#五:増えてる!増えてる!
一宿一飯のお代として、昼は人夫、夜は用心棒として常駐する事になり申した。
人夫といっても、雑用がほとんどですが。
あとは、女将に連れられてあちらこちらへと連れまわされたぐらいです。
「誇示目的だよ。うちにゃアンタの様な奴がいるぞ、手出しするなってね」
というのが女将の弁。
外に出るときは人夫ではなく、用心棒として扱われることになった。
たとえば、仲居の子が買い出しに出るときも、「アンタ、ついてってやんな」という女将の一言で用心棒として使われます。
まぁ、おかげで一部のオネーサンたちとは、仲良くはなれましたけどね!!
ちなみに、サグアは仲居というか、かなり本格的な家政婦として、テキパキと働いております。
しかも、すごく手馴れているので、馴れていない同僚を助けたり、アドバイスしたりと全体の質の向上につながっていっていき、「へぇ、やるもんだね」と、女将は褒めてもいました。
なお、一部の仲居さんたちに慕われ(意味深)ていた。
ただ、サグアのその衣装がですね、そういうお店の給仕服なので、不届き千万な所が、不埒極まる主張をしてるので、まことに遺憾でありながら、不届き至極な事になっております。
うむ、けしからん・ケシカラン……
(ペタペタ
……
ケ゛シ゛カ゛ラ゛ン゛ン゛゛(某所と比べてしまった
* * *
「白騎士さまー遊んでー」
「あそぼーあそぼー」
「……(ギュ」
今現在、ラーマさんといえば、奥庭にてチビッ子たちに責められています。
親は、同じ店で働いてる場合もありますが孤児もいます。
そういう事でもあるというのは、頭の隅にかなぐりすてて、今はとにもかくにも、子守で高い高い(屋根よりも)超高い!!
そして、その場で一時停止、かーらーのーバンジー着地をお披露目してから、キャッキャと喜ばれてます。
子供の無邪気な笑いっていいよね。
「「「もっかい!もっかい!!」」」
総勢12名、通算54巡目。
子供の無邪鬼な笑いの要求って恐ろしいよね……
「あきれた。あんた、まだやってたんだ、よく続けられるね」
「"そう思うなら、助けてくれ"」
「あんたたち!そこの白騎士様に用事があるから、そこまでにしときな!」
「「「はーい」」」
自分を呼びに来た女将の一声によって、子供たちは「また、遊んでねー」と言い残しては一斉に屋内へと帰っていく。
この窮地に来られた恰幅女将が、すばらしく美しい女神に見えるぐらいに、まぶしく感じた……。
* * *
女将に連れられて向った先は、なんかちょっと立派な教会の様な場所。
独特なシンボルが掲げられており、何かしからの宗教団体であるというのは解った。
「ほれ、行くよ」
中に入れば、確かに長椅子に祭壇と、何らかの教えを蒙る場所といえる。
そんな広間の隅の専用机にて雑務作業をしてそうな、やせ細った男が一人。
女将さんは、相手のそんなことを気にするわけでもなく、近づいては声をかけていた。
「来てやったぞ、輔祭さんよ」
「これはこれは、いらっしゃいませメルシェ様。後ろの御仁は?」
「最近、雇った用心棒さね」
やせ細った男は、こちらを下から上、上から下へと視線を向けてきたが、こちらが軽く会釈だけすると、女将へと視線を向けなおした。
「ここでは何ですので、いつもの部屋で」
「わかったよ、アンタはちょっとココでまってな」
「"了解した"」
と、一人ポツンと残された。
暇にまかせて周囲を観察してみる。
大きさといい装飾といい、実家の村の集会場の教会もどき?と大きく違いすぎる。
ちゃんと祭壇があって、大きめの神像みたいなものが鎮座している。
地元と一番の違いは、飾ってある像が男性像であること。
うちの実家は、女性像だったし、やっぱり国が違うと宗教も違うってところか。
その男性神像は、空に向かって空いた右手を掲げているポージングをしてはいるが、掲げているというか、何かをつかみ取ろうとしているという感じだろうか。
ま、地元の神様だし、お祈りをするぐらいはいいだろう。
えーっと、ここの宗教でのやり方わからないし、前世でいうところの〇〇スト教みたいなのでいっか。
たしか、父と、子と、精霊と、み名において、AMEN……
…… ……
何か、視線を感じる。
これは、あれか?
霊的な何があーだこーだとある奴ではなかろうか?
回避する手段は、見なかった、分からなかった、知りません。という奴で無視である
…… ……
…… …… ……
何というかね、ほら、あれだ、寝ているときの蚊みたいな?
気になったら、気になってしまって眠れないとかいう"アレ"レベルで、うっとおしい。
ええい、気にしない、気にしない、気にしない……
…… …… …… …… ……
…… …… …… ……
…… …… …… …… ……
…… …… …… …… ……
……って、増えてる!増えてる!
うっわー、ここで目を開けるの怖いわ。
無数の霊とかが浮遊してるとかなん?ここ教会とかじゃないの?
神聖な場所ちゃうん?
まてよ?
霊的なアレなんだし、そういや除菌効果のあるファブで、ファブると効果があると聞く。
ならば、除菌能力高めのファンタジー力でどっかいってもらうってことできるのではなかろうか?
そうだ、そうに違いない!!
では、皆さんご一緒に……ファンタジー力!!
* * *
「あんた、何やってんだ?」
「"はっ!?"」
いつのまにか、女将が表れた。
いや、祈りに没頭してたというか、無心になっていたというか、こちらに戻ってきていた事に気づかなかった。
「何だいご熱心に、あんたは神ってやつを信じてるのかい?」
「"……出会った事は、無いな"」
「は?」
この世界に来るときに、そういうのは経験してませんしね。
「"いや、何でもない。そうだな、生まれ故郷では、そう教えられたな"」
「なるほど、どうりで。別の宗の方法ではありましたが、ご熱心なお祈りでしたから。この聖堂にも穏やかな空気が流れている様な感じがしましたよ」
一緒にいた"やせ細った男"がそう言ってはくれたが、たぶんそれ、ファンタジー力で除菌したせいです。
うーん、ここは濁しておくか。
「"祈りというのは、通じるものだろうか"」
「そこまでご熱心であるならば、神が異なろうとも、喜ばれておりましょう」
「"そうだと、いいのだが……"」
そう言って、男神像を見上げる。
……どことなく、疲れている顔に見えるが、気のせいだろうか?
「けっ、なにが神様だよ。いいから、帰るよ」
「"了解した。邪魔をしたな……ええと"」
「ハルヴェル補祭と申します。本来ならば、司祭様がご挨拶もと思いますが、何分、忙しい身でして」
「ほら!!さっさとおし!」
「"あ、ああ。邪魔をした。ハルヴェル殿"」
玄関口の女将にせかされる格好で離れる形になった。
"ファブる"を動詞で使でばと書いてみた。




