1/6
プロローグ☆デルムント
デルムントは、骨董市で彼を呼ぶ声に惹かれて腕輪に辿りついた。
金の地金に濃い青と空色の花が描かれている。
「俺を呼んだのはキミか?」
腕輪は弱々しく輝いた。
太さからすると、女性用のようだった。
「これは、どこかにペアリングがあるな」
恋人同士でお揃いでつけていたのだろうと、彼は推測した。
「店主、これをもらう」
「はい。100クレジットです」
デルムントは白い燕尾服のポケットからくしゃくしゃの紙幣を出すと支払いを済ませ、腕輪を自分の左手首にはめて店をあとにした。
まるでお伽話のように、腕輪は謳った。恋の歌だった。
私はあの人と添い遂げる約束をした。
けれどあの人は遠くへ行った。
私は年をとるまで独りだった。
やがて天に召された。
恋しいあの人はどんな人生を送っただろうか?
私はそれだけが気がかりです。
でも、私の人生も良い人生でした。
「そうか。じゃあ、訪ねてみようかな。もう一つの腕輪を」
左手の腕輪は嬉しそうに輝いた。
デルムントは白いシルクハットをちょいとつまんで被りなおし、感覚を研ぎ澄ますと、もう一つの腕輪めがけて時空を超えた。




