第133話:凱旋の朝と、動き出した世界
東山脈での、あの、世界の理を揺るがすほどの、
壮絶な冒険から、数週間が、過ぎた。
俺たちの、愛する故郷、
リンドブルムのドラゴンステーションは、
今、まさに、
新しい、そして輝かしい時代の、
その、力強い産声を上げていた。
夜明け前の、まだ薄暗い、ひんやりとした空気の中。
ステーションの、その広大な発着場には、
既に、俺たちの、かけがえのない翼たちが、
それぞれの、今日の、最初の仕事への準備を、
始めていた。
「ゲイル! 東のドワーフ都市への、今日の第一便! 天候は安定しているが、山頂付近で、まだ少し、気流の乱れが予測されている! 必ず、マグナ様が開いてくださった、あの、安全な陸路の上空を、トレースするように飛べ!」
「シルフィちゃん! エルフの森から、緊急で、高熱の子供に効くという、特効薬の輸送依頼よ! これは、最優先Aランクの、特別任務! 私が調合した、この、特別な小型保冷ポーチを、絶対に、落とさないように、気をつけてね!」
作戦司令室では、
もはや、薬屋の看板娘ではない、
この、巨大な物流拠点の、
その、全ての運行を、その双肩に背負って立つ、
若く、そして誰よりも、その信頼を集める、
最高の、そして美しい運行管理者へと成長を遂げた、
リリアさんが、
ギドさん特製の、巨大な『運行管理盤』を前に、
凛とした、そして驚くほどに的確な声で、
次々と、ウィンドランナーたちへと、
その、指示を、飛ばしている。
その姿には、もう、昔のような、
おどおどとした、か弱さの欠片もない。
あるのは、仲間たちの、その命と、
そして、依頼主の、その大切な想いを、
その、一身に預かるという、
強い、強い、責任感と、誇りだけだった。
ピクシー・ドレイクたちも、
まるで、小さな、そして勤勉な事務員のように、
リリアさんの周りを、ちょこまかと飛び回り、
新しく届いた依頼の羊皮紙を、
行き先別の棚へと、仕分けしたり、
あるいは、配達を終えたウィンドランナーたちの、
その、労をねぎらうための、
甘い、甘い、花の蜜のゼリーを、
準備したりと、
健気に、そして一生懸命に、働いている。
彼らの、その、愛らしい存在は、
この、殺伐としがちな、物流の現場における、
最高の、そしてかけがえのない、
癒やしとなっていた。
そして、ギドさんの、
あの、夢と、ロマンと、
そして、ドワーフとしての、その全ての魂が詰まった、
最新鋭の、巨大な鍛冶工房からは、
夜明け前から、
カン! カン! という、
心地よく、そして力強い、
その、槌音が、リズミカルに響き渡る。
彼は、
俺が、前職の知識を元に提案した、
『規格化された、モジュラー式コンテナ』の、
その、量産体制の構築に、
今、その、全ての情熱を、注ぎ込んでいた。
工房の外壁には、
彼が、その神業のような技術で作り上げた、
様々な、種類の、
そして、様々な、大きさの、
美しい、そして機能的な、
その、銀色のコンテナが、
ずらりと、
まるで、武器庫の、その、鎧のように、
誇らしげに、並べられている。
壊れやすい、ガラス製品や陶器を運ぶための、
特殊な、衝撃吸収材を内蔵した『ショック・アブソーバー・ボックス』。
リリアさんが考案した、
湿気に弱い、織物や、
あるいは、乾燥を嫌う、特殊な薬草を運ぶための、
『湿度管理・ボックス』。
そして、
俺たちの、その物流革命の、
その、切り札となるであろう、
究極の、保冷・保温コンテナ、
『コールドボックス・マークIII』の、
その、小型版、そして中型版…。
それら、全てが、
寸分の、狂いもなく、
同じ、規格で、作られており、
リュウガの、その巨大なカーゴユニットにも、
ウィンドランナーたちの、その小さなハーネスにも、
まるで、パズルの、そのピースが、
カチリと、音を立ててはまるかのように、
完璧に、そして美しく、
連結、そして換装することが、可能だった。
これこそが、
俺が、夢にまで見た、
究極の、『ユニットロードシステム』だった。
そして、
その日の、昼前。
その、ドラゴンステーションの、
その、日常の、その喧騒が、
その、ピークに、達しようとしていた、
その、時だった。
ゴオオオオオオオオッ!!!
空の、その、遥か、遥か、彼方から、
聞き慣れた、
そして、この、ステーションにいる、
その、全ての者たちの、
その、心を、一瞬にして、
その、歓喜と、興奮で、満たす、
あの、力強い、そして気高い、
その、王者の、咆哮が、響き渡った!
リュウガだ!
アクアティアとの『南西航路』の、
その、長距離定期便の、その任務を終え、
俺たちの、エースが、
今、まさに、
その、故郷へと、帰還したのだ!
その、瑠璃色の、そして神々しいまでの巨体が、
ステーションの、その、中央発着場へと、
ゆっくりと、
そして、どこまでも、優雅に、
その、姿を、降ろす。
その、背中に装着された、
巨大な、『ドラゴンギア Lv.3』の、
その、複合カーゴユニットの中には、
アクアティアの、
その、太陽と、潮風の、
その、恵みを、いっぱいに浴びた、
たくさんの、たくさんの、
その、宝物が、ぎっしりと、詰まっている。
地上では、
ギドさんが設計した、
特殊な、荷役用の、クレーンや、
リフトが、
既に、待機しており、
リュウガの、その、長旅の、その疲れを、
少しでも、早く、癒やしてやるために、
若い、そして熟練の、
その、地上スタッフ(グランドハンドリング・クルー)たちが、
驚くべき、そして完璧な、
その、連携作業で、
巨大な、コンテナを、
次々と、そして、迅速に、
荷下ろししていく。
その、荷下ろしされた、コンテナは、
すぐに、
隣接する、巨大な、
『仕分け(クロスドッキング)・ターミナル』へと、
運ばれていく。
そこは、
この、ドラゴンステーションの、
まさに、本当の、心臓部だった。
「みんなー
アクアティアからの、第一便、到着だよ!
担当者は、持ち場につけて頑張ろうね!」
リリアさんの、
その、凛とした、そして的確な、指示が、
ターミナル全体に、響き渡る!
アクアティアの、新鮮な魚介類が、
ぎっしりと詰まった『コールドボックス』は、
すぐに、
ウィンドランナーたちが運ぶための、
その、小型の、保冷コンテナへと、
その、中身が、移し替えられ、
リンドブルム市内の、
その、高級料理店や、市場へと、
それこそ、一時間も、経たないうちに、
配達されていく!
アリア様から、
アルフォンス侯爵への、
その、親書を運んできた、
その、ピクシー・ドレイクは、
受け取った、その、大切な手紙を、
誇らしげに、その、小さな口に咥えると、
一陣の、虹色の風となって、
領主の、その館へと、飛び立っていく!
ギドさんの、工房で、
その、材料として、使われる、
アクアティアでしか、採れないという、
その、特殊な、そして美しい鉱石は、
そのまま、
工房の、その、専用倉庫へと、
直接、運び込まれていく!
全ての、荷物が、
全ての、想いが、
この、場所で、
一度、交差し、
そして、
一切の、無駄も、
一切の、滞留もなく、
最も、効率的に、
そして、最も、最適な、
その、次の、目的地へと、
流れていく。
まるで、
巨大な、そして、
完璧なまでに、その、機能を、果たしている、
一つの、
美しい、
生命体の、
その、心臓のように。
俺は、
その、活気に満ちた、
そして、
俺の、その、社畜時代の、
その、全ての、理想と、
そして、その、夢が、詰まった、
その、光景を、
作戦司令室の、その、一番、高い場所から、
ただ、じっと、
そして、胸に、込み上げてくる、
その、熱い、熱いものを、
感じながら、
見つめていた。
俺たちは、
確かに、
この、世界の、その流れを、
変え始めたのだ。
だが、
俺の、その、進化した、
『異世界物流システム Lv.3』は、
同時に、
俺に、示していた。
この、広大な、広大な大陸には、
まだ、
俺たちの、その翼が、届かない、
たくさんの、たくさんの、
その、孤立した場所が、
そして、
俺たちの、その助けを、
その、声なき声で、
待ち望んでいる、
たくさんの、たくさんの、
人々が、いるということを。
俺は、
司令室の、その、巨大な、
アースガルド大陸の、その、地図の、
その、南に広がる、
まだ、
俺たちが、一度も、
その、足跡を、記したことのない、
その、広大な、空白地帯…
『灼熱の大砂漠』を、
静かに、
しかし、
次なる、挑戦への、
その、燃えるような、決意を込めて、
見据えていた。




