番外編:だから始まる最終戦争-1

　サタンマルッコの朝は、馬にしては遅い。

　厩務員が朝の作業を始めればそこで暮らす馬達も目覚めようものなのだが、彼の馬に限ってはすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。

　その日も馬房の清掃に入った厩務員のクニオに押し退けられ、ようやく目を覚ましたほどだ。

「ぐーぶるるる……」

「はいはいちょっとどこうな」

　マルッコは不承不承といった体で移動し、鼻を鳴らした。

　

「ん？　ああこれ昨日やった新聞か。破くんだったら盗るなよな」

「ひーん」

　つーんと明後日の方向を向く被疑者。ビリビリに破かれた紙面には『サタンマルッコ、敗れる！』と赤い見出しで大きく書かれていた。

　ジャパンカップより一週間。勝者が居れば敗者も居る。今回はサタンマルッコが敗者であった、つまるところはそれだけの話。

　クニオが室内での作業を済ませたころには目も覚めたのか、マルッコもいくらかしゃんとした佇まいをしていた。

「なあマルッコ」

　その身体に触れながら話しかける。愛らしい瞳とまん丸の星がクニオを向いた。

「やる気十分だな？」

「ひんっ」

　当たり前だぜ。

　瞳に炎、額に日輪。激情を胸に宿して、譲れない戦いが始まる。

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ジャパンカップ反省会

名無しさん＠競馬板 20NN/11/25

凱旋門賞馬とはなんだったのか

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いうて丸いのもレコード走破だし！

２着でもすごいからよ！

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つーか鉄剣かよ

正直ここまでやると思ってなかった

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ミオ・ホンダ大激怒まったなし

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言ったよね！？

スティールソードは速い時計を持ってないから

流れたペースになったら勝てないって！

この結果は何！？

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競馬場でおっさんが「時計ないんやないんかーい！」

って喚いててちょっと面白かった

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俺は３角から叫び通しだったわ

のどガラガラ

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結果がこうなると分かってなかったから道中ひたすら不安だったが

そうと分かると名勝負だよなほぼマッチレースだったし

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３コーナーの前で鉄剣が突っかかったところで終わったと思ったが

まさかこんなことになるとは……

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思い返せば前後ろ逆だけど菊花賞もこんな感じだったな

これ有馬どうなんの？　どうすんの？

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結局最強論争は鉄剣ってことでFA?

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いや一応サタンは遠征帰りで本調子ではなかったという言い訳がある

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そんなん言ったら切りなくね？

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結局上位が全部４歳馬

また４歳だぞ今年どうなってんだよ牡馬全部４歳じゃねえか

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全部は盛りすぎ

スプリンターズSは６歳だったから（震え声

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牝馬は結構古馬が勝ってるとはいえコトブキがVM勝ってるからなぁ

サタン世代もとい鉄剣世代は凄いなぁ（手の平ギュルンッ

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これで年末他の世代の馬が勝つんですね分かります

そして秒で世代の名前を鉄剣にしていくスタイル、嫌いじゃないぞ

もっと勝者に媚びてゆけ

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アルカセットのレコードとか二度と更新されないと思ってたわ

よくやったぞ鉄剣

出来れば俺が馬券買った時にやってくれれば尚よかったぞ

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はずれとるんかーい！

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ガチでスティールの勝因なんだったの？

普通つぶれるよねあんな走りかたしたら

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前半1000mはいつものようにS氏がぶっ飛ばしてた

それに５馬身追走してた鉄剣も普通に考えたらかなりぶっ飛ばしてた

ラップ見る限り３～４コーナーで緩んでるんだが、距離が離れすぎてて

正直あまりそうは見えないんだよな……

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ストームライダーがここまではっきりスティールソードに負けたのショックだわ

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天皇賞がピークだったからってのもあるし

2400mはやはりライダーの適性距離ではないんじゃないか

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速いペースになったらダメってまるで根拠なかったよな

S氏にライダーにダイランドウ、正統派の先行馬からオーバーペースの逃げ馬まで

全部いるのに

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ダイランドウの居た天皇賞秋で掲示板に乗ってたんだからダメなわけねーよ

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速い時計持ってないってのは事実ではなかったな

速い勝ち時計は持ってなかったが

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今後10年2400mのレコードはかわらんな

歴史に名を残した馬になったわけだ

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キャリオン、いつになったら勝つんや(´・ω・`)

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もう無理じゃね？

7歳だろあの馬

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今年の有馬でラストラン説は囁かれてる

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ラストランっていやクエスが有馬で最後だな

有終の美を飾って欲しい

ここから始まった馬なだけになぁ

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二軍軍団も全部有馬か

グリムガムジョー

モデラート

キャリオン

ラストラプソディー

ミューズ

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あのあの、モデラートはGⅠ二勝してて、あの……

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実際4歳と戦って相手になってない感はある

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というか速いペースについていけてないような

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これ有馬どうなるの？

七星もこのまま有馬出るんだよね

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セヴンスターズ、オイオイ民……うっ！

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雑誌のインタビューで

日本競馬に対するあらゆる対策を施した(キリッ

などと発言していた殿下。

なおオイオイ民の存在は知らなかった模様

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完全なフラグ建て流石です殿下

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惨敗のおかげで有馬のオッズがうまそうだな七星

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まあなんか印象は悪くなったな

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しかしライダーが最後届かなかったのは本当に意外

追ってなかったのか？

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天皇賞メイチできてJCだから有馬考えて最後まで追わなかった可能性はある

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やはり根本的に2400が長いんじゃないか？

2000で強いのは疑いようが無いよな

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それこそクエスが勝ったアイリッシュチャンピオンステークスみたいなレース

だったら間違いなく勝ってたな

名無しさん＠競馬板 20NN/11/25

とはいえここは日本で相手はS氏や鉄剣なわけでして～

名無しさん＠競馬板 20NN/11/25

ダイランドウもあの1回こっきりじゃなくてまた2000で走って欲しいよな

少なくとも府中2000は走れる事が分かったんだし

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マイルCSの勝ち方が危なげなさ過ぎて変な笑いでたなダイランドウ

やれんならそれやれや！

名無しさん＠競馬板 20NN/11/25

去年は最後まで走れたし今年もいけるかなダイランドウ

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なんだろうこの運動できない子のマラソン大会みたいな言い方

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そして外れない竹中ちゃんの本命

去年からマジですげえな死ぬんじゃねえのあの爺さん

名無しさん＠競馬板 20NN/11/25

勝てない組みに勝って欲しい気もするし

強い馬がしっかりかってやっぱりねってなってほしい気もする

名無しさん＠競馬板 20NN/11/25

ところでここ、JC反省会会場なんです

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「今年の年度代表馬、どうなるんだろうな」

　雑誌記者同士の情報交換をかねた食事会の場所にて、誰かがふいに放ったこの言葉は、静かな波紋を彼らの間に広げた。

「いや、そりゃ……凱旋門賞勝ったことだし、サタンマルッコで決まりなのでは？」

「年度代表馬って海外での実績を加味されないことが多くないですか？」

「サタンは今のところ、国内じゃ大阪杯しか勝ってないからな」

「でもクエスは……ああ大阪杯、天皇賞、JCと3つ勝ってたからあそこまで拗れたのか」

「それを考えるとサタンは国内成績がちょっと物足りない気もするな」

「二年連続は選ばれ難いってものありますもんねぇ」

「そういや去年はサタンマルッコが年度代表馬だったか。まぁ当たり前といえば当たり前か。絵になる馬だし」

「あれでバカ馬ってのはちょっと想像できないですよね」

「去年も結局、決め手になったのは有馬の勝利だったし、今年もそうなるんじゃないか？」

「偉業を達成した馬が多すぎるのも問題だ。愛チャンピオンS初勝利のクエス、凱旋門初勝利のサタン、国内短距離GⅠ完全制覇かつマイルCS2連覇のダイランドウ、そういうの相手に国内で勝ってきたスティールソードとストームライダー。ライダーは厳しいとしても、国内を重視するならスティールソードって線も濃厚なんじゃないか？」

「それぞれ特別賞や部門賞は間違いないとして、その中から選べといわれると……」

「変な話ですけど、決め手に欠けるというか選べないというか」

「そうなんだよなぁ、決め手に欠けるんだよな」

「あ、でもほら。その辺の馬、全部有馬記念に出るじゃないですか」

　誰が一番強い馬かを決めるのに、中山2500mの有馬記念は不適格だろう。

「なら」

「じゃあ」

「つまり」

「有馬記念に勝った馬が年度代表馬か」

　しかし、その年一番の馬を決める戦いは、有馬記念以外にありえない。

　最終決戦の舞台は暮れの中山2500m。

　二度とは見れないドリームレース。今年最後の最終決戦。

　矛盾しつつも意味の通る、奇妙なキャッチコピーはそのまま紙面を飾った。

『今年最後の最終決戦。貴方の愛馬がターフを駆ける』