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冷徹皇太子の唯一の公女  作者: はるさんた


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29/30

最終話 永遠の誓い


季節は穏やかに移り変わり、宮廷の中庭には白い花が咲き誇っていた。

今日――王太子リュシアンとアメリアの結婚式が行われる日だ。


アメリアは純白のドレスに身を包み、鏡の前で深く息を吸い込んだ。

ふわりと広がるレースの裾、柔らかなヴェール、胸元に光るのは、リュシアンが選んだ青い宝石。

「……やっと、今日なんですね」

呟く声に、侍女たちは静かに微笑んだ。


その頃、王太子の控室では、リュシアンが黒と銀の正装を身に纏い、窓の外を眺めていた。

冷徹と呼ばれた彼の瞳は、今は驚くほど優しく、温かい。

「……ようやくだな、アメリア」

小さく呟き、彼は胸元の小箱を確かめる。

そこには、彼自身が贈る“永遠”の証――二人の指輪が収められていた。


王の祝福の言葉が響き、扉が開く。

陽光を受けながら現れた花嫁に、会場の空気が静まり返る。

アメリアの瞳はまっすぐにリュシアンを捉え、ふたりの間に言葉はいらなかった。


「リュシアン・アルディアーノ。あなたはアメリア・ロゼットを、生涯の伴侶として誓いますか?」

「誓う。命に代えても」


「アメリア・ロゼット。あなたはリュシアン・アルディアーノを、愛し支えることを誓いますか?」

「はい……誓います」


指輪を交わす瞬間、リュシアンの指先がわずかに震えた。

それは、誰よりも強い彼が、心から愛した人を失いたくないという――初めての弱さ。

アメリアはその手を包み込み、微笑んだ。


式が終わると、リュシアンは彼女の手を取って外へ出る。

夜風がふたりの頬を撫で、星々が静かに瞬いていた。


「……アメリア」

「はい、リュシアン様」

「もう“様”はいらない。これからは、隣にいる夫として――俺の名前で呼んでほしい」


「……リュシアン」

その一言に、彼の表情が緩む。

「やっと聞けたな。その声で俺の名を呼ぶのを、ずっと待ってた」


ふたりは人目のない庭園に歩みを進め、リュシアンがアメリアを抱き寄せた。

「俺の心を開かせたのはお前だけだ。冷徹だと呼ばれた俺が、今こうして笑っていられるのも……全部お前のおかげだ」

「わたしも……リュシアンに出会えて幸せでした」


「幸せ“でした”じゃない。これからも、だ」

唇が重なる。

長く、深く、優しい口づけ。

どんな言葉よりも確かな“誓い”。


夜の宮廷に、鐘の音が静かに響く。

アメリアは微笑み、リュシアンの胸に顔を埋めた。

「……ずっと、一緒にいましょう」

「ああ、永遠に」


――冷徹と呼ばれた皇太子と、ひとりの少女の恋は、

国を動かすほどの強さと優しさに満ちて、永遠に続いていく。



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