第14話 集荷ポイント設置と効率化の第一歩
『異世界物流システム』がLv.2に上がり、
俺たちの『ケンタ運送』(仮)は新たな可能性を手に入れた。
積載量や稼働時間の上限が少し上がり、
飛行ログやマップ機能も追加された。
これは大きな進歩だ。
だが、レベルアップしたからといって、
根本的な問題が解決したわけじゃない。
装備はまだLv.1の試作品だし、
何より、今の仕事のやり方には無駄が多すぎる。
「うーん、どうも効率が悪いんだよなぁ…」
その日も、俺はリュウガの背に乗って
リンドブルムの空を飛びながら、
スキルウィンドウの飛行ログとにらめっこしていた。
今日の依頼は3件。
1件目:街の東地区の商人Aから、隣村への書類配達。
2件目:街の西地区のパン屋Bから、別の隣村へのパンの試作品配達。
3件目:街の南地区の住民Cから、遠方の親戚への小包配達。
どれも小さな荷物だが、依頼主の場所がバラバラだ。
今のやり方だと、こうなる。
小屋から街の東地区へ行き、荷物を受け取る
→ 隣村へ配達
→ 小屋へ戻る
小屋から街の西地区へ行き、荷物を受け取る
→ 別の隣村へ配達
→ 小屋へ戻る
小屋から街の南地区へ行き、荷物を受け取る
→ 遠方の村へ配達
→ 小屋へ戻る
…非効率すぎる!
街と小屋、そして配達先を何度も往復している。
リュウガの飛行時間はもちろん、
俺が依頼主の元へ荷物を受け取りに行く手間もバカにならない。
これじゃあ、せっかくのリュウガのスピードが活かしきれていない。
(そうだ…
俺のいた世界の物流じゃ、こんなやり方はしない。
基本は『集荷』と『配達』の分業だ)
俺は前職の記憶を呼び起こした。
(例えば、ア○○○や○天で物を買うと、
まず巨大な倉庫(物流センター)から、
地域ごとの配送拠点デポに大量の荷物が運ばれる。
そこから、各ドライバーが自分の担当エリアの荷物をまとめて受け取って、
効率的なルートで配達していくんだ。
コンビニ受け取りとか、宅配便の営業所止めみたいに、
顧客が自分で荷物を持ってきたり、
受け取りに来たりする仕組みもあったな…)
つまり、
**荷物を一か所に集める『集荷ポイント』**があれば、
俺はそこに行くだけで複数の荷物をまとめて受け取れる。
街の中をあちこち移動する手間が省けるし、
リュウガも拠点である森と集荷ポイントを
往復するだけで済む。
「これだ!
集荷ポイントを作ろう!」
名案を思いついた俺は、
興奮してリュウガの首を叩いた。
「グルゥ?」(どうした?)
とリュウガが不思議そうに振り返る。
「なあリュウガ、
もっと楽に、もっと効率よく仕事ができる方法を
思いついたんだ!」
俺はリュウガに(一方的に)熱弁する。
スキルウィンドウでシミュレーションしてみよう。
さっきの3件の依頼を、
もし集荷ポイントがあったらどうなるか?
【旧方式(個別集荷)】
総飛行回数(拠点⇔街、街⇔配達先):6回
リュウガ総稼働時間(推定):約2時間30分
ケンタの移動・待機時間(推定):約1時間
ドラゴンギア耐久度消費(推定):-6
【新方式(集荷ポイント利用)】
依頼主が街近くの集荷ポイントへ荷物を持ち込む。
ケンタが集荷ポイントで全荷物をまとめて受け取る。
総飛行回数(拠点⇒集荷ポイント⇒配達先巡回⇒拠点):
1回(+配達先巡回)
リュウガ総稼働時間(推定):約1時間45分 [↓短縮!]
ケンタの移動・待機時間(推定):約15分 [↓大幅短縮!]
ドラゴンギア耐久度消費(推定):-3 [↓半減!]
「おお…!
やっぱり全然違う!」
スキルによるシミュレーション結果は一目瞭然だった。
飛行時間とギアの消耗が減るだけでなく、
俺自身の拘束時間も大幅に短縮できる!
これなら、もっと多くの依頼を受けられるし、
リュウガの負担も減らせる。
ダンジョン攻略のための準備時間も捻出できるかもしれない!
「よし、善は急げだ!
早速、集荷ポイントの場所を探そう!」
俺はリュウガに指示し、
リンドブルムの街へと引き返した。
問題は、どこに集荷ポイントを設けるかだ。
街の中心部は人目につきすぎる。
かといって、俺のボロ小屋まで来てもらうのは
依頼主にとって不便だ。
理想は、街の門の近くで、
あまり人通りが多くなく、
かつ荷物の受け渡しがしやすい場所…。
俺は街の周辺を歩き回り、
候補地を探した。
そして、西門の近くに、
使われなくなった古い見張り小屋を見つけた。
壁は崩れかけているが、小さなスペースがあり、屋根もある。
ここなら、雨風もしのげるし、
門に近いから依頼主も来やすいだろう。
なにより、大通りから少し外れているのがいい。
持ち主を探し出して交渉すると、
幸いにも「どうせ物置にもならん代物だ。好きに使え」と、
タダ同然で使わせてもらえることになった。
(最近、こういう幸運が多い気がする。
これもスキルの効果か?)
俺は早速、見張り小屋を掃除し、
簡単な補修を行った。
そして、ギドさんに頼んで作ってもらった
頑丈な木箱(鍵付き)を設置し、看板を立てた。
『ケンタ運送 - 荷物受付所(予約制)』
「予約制」としたのは、
俺が常にここにいるわけではないからだ。
依頼を受けたら、事前にリリアさん経由で連絡してもらい、
指定の時間に荷物を持ってきてもらう形式にした。
リリアさんにも事情を説明し、
集荷ポイントの管理
(鍵の開け閉めや、荷物の一次保管)を依頼した。
彼女は「面白そうですね! やってみます!」と
快く引き受けてくれた。
本当に頼りになる協力者だ。
そして数日後、
ついに集荷ポイントが稼働を開始した。
その日は、午前中に4件の依頼予約が入っていた。
俺は指定された時間に集荷ポイント(旧見張り小屋)へ向かう。
すると、既に依頼主たちが荷物を持って待っていた。
「おお、ケンタさん!」
「いつも助かるよ!」
顔なじみになった依頼主たちと挨拶を交わし、
木箱に保管されていた荷物を手際よく受け取る。
4件分の荷物をまとめてリュウガの荷物カゴに積み込み、
リリアさんに「行ってくる!」と声をかける。
「はい、お気をつけて!」
リュウガに乗り、空へ。
スキルウィンドウで最適な巡回ルートを確認し、
次々と配達先を回っていく。
以前なら半日以上かかっていたであろう4件の配達が、
昼過ぎには全て完了した。
小屋に戻り、スキルウィンドウを確認する。
《本日 午前依頼 4件完了!
信用度 +5 / 報酬:銅貨 45枚獲得》
《リュウガ稼働時間(午前):約1時間10分》
《ドラゴンギア Lv.1 耐久度 86/100》
「すごい…!
やっぱり効率が全然違う!」
リュウガの稼働時間も、ギアの消耗も、
明らかに抑えられている。
そして、俺自身の疲労も少ない。
これなら、午後の依頼も余裕でこなせる!
集荷ポイントの設置は、
まさに『ドラゴン便』にとって大きな一歩だった。
現代物流の基本的な考え方を応用するだけで、
これほどまでに効率が変わるのだ。
異世界だからといって、諦める必要はない。
改善できることは、まだまだたくさんあるはずだ。
俺はスキルウィンドウに表示された「信用度:C-」の文字を見つめる。
(よし、この調子でどんどん改善して、
信用度も、スキルレベルも上げていくぞ!)
次なる改善点はなんだ?
荷物の梱包方法か?
それとも、料金体系の見直しか?
あるいは、そろそろ『ケンタ運送』から
『ドラゴン便』に名前を変えるべきか…?
やるべきことは山積みだ。
だが、一つ一つクリアしていく先に、
必ず道は開けるはずだ。
俺は空を見上げ、静かに闘志を燃やすのだった。




