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特にこれといった目的もない異世界転生  作者: zaq2
2:       
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#Ⅳ:少し勉強をするべきでしょうか

「ねえねえ、サグアさん!あの白騎士さまの素顔ってどんななの?」


 逗留することになり、それに加えて旅費を稼ぐためにと仲居として働き始め、忙しくなる時間帯の前に早めの夕食をとっていると、顔見知りになった従業員の一人、マルヤからそう聞かれた。


 マルヤは、私の仕事の先輩にあたる。

 当初の挨拶の時に「マルヤでいいよ。サグアさん」から始まり、「白騎士さまって、どういう方なの?」と、この仕事を教えてもらいながらも質問攻めをくださった方である。


 今では、逆に私が幼少の頃から身に着けた、世話に関する技術を教えている。


 このお店で働いているのも、元の主人に捨てられたという経緯もさることながら、お金が溜まったら亜人に対して忌避や差別のない他所の国で働くためだとか。

 その為にはと、仲居の仕事に加えて、女中として、給仕として技術を磨いている。


 ただ、男性に関してに、敏感に反応するのは如何なものだろうか。

 そもそも、この質問をしてくるのは、いったい何度目になるのか。



「それ()、秘密です」

「ええー、ハンサムとか、ハンサムとか、ハンサムとか、そういうのあるでしょ?」

「それ()、秘密です」



 休憩時間が重なると、大抵は"我が主"の話になる。

 そればかりか、何気にアプローチをかけている節もある。


 "我が主"は、お困りになられていない様ではありますが……

 もし、お困りになられている様であるならば、一考しなくてはなりません。



「この前に、買い出しの護衛として一緒になったんだけれど、好きな物を聞いたんだけど、これもよくわからなかったんだよね。サグアさん、本当に何かしらない?」

「知りません」



 本音を言えば、私が一番に知りたいぐらいです。

 それに、知っていたとしても"我が主"に許可を頂いていない以上、答えることはありません。

 私個人としても、それを伝える気にはなりませんが。



 そんなやり取りをしているとき、背後からせまりくる気配がしました。



「はぁ、つっかれたぁ……サグアちゃーん、疲れたぁ~、サグアちゃん成分いただきますぅ」



 そう言いながら、私にもたれかかってくる人物がいます。

 名を"ルーシャ"という、私と同じような青色の肌をしている亜人です。


 ルーシャさんは、私とマルヤとは違う部署で働いている女性で、なんでも、この店の女将さんに拾われてから、この仕事についているらしく、女将さんへの恩義で働き続けているとの事です。


 本人としては、その部署での働きに関しては、もともと()()()()()()()()であったからだと言ってましたが……


 ただ、その部署は、()()()使()()()()()らしいがために、心身ともに疲労がたまるとのこと。


 それでも、助けてくれた女将さんのお店を助けるためにと、頑張っている、と。 



「もうちょっと、このままでぇ~」

「そうですか。お疲れ様です。ですが、そろそろ離れて頂けないでしょうか?」

「もう少しぃ~」



 毎回毎回、私にひっついては、何故か首筋に口をつけ、何かを吸い出している感じがしています。


 この行為は、初日の初対面時にこうやって抱き着かれ、首筋に口を付けられてから、私が休憩時間のころ合いをみはからってか、毎日というぐらいに行ってこられてきました。



「ルーシャさん、サグアさんの好意に甘えすぎだよ、いい加減にしとかないと」

「だ~ってぇ、すっごく癒されるんですものぉ~」

「だからって、サグアさんも困ってるでしょう」



 今の夕食をとる行為に、邪魔には確かになっている事には変わりはないので、一般的に考えれば"困っているといえば困っている"というのでしょう。



「そうですね。困ってるといえば、そうなりますか」

「えぇ~でもぉ、そういう風には見えないんですけどぉ~?」



 抱き着かれている状態でも、気にせずに食事を続けられていますが。

 これは、とくに問題なく行えるように"我が主"からの訓練の一つとして課せられていました。


 身体の中に一つの芯を持ち、お腹にある部分に意識を止めておきながらも、胸に埋め込まれた、私の心の臓の代わりとなるものから、身体全体にお借りしている神力を行き届き続けながらも、一定の濃度で全身に留め続けていきます。


 「これを日常生活においても、呼吸をする様に行い続ける事。できるかな?」


 それが、"我が主"から課せられた課題でありました。


 当初の数か月は、強弱がうまくいかずに四肢の指先が破裂したりし"我が主"にご迷惑を多大にかけてしまいました。

 本当に申し訳ありませんでした。が、今ではいろんな箇所に量も濃さも質も強弱の調整が効く様になりました。


 "我が主"も、その行えてしまえた私を見ていただけたとき、



「ウソでしょ?本当にできちゃったの?えっ?本当に……?(マンガの受け売りだったんだけど……)えっ、あ、うん、すごく……がんばった、ネ?」



 と、労いの言葉をかけて頂き、そして頭を撫でられた際、心の臓で、魂で理解してしまいました。

 "我が主"は私の"我が主"であらせられると……あと、マンガなる神典があると理解しました。



「う~ん、成分補給完了ぅ~~」

「ほんと、ルーシャのそのクセやめなさいよ?サグアさんも、ルーシャのこの行為を止めていいんですよ?」

「そうですか?そうですね。では以降は、そうする様にします」

「えぇ~ひどぃぃ~~わたしがこんなに頑張ってるっていうのにぃ~」

「頑張っているのなら、迷惑をかけないようにするのが筋じゃないんですか?」

「サグアちゃ~ん、マルヤがいじめるぅ~」

「そうですか。マルヤさん、ほどほどにして行ってあげてくださいね」

「うわぁ、イジメるのは良いの!?ひどぃ~~」



 そうして、今度は席については夕食をとり始めたが……



「で、なになにぃ~?サグアちゃんの初めてのお相手が白騎士さんって話ぃ?」

「いえ、違います」

「なんでそういう方向にいってるのよ!」

「興味ないのぉ?わたしはあるしぃ」

「うっ、確かに、興味は……ありますって、違う!!白騎士さんがハンサムがどうかを」

「黙秘します」

「だってぇ、まぁ、わたしは思うんだけどぉ、うん、色男、というのとは違うんじゃないかなぁ」

「えー、じゃぁ、ルーシャはどういうのだと?」

「なんていうかぁ、こぅ……優しくてぇ、温かくてぇ、抱擁力があってぇ」



 ふむ。どうやら、ルーシャさんは、お分かりになられているようです。

 "我が主"の隠しきれないオーラというものを。


 やはり、客商売というのを行っていると、そういうものが磨かれるのでしょうか。



「お、ルーシャここにいたか、ご指名が来てるぞ」

「えぇ~~!!やっと休憩にはいれたのにぃ~」



 休憩所へとのぞきに来られた方が、角をはやされている方から、ルーシャさんへと声をかけられます。

 どうやら、仕事の話なのでしょう。



「急に入った太客だ。指定の宿まで私も同道する。粗相の無いようにたのむぞ?」

「太客ですかぁ……」

「だから、しっかり頼むぞ」

「はいはぁい、いまから準備しますよぉ」


 そう言っては、ルーシャさんは食事を途中で止めて席を外していった。


 ご指名という事で、ちょくちょく外にも出ていく事がある仕事らしいです。

 一体、何をされているのかと、一度、聞いた事がありますが"殿方が喜ぶ事"と仰っていました。


 "我が主"は女性の為、その事を知る必要は無いと判断しました。

 が、後日に"淑女も相手によっては喜ぶ事"とも仰ってもおられていた事を思い出します。



 ……



 ……少し勉強をするべきでしょうか。



サグア視点で書いてみたかったから書いた。

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