのかと後悔する者までいる始末だ。
「どうせ聖騎士も魅了でやったなら、それさえなけりゃ怖くねえ!」
「そう言や、元アラクネがさらに美人になったらしいぞ。あいつのせいもあるんじゃねえか?
……ということは、これを持ってユリエルを人質に取って脅せば、元アラクネと三輪車も……グヘヘヘ!」
「一段階前の蜘蛛女郎の時に、あいつうっかり下をはかずにビキニアーマーめくっててよ……ありゃ絶景だった。
そうだよ、下半身も人間ぽくなったんだから、今ならヤれる!」
下種なやり方が解禁されただけで、この妄想お花畑である。
街で普通の女と付き合えない下品な男の冒険者にとって、美しい女の敵とはそういうことを期待するものだ。
そこに教会が安全装置をくれてヤッていいと公認したら、当然のようにこうなる。
逆に女の冒険者たちは、その光景とユリエルに嫌悪を丸出しにしていた。
「あーやだやだ、悪い事で男の気を引くなんてサイテー!」
「何が何でも男の気を引きたかったのは分かるけどさ、これはないでしょ!
神敵になって男の目をくぎ付け?邪悪な力で聖騎士ハーレム?全世界の真面目に生きる女の敵よ!」
「こうなったら、絶対に分からせて絶望させてやるわ!
世界はてめーの思い通りじゃねえんだって」
「討伐されて死んだら、もう男を堕とせないものね」
以前は非モテを笑われていたのに、今は完全に女の敵扱いである。
インボウズが売り出した最低最悪の免罪符によって、人々の中のユリエルのイメージは原型と真逆に歪められていった。
その恐怖の流れを、ギルドマスターは冷や汗を流しながら眺めていた。
(何てこった……僕はまだ、オトシイレール卿を侮っていたというのか!
こんな手段で戦力を欲望でかき集め、同時に聖呪の不手際を解消するとは!)
ユリエルが処女だと知っているギルドマスターには、こんな免罪符を売りだしたインボウズの意図が分かった。
聖呪が飛ばないのは、ユリエルが純潔で本当のことを言っているから。
ならば純潔を失わせれば、聖呪は役目を果たす。
つまりユリエル討伐に赴く者にこの免罪符を持たせて、倒すついでに楽しませれば……ユリエルは汚れて聖呪に討ち果たされる。
邪淫が今嘘なら、本当にすればいい。
もっともこの場合、邪淫を犯すのは倒す側であってユリエルは被害者でしかないが……ユリエルが世界の敵と思われていれば何の問題もない。
そのうえ、教会は欲に溺れる男と正義の戦いに燃える女を忠実な手駒とし、さらに免罪符で儲けられる。
冤罪を後付けで真実とし、信用と利益をV字回復させるウルトラCだ。
(聖騎士が裏切ったのをそのように理由付けすれば、話に真実味が出る。
それに元アラクネは元々そういう目で見られていたから、イメージしやすい。
肝心のユリエルが実際どうなのかは、誰も知らん。
ここまでうまく状況を組み合わせて、やらかしの後始末までもっていく策を立てるとは……やはり、逆らわなくて正解だ)
正直ギルドマスターは、聖呪が飛ばなかった時点で、ユリエルの処女を売る案内状を持ってクリストファー卿の下に駆け込もうかと思った。
しかし、それをやると自分も罪を免れないため激しく迷っていた。
だが、こうしてインボウズがきちんとユリエルも聖呪も始末してくれるなら、このままの方がいい。
ギルドマスターは、やはり自分の判断は正しかったのだと胸を撫でおろした。
その判断を地獄で後悔する時が来るとは、この時は夢にも思わなかった。
この異常な空気から逃げるように、アイーダは酒場のカウンターに突っ伏していた。
家計のために、こんなの良くないのは分かっている。しかし今は、飲まずにはいられない気分だった。
(ユリエル……何でこんな事に!)
アイーダの脳裏に、男を紹介してくれと言ってきたユリエルの姿が浮かぶ。
あんなに恵まれた聖女なのに、たくさんの男と仲がいいというだけでアイーダを羨ましがったユリエル。
大人の男女のことを何も知らない、恋に恋する子供だった。
それが今や、邪淫で聖騎士を堕とす神敵。
(違うでしょ、ユリエル……あんたが望んだのは、こんなモテ方じゃない!
あんた、自分を愛してくれる一人と幸せな家庭を築きたいって言ってたじゃん!
だから、あたしを買って遊ぶ男はどうかと思って断ったのに……)
あの時のことを思うと、後悔しかない。
ユリエルの非モテの悩みが、男に愛されたいという渇望が、道を踏み外してこんなになるほど深かったなんて。
それで、こんなに多くの人を、世界を不幸にするなんて。
「あの時あたしが……しなければ……ユリエルは、違ったのかな?」
ぽろりとこぼれた、一言。
途端に、近くの席にいた男がぎょっとしてアイーダを見た。
「……何?」
「いや、何か病みかけてねえか?これでもう一杯飲んどけよ」
男はアイーダに少しお金を渡し、そそくさと去っていった。アイーダはその気づかいに、少しだけ慰められた。
しかし、去っていく男の胸中に気づくことはなかった。
(やべえやべえ……やっぱりアイツ、何かやってるよ!
こんな事、枢機卿の愛人でもなきゃ許されねえよな……くわばらくわばら!)
男はアイーダのこぼした言葉を聞いて、これまでも流れていた噂が真実だと思ったのだ。
すなわち、ユリエルが邪淫の罪を犯し反逆したのはアイーダが原因だと。しかしアイーダがインボウズの愛人であるため、罰せられないのだと。
ユリエルが神敵認定され、何をしてもいい……好きに犯していいと公認されたことで、アイーダに向けられる視線も違ってくる。
しかし周りがますます口をつぐむため、アイーダは気づかないままだった。
知らないものに、人は妄想を膨らませて期待しますよね。
いいものだと噂があったらなおさら。
非モテで誰も知らないということは、実体験をもって否定できる人がいないという意味にもなる。
インボウズの、最低最悪のプロパガンダと免罪符が炸裂しました。ただでさえいいように弄ぶつもりだったのが、復讐心に駆られて徹底的に尊厳を潰しにかかってきます。
そして、邪悪な破門劇はこの状況でまだ終わらない。
次回、この惨状にユリエルたちは……。




