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第79話 第二の試練:氷結の魔獣とリュウガの咆哮

『氷鏡の迷宮』を突破した俺たちが次に足を踏み入れたのは、

凍てつくような冷気に満ちた、

巨大な氷の洞窟だった。


天井からは、鋭い氷柱が無数に垂れ下がり、

壁は、まるで鏡のように磨き上げられた氷で覆われている。

そして、洞窟の奥からは、

何やら獣の唸り声のような、

不気味な音が響いてきていた。


「ここが、第二の試練…

『勇気の試練』の場所か…」

俺は、ゴクリと唾を飲み込みながら言った。

フィーリア様は、この試練について、

「あなたたちの、真の勇気が試されるでしょう」とだけ

告げていた。

一体、何が待ち受けているというのだろうか…。


「ケンタさん、気をつけてください。

なんだか、すごく嫌な感じがします…」

リリアさんが、不安そうに俺の腕を掴んだ。

彼女の薬草師としての鋭い感覚が、

この場所に潜む危険を察知しているのかもしれない。


「フン、どんな魔獣が出てこようとも、

このギド様の金槌の錆にしてくれるわい!」

ギドさんは、強がりを言いながらも、

その額には、緊張の汗が滲んでいた。


俺たちは、慎重に、

洞窟の奥へと進んでいった。

すると、やがて、

広大な氷の広間へとたどり着いた。

そして、その広間の中央に、

そいつはいた。


体長は、リュウガよりもさらに一回り大きく、

全身が、まるで氷の結晶そのものでできたかのような、

巨大な狼型の魔獣だった。

その毛皮は、純白の氷のように輝き、

鋭い牙と爪は、青白い冷気を放っている。

そして、その二つの瞳は、

まるで万年氷のように冷たく、

俺たちを獲物として捉えていた。


「こ、こいつが…

フィーリア様が言っていた、

試練の相手か…!?」

俺は、その圧倒的な威圧感に、

思わず息を呑んだ。

スキルウィンドウを起動するが、

やはり『識別不能』の表示。

だが、その強さは、

これまでに遭遇したどんな魔獣よりも

遥かに上であることは間違いなかった。


「グルルルルルルルルルルルッ!!!」

氷の魔獣が、

洞窟全体を震わせるほどの、

凄まじい咆哮を上げた!

その咆哮だけで、

周囲の氷柱が何本も砕け散る!


「ひゃっ…!」

リリアさんが、小さな悲鳴を上げて俺の後ろに隠れる。


「小僧! 嬢ちゃん!

こいつはヤバいぞ!

おそらく、この洞窟の主…

エンシェント・アイスゴーレムの眷属、

『フロスト・フェンリル』と呼ばれる種の上位個体だ!

一筋縄ではいかん!」

ギドさんが、かつて冒険者だった頃の知識を元に叫んだ。


フロスト・フェンリルは、

俺たちを完全に敵と認識したのか、

その巨体をしなやかに動かし、

恐ろしいほどの速さで襲いかかってきた!


「リュウガ!」

俺は、咄嗟に叫んでいた!

この絶体絶命の状況で、

俺が頼れるのは、やはり相棒しかいない!


その時だった。


洞窟の入り口の方から、

凄まじい突風と共に、

瑠璃色の閃光が飛び込んできた!


「グルルルルルァァァァァッ!!!」


リュウガだ!

翼の傷がまだ完全に癒えていないはずのリュウガが、

俺たちの危機を察知して、

ここまで駆けつけてくれたのだ!

その黄金色の瞳は、

怒りと、そして仲間を守ろうとする強い意志で燃えている!


「リュウガ!

来てくれたのか!」

俺は、思わず叫んだ。

心強い! これほど心強いことはない!


リュウガは、フロスト・フェンリルの前に立ちはだかり、

一回りも大きな相手に対して、

一歩も引かずに睨み合っている!

二頭の強大な獣の間に、

バチバチと火花が散るような、

凄まじい緊張感が迸る!


「ケンタさん!

リュウガさん、翼の傷がまだ…!」

リリアさんが、心配そうに叫ぶ。


「分かってる!

だが、俺たちも黙って見てるわけにはいかない!

ギドさん、リリアさん、

リュウガを援護するぞ!」


「「おう!」」

「はい!」


俺たちは、それぞれの武器を構え、

フロスト・フェンリルへと立ち向かっていく!

ギドさんの金槌が唸りを上げ、

俺の剣が氷の魔獣の体表を掠める!

リリアさんも、回復薬を準備し、

リュウガの傷が開かないように、

後方から支援の魔法(もし使えるなら)を放つ!

ピクシー・ドレイクたちも、

小さな体で果敢にフロスト・フェンリルにちょっかいを出し、

その注意を逸らそうと奮闘している!


だが、フロスト・フェンリルは、

あまりにも強大だった。

その氷の爪はリュウガの鱗を砕き、

口から吐き出される冷気のブレスは、

俺たちの動きを封じ込める!


「くそっ…!

このままじゃ…!」

俺たちがじりじりと追い詰められ、

絶望の色が濃くなり始めた、その時!


リュウガが、

これまでに聞いたこともないような、

天を揺るがすほどの、

凄まじい咆哮を上げた!


その咆哮は、

ただの威嚇ではなかった。

それは、リュウガの魂の叫び。

仲間を守りたいという、

純粋で、そして何よりも強い想いが込められた、

奇跡の力の発現だった!


リュウガの全身から、

瑠璃色のオーラが、

まるで炎のように立ち昇り始めた!

そして、その口元には、

蒼白い、しかし圧倒的な熱量を秘めた光が

収束していく!


「ま、まさか…リュウガ、お前…!」


次の瞬間、

リュウガの口から、

凄まじい勢いで、

蒼白い炎のブレスが放たれた!

それは、フロスト・フェンリルの氷の鎧を

いとも簡単に貫き、

その巨体を大きく吹き飛ばした!


「グギャアアアアアアッ!!!」

フロスト・フェンリルは、

断末魔の叫び声を上げ、

やがて、その場に力なく崩れ落ち、

氷の塵となって消えていった…。


「…やった…のか…?」

俺は、呆然とその光景を見つめていた。

リュウガが…ブレスを…?

しかも、あんなに強力な…。


リュウガは、荒い息を吐きながらも、

誇らしげに胸を張り、

俺たちに向かって、

「グルゥ」と小さく、しかし力強く鳴いた。

その黄金色の瞳は、

「どうだ、俺の力は!」と語っているようだった。


俺たちは、

フロスト・フェンリルという強大な敵を、

そして、フィーリア様の第二の試練、

『勇気の試練』を、

見事、乗り越えたのだ!

それは、リュウガの新たなる力の覚醒と、

そして、仲間たちとの揺るぎない絆が生んだ、

奇跡の勝利だった。

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