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冷徹皇太子の唯一の公女  作者: はるさんた


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第14話 午後の小さな事件とリュシアンの優しさ


午後の宮殿、柔らかな日差しが回廊を照らし、庭園の緑が鮮やかに輝いていた。

アメリアはリュシアンの腕にそっと手を重ね、二人で静かに歩いている。


「殿下……こうして二人で歩ける時間、本当に嬉しいです」

アメリアが微笑むと、リュシアンは低く独占的に囁いた。

「俺もだ……俺のアメリアだ。誰にも渡さぬ」


その時、遠くで小さなざわつきが聞こえた。

使用人たちが慌ただしく駆け回り、声がかすかに響く。


「……誰か、怪我を……?」

アメリアはとっさに前に出ようとする。

「殿下、私……」


リュシアンはすぐにアメリアの手を握り、優しく制する。

「一緒に行こう、君が一人で行くことは許さない」

アメリアは胸が甘く高鳴る。

(殿下……やっぱり私だけを気遣って……)


二人はざわつきの方へ歩みを進める。

庭園の花壇付近で、使用人の一人が足を滑らせて転んでいた。

普段のリュシアンなら、誰が怪我をしようと関心を示さず立ち去るところだ。

しかしアメリアの手を握りながら、その表情はいつもより柔らかい。


「大丈夫か?」

低く落ち着いた声で、リュシアンは使用人に手を差し伸べる。

「無理はするな。痛みはないか?」

使用人は恐縮しながら頭を下げる。

「殿下……ありがとうございます……」


アメリアは胸の奥で甘く熱を感じ、そっとリュシアンの腕に寄りかかる。

(…殿下お優しい)


事件が落ち着くと、リュシアンはアメリアをそっと引き寄せ、腕で包み込むように抱き寄せた。

「今日の午後は、ずっと俺のそばにいるんだ……他の誰も――」

低く甘く、しかし独占的な声。アメリアは胸の奥でドキンと高鳴り、そっと頷く。

「はい……殿下……ずっと私だけを……」


二人は庭園の奥にある静かな小道を歩きながら、遠くでささやかれる宮廷のざわめきも気にせず、二人だけの世界を楽しむ。

リュシアンは時折アメリアの手を強く握り、腕で守るようにそっと包み込む。

「他の誰も……俺のアメリアに触れさせはしない」

アメリアは胸の奥で甘く震え、微かに息を漏らす。

(はい……殿下……ずっと私だけを……)


歩きながらリュシアンは小さな声で囁く。

「俺のアメリア……君がそばにいるだけで、世界は違って見える」

アメリアは頬を赤くし、心の奥で甘いときめきを感じる。

(殿下……こんなにも……私だけを……見てくれて……)


庭園の隅にある小さなベンチに腰を下ろすと、リュシアンはアメリアをそっと膝に寄せた。

「今日は何もかも忘れて、俺だけを見ていてほしい」

アメリアはそっと微笑み、リュシアンの胸に顔を埋める。

「はい……殿下……ずっと、殿下だけを……」


午後の光が庭園を柔らかく包み込み、二人だけの時間はゆっくりと、甘く特別に流れていく。

小さな事件も、遠くで聞こえる宮廷の噂も、二人にとっては二人だけの世界をさらに濃くする材料に過ぎなかった。


アメリアは心の奥で確信する――私は殿下にとって唯一無二の存在。

リュシアンもまた、胸に抱いたアメリアを意識し、誰にも渡さぬ決意を新たにする。

――俺だけのアメリアだ、と。


二人だけの世界は、今日も、穏やかに、甘く、そして確かに続いていった。



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