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俺が聖女で勇者が幼馴染で  作者: 鳩胸 ぽっぽ
オルファラン同盟学校編
57/103

お月見しましょ ②

 スライム芋の粉を練り上げ、団子ができた。

 俺はさっそく持ち帰り、へきるの部屋にやってきたのだが。


「へきるー? いねえの?」


 へきるの姿が部屋に見えない。

 ベッドの上とかにもいないし、俺の部屋にいるのか?とも思ったけどどこにもいなかった。おかしいな。もう夜だしへきるが出歩くような時間じゃないんだが……。

 一体どこ行ったんだアイツ。


「……まぁ、少ししたら戻ってくんだろ」


 と思っていたら。

 へきるが勢いよく扉を開いて現れたのだった。いつものこの世界で着てるような服ではなく、ジャージ姿で。

 見窄らしいジャージ姿のへきる。俺は思わずぽかんとしてしまった。


「……なにしてんの?」

「私、足りないことに気づいたんだ」

「足りない?」

「異世界ってさ……。基本ニートとか不登校の人とかよく召喚されるじゃん?」

「ふんふん」

「私は不登校じゃなかった……。毎日元気に律儀に登校してた!」

「偉いことだろ」

「ニートの人たちって結構理想的な異世界転生してるじゃん」

「……そうか?」

「私が理想の異世界転移じゃなかったのはきっとニートじゃないから……!」


 そこはイコールで結ばれねえよ。

 ニート=理想的な異世界転生ってわけじゃねえし、平和が一番で何よりだろうが。何異世界転生にそういう刺激求めてんだお前。


「まずは形から! 呉服店にジャージとなるものを頼んでみた!」

「お前って行動力だけはすごいよな」

「でしょ?」

「褒めてねえよ」


 たしかに異世界転移にジャージってのは割とわかるけども。


「最近はブラック企業で働き詰めで疲れたサラリーマンとかが多いイメージあるけどな」

「異世界トレンドって移り変わってくよね! ……そういえば今更なんだけどひよくんって異世界トレンドめちゃくちゃやってるよね?」

「そうか?」

「TS、チート、異種族と仲良くなるとか……。ずるくない?」

「チートはお前もだし異種族に関してはドラゴンと仲良くなった判定でいいのかは微妙だがTSはお前無理だろ。男が女になる小説より女が男になる小説はめっちゃ少ないぞ」

「私も女体化したい!」

「お前もともとの性別が女だろうが!」


 なにが女体化だお前!

 

「前世とか男の子じゃないかな……」

「お前そんなくだらねえこといつも考えてんのかよ」

「だって今のところ異世界でチート無双とか知識無双とかできてないもん! マヨネーズとかすでにあるし!」

「昔の奴が広めたんだろ」

「私は何で無双すればいいってんだよ! フィジカルの向上は地味すぎるよ! もっとド派手なスキルがよかったよ!」

「お前強欲すぎんだろ……」


 へきるは相当悔しそうにしていた。

 俺はもうつっこむのも疲れたので、へきるに月見でもしようぜと促し、窓の外を見る。満月が俺たちを照らしていた。


「団子うま……」

「味は団子にちょっと近いな。触感は団子だ」

「うぅ……。お月さま、私にどうか刺激的な異世界生活をお恵みください……」

「平穏が一番だろ。あまり高望みすんな」

「ひよくんには私の苦悩はわからないよ! 猫になれるし竜人になったし女の子になったんだから!」

「キレんなよ……」

「私はしょせん物語のモブ……」

「お前のそのフィジカルでモブを言い張るには無理がありすぎる」


 むしろモブは円卓とか言う強さでの順位付けで1位にはなりませんことよ。











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