39 エピローグ
それから一年後、生まれも育ちも定かではない庶民派の皇后が誕生した。
反乱の後に亡くなった皇太后と同じく庶民出の皇后を心配する者もあったが、彼女はその後朝貢に訪れた諸外国の大使や、その妻の歓待に才能を発揮し、国にとってはなくてはならない人物となっていく。
一年後には子供も生まれ、名実共に国母として珍重された。
しかし他人を差別することが嫌いで、身分にかかわらず相手を尊重した。
また後宮は政の裏であるという認識を持ち続け、妃や宦官、またはその縁戚が政に介入するのを決して許さなかったという。
彼女は常に自らは『裏方』だと語り、表舞台に立つことを厭った。
尊敬を込めて裏方皇后と呼ばれた彼女が使っていたとされる、化粧品は今も国中の女性に愛され、そのレシピは今日でも十分実用に耐えうるものとされている。
その後皇帝が七十歳で亡くなるまで、二人は仲睦まじく暮らした。
夫亡き後は皇帝となった息子を支え、しかし公には姿を見せなくなった。
享年八十八。
因みに、榮の外から来たとされる彼女の出身地がどこであったのか。それは今でも研究者の間で意見が分かれており、今日でも考古学上大きな謎として議論が続いている。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます
4/1 ビーンズ文庫様から《続続》に加筆修正を加えた最終巻が発売になります
書き始めた時には、こんなに長いお話になるとは思っていませんでした。
最後までお付き合いくださった皆さん。本当に本当にありがとうございました!




