第17話 婚約式――誓いの時
朝の光が宮殿の大広間を柔らかく照らす。
婚約式当日、アメリアは緊張と期待で胸を高鳴らせながら、自室の大きな鏡を見つめていた。
以前は「婚約式はクリーム色のドレスがいい」と考えていたが、アメリアは気持ちを切り替えた。
(やっぱり婚約式は純白がふさわしい……パーティーはクリーム色のドレスにしよう)
ドレスは純白で、細やかな金糸の刺繍が胸元と裾に施され、光に反射して淡く輝く。
腰には薄いリボンが巻かれ、優雅なラインを描き、首元には小さな宝石をちりばめたチョーカーが華やかさを添える。
耳には真珠のイヤリング、髪はゆるやかな巻き髪にまとめられ、後ろには繊細なレースのヴェールが優雅に垂れていた。
「今日は……殿下と正式に婚約を誓う日……」
アメリアは胸の奥で高鳴る鼓動を感じながら深呼吸する。
扉が静かに開き、リュシアンが現れる。
白と紺を基調とした礼服に身を包み、肩には勲章が光る。
彼の視線がアメリアに注がれた瞬間、部屋の空気が一変する。
「アメリア……綺麗だ」
低く落ち着いた声が胸に響き、アメリアの頬を赤く染める。
「殿下……ありがとうございます」
アメリアは微笑み、少しだけ目を伏せる。
二人は手を取り合い、宮殿の大広間へと進む。
廊下の先には、整列した貴族や使用人たちの静かな視線が注がれる。
アメリアは小さく息を飲むが、リュシアンの手の温もりが安心感を与える。
広間に到着すると、祭壇前で婚約式が始まる。
神父が二人に向かい、静かに誓いの言葉を求める。
「アメリア……」
リュシアンの声が耳元で低く響く。
「俺は、誰よりも君を愛し、守ることを誓う」
アメリアは胸の奥で熱い感情を感じながら答える。
「殿下……私も……ずっと殿下だけを愛し、支えます……」
二人は指輪を交換し、誓いを確認する間、宮廷の視線が二人に集中する。
リュシアンは普段の威厳を保ちつつ、アメリアの前では柔らかな笑みを浮かべる。
その表情に、アメリアは胸の奥で安心と幸福を感じた。
式の終盤、リュシアンはアメリアの手をそっと取り、唇を重ねる。
短くても濃密なキスに、二人だけの世界が広がる。
唇を離すと、リュシアンは額にそっとキスを落とし、囁いた。
「誰も君に手を出させはしない……俺だけのアメリアだ」
アメリアは頬を赤くし、微笑みながらリュシアンに抱きつく。
「私も……殿下だけのもの……」
婚約式の誓いが、二人の心に深く刻まれる。
宮殿の光も、祝福する人々の視線も、二人だけの甘く濃密な時間を優しく包み込むようだった。




