道中
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「ミスカルデは研究が盛んな街で、伝説や伝承に関する本もいっぱいある街らしいんです。アドゥさんの神器についても何か分かるかも知れませんよ」
「へえー」
渡りに舟とはこのことか。確かに神器についてはもう少し詳しいことを知りたいと思ってた。
「なら、ちょっと調べて見るのも良いかも知れないな……調べ物は苦手だが」
「私も手伝いますよ!」
ニコニコと笑顔を浮かべるエリーゼは本当に可愛いな
……あ、いかん! 一瞬見とれてしまった。
「あの……アドゥさん」
う、バレた?
「里の大樹を……母様を守ってくれてありがとうございました」
大樹をかじっていた鉄犀を倒したことか?
(正直あの時は無我夢中で……)
あの時は何故か頭に血が上ってしまって、冷静な判断が出来ていなかった。大体、【守護壁】を使わずに戦うなんて無茶もいいとこだ。
(でも、俺はなんであんなに怒ったんだ?)
里長から酷い目に会わされたエリーゼと母親が死後も虐げされてると思ったら、無性に腹が立って……
「アドゥさん?」
「あ、いや、あの時は無我夢中で」
あわわ!
「確かに鉄犀相手に【守護壁】を使わないなんていつものアドゥさんらしくなかったですね」
あはは。だよな
でも、したこと自体には後悔はない。まあ、戦闘の内容には反省点もあるが。
「あの大樹にとっては鉄犀なんて大したことないんでしょうけど、それでも私にとっては……」
まあそうだよな。
「分かってる。あの大樹もお母さんもエリーゼを見守ってくれるさ」
俺達と会話出来たり、神器を持っていたりとあの大樹については謎も多いが、エリーゼのことを気にかけていることだけは確実だ。
「ありがとうございます、アドゥさん」
少しくぐもった声を出すエリーゼ。元気づけた方が良さそうだけど……
ドンッ!
その時、馬車が大きく跳ねた。その衝撃ど華奢で軽いエリーゼの体は跳びあがり……
「むぐっ!」
不意に何も見えなくなった。その代わりに柔らかな感触と甘い匂いが……
「ご、ごめんなさい! 私っ!」
エリーゼが慌てて俺の上から降りようとする。要するに、エリーゼが俺の方へ飛んできて、俺の上に覆い被さっているのだ。
「すみません、兄貴! 穴に気づか──!」
その時、間が悪く、行者台からロランが顔を出した。
が、すぐに前を向く。
「すみません、お邪魔でした!」
「違うっ!」
俺はそう叫ぶが、聞いているかどうか……
「えっと……」
エリーゼと俺の間に漂う気まずい沈黙……くそっ! ロランが余計なことを言わなかったら、事故で済んだのに。
「そ、そうだ! そう言えば里長から何か押し付けられたけど、まだ中身を見てなかったな」
「そ、そうですね! 確認しましょう」
本当はさほど興味は無いのだが、とにかく今の空気を変えたい。幸いエリーゼも同じ気持ちらしく、手早く荷物の中から小さな箱を取り出した。
「これは……?」
中にあったのはやや地味な指輪が二つ。だが、それを見たエリーゼは思わず息を飲んだ。
「この指輪! まさか……」
ん? エリーゼは知ってるのか?
「父様と母様が作った指輪です。凄い魔法がかかっていて、今は里の宝になっていたものです」
「ん? 何でエリーゼの両親の作ったものを今の里長が持ってるんだ?」
「里で暮らし始める前に、前の里長に渡したらしいです」
なるほど。贈り物ってことか。
「あ、あの……アドゥさん」
エリーゼが顔を染め、うつむきながら指輪の片方を差しだした。
「つけて貰えませんか……」
何で俺が? いや、別に嫌な訳じゃないけど……
「えっと、俺がつけた方がいいのか?」
「そ、そうしないと機能しないんですっ!」
「な、なるほど!」
そうか、そうか。でも、じゃあ、何であんなに恥ずかしそうにしてるんだろう?
と思ったのだが……
(うわっ……何か照れくさい)
エリーゼの細い指に指輪を通す寸前になって俺はようやく気がついた。だが、こういうのは勢いだ。俺はエリーゼの人差し指に指輪を通した。
「じゃあ、アドゥさんも」
エリーゼが俺の右手を取って、指輪を通す。すると、互いの指輪から白い光が伸びて一本の糸のようにつながった。
「これで大丈夫です」
光が消えた後、エリーゼはそう言った。
「一体何が出来るんだ?」
「色々ありますけど、まずは……」
エリーゼが自分の荷物に手を伸ばす。すると、荷物が指輪に吸い込まれるようにして消えた。
「これはマジックパックか?」
マジックパックとは、袋のような形状の魔道具で実際の容積よりも多くの物を収納できる力を持っている。性能はピンキリだが、基本的に高価なアイテムだ。
「はい。他にも……」
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