第132話:夜明けの帰還と、新たなる契約
全てが、終わった。
そして、
全てが、新しく、始まった。
俺たちが、
その、神聖な、そしてどこまでも過酷な『調停』の儀式を終え、
再び、その、光の満ちる地上へと、
その、姿を、現した時。
俺たちを迎えてくれたのは、
これまでに、俺が、
この、異世界に来てから、
一度も、見たことのないような、
あまりにも、あまりにも、
その、生命力に満ち溢れた、
美しい、美しい、
『静寂の森』の、
本当の、そして新しい、
夜明けの姿だった。
森は、もはや、
静寂ではなかった。
何百年ぶりかに、
その、呪縛から、解き放たれた、
木々の、その、銀色の葉が、
朝の、その、優しい陽光を浴びて、
キラキラと、そして嬉しそうに、
風に、そよいでいる。
その、葉と葉が、擦れ合う音は、
まるで、
森全体が、
その、喜びの、その歌を、
歌っているかのようだった。
鳥たちが、
その、美しい、そして多彩な、
その、さえずりを、
天に向かって、高らかに、
そして、心からの、歓喜を込めて、
響かせている。
小さな、森の動物たちが、
その、隠れ家から、
おそるおそる、しかし、
その、好奇心に満ちた、その瞳で、
俺たちの、その姿を、
遠巻きに、しかし、確かに、
見つめている。
そして、
エルフの、その、民たちが、
その、長老である、ライラ様と共に、
俺たちの、その、前に、
静かに、しかし、
その、全ての、民が、
その、瞳に、
温かい、温かい、感謝の涙を、
その、美しい、翠色の瞳に、
いっぱいに、いっぱいに、
浮かべながら、
その、深く、そして、
これ以上ないほどの、敬意を込めて、
その、頭を、垂れていた。
「…ケンタ殿、リリア殿、ギド殿…」
「…そして、偉大なる、竜の王たちよ…」
ライラ様の、その、
震える、そして、
その、魂の、その奥底からの、
その、感謝の言葉。
「あなた方が、もたらしてくださった、
この、奇跡を、
我ら、森の民は、
永遠に、永遠に、忘れることはないでしょう」
「この、森の、その、癒えることのなかった、
その、悲しい、悲しい傷跡を、
あなた方の、その、勇気と、
その、知恵と、
そして、何よりも、
その、種族を越えた、
その、温かい、温かい、絆の力が、
癒やしてくださった」
「もはや、我らと、
そして、山に住まう、ドワーフたちとを、
隔てる、
その、悲しい、過去の、しがらみは、
何一つ、ありはしません」
ライラ様は、
そこで、一度、言葉を切ると、
俺たちの、その後ろで、
その、ゴツゴツとした、
そして、今は、
どこか、照れくさそうな顔で、立っている、
ギドさんの、その顔を、
真っ直ぐに、そして、
どこまでも、その、優しい、
その、慈愛に満ちた、瞳で、見つめた。
「ギド・アイアンハンド殿。
誇り高き、ドワーフの、我が友よ。
これより、
この、『静寂の森』は、
あなた方、ドワーフの民を、
永遠の、そして、
かけがえのない、友人として、
いつでも、
その、両の手を、広げて、
歓迎することを、
この、世界樹の、その名において、
固く、固く、誓いましょう」
そして、ライラ様は、
再び、俺たち、
『ドラゴン便』の、その、全員の顔を、
見渡し、
そして、
その、未来への、
その、新しい、そして輝かしい、
その、約束の言葉を、
紡いでくれた。
「そして、ケンタ殿。
あなた方が、切り開こうとしている、
その、新しい『道』。
その、物流という名の、
その、希望の翼が、
この、我らの森を、
そして、西の、その、人間たちの国々とを、
再び、結びつけてくれるというのなら」
「我ら、森の民もまた、
その、ささやかながら、
その、全ての力を、もって、
あなた方の、その、偉大なる事業を、
支援することを、
ここに、固く、固く、誓います」
「我らの、森の、その叡智も、
その、奇跡の、薬草も、
そして、万が一、
その、必要とあらば、
この、白銀の、弓もまた、
常に、
常に、
あなた方と、共にあるでしょう」
エルフとの、
その、歴史的な、
そして、何よりも、
その、温かい、
その、同盟の、締結。
俺たちの、東山脈ルート開拓は、
その、最も、大きな、
そして、最も、困難と思われた、
その、障害を、
乗り越えたのだ。
***
俺たちは、
エルフの、その民たちに、
その、盛大な、そして心からの、
その、感謝の、宴でもって、
見送られ、
再び、
マグナ様が、
そして、ギドさんとカイ様が待つ、
ベースキャンプへと、帰還した。
俺たちの、その、一部始終の報告を聞いた、
大地の王マグナは、
その、琥珀色の、巨大な瞳を、
満足そうに、
そして、どこまでも、その、優しく、細めた。
『…見事だ、小さき者たちよ』
『おぬしたちは、
ただ、わしの、その、ちっぽけな、
その、依頼を、こなしただけではない』
『おぬしたちは、
この、大地の、その、最も、古く、
そして、最も、その、根深い、
その、悲しみの『澱み』そのものを、
その、絆の力で、
癒やしてみせたのだ』
『…よかろう。
わしの、約束は、約束じゃ』
『この、東山脈に、
おぬしたちが、望む、
その、最高の『道』を、
この、わしが、創り上げてやろう』
『その道を、使い、
おぬしらが、信じる、
その、繁栄の、その流れを、
この、大地に、もたらすがよい、調停者よ。
それこそが、
わしと、おぬしとの、
新しい、そして、永遠の、『契約』じゃ』
マグナ様の、
その、力強い、そして、
その、大地そのものの、
その、絶対的な、その、保証。
東山脈ルートの、その、陸路の、
その、安全は、
完全に、そして、永遠に、
確保されたのだ。
***
そして、
俺たちの、長く、
そして、あまりにも、
その、濃密だった、
その、東山脈での、冒険は、
終わりを、告げた。
俺たちは、
ギドさんと、カイ様、
そして、
この、山に残ることを決めた、
数頭の、アースドラゴンと心を通わせた
ウィンドランナーたちに、
力強い、再会の約束を交わし、
一路、
俺たちの、そして、
今や、大陸の、その物流の、
その、中心地となった、
懐かしい、懐かしい、
リンドブルムの、ドラゴンステーションへと、
その、翼を、向けた。
凱旋。
まさに、その言葉が、ふさわしかった。
俺たちの、その帰還は、
リンドブルムの、
その、全ての、民によって、
英雄の、それとして、
迎えられた。
俺たちは、
ただ、依頼を、こなしただけではない。
俺たちは、
この、世界の、
その、大きな、大きな、
その、悲しみを、一つ、癒やし、
そして、
三つの、気高き、種族の間に、
新しい、そして、
かけがえのない、絆の、架け橋を、
創り出すことに、
成功したのだ。
その夜、
俺は、
活気と、そして、
未来への、希望に満ち溢れた、
ドラゴンステーションの、
その、作戦司令室で、
新しく、そして、どこまでも、
その、可能性を、広げた、
アースガルド大陸の、
その、巨大な、巨大な、地図を、
ただ、じっと、
そして、胸に込み上げてくる、
その、熱い、熱いものを、
感じながら、
見つめていた。
リンドブルム、アクアティア、
そして、東の、ドワーフの都市と、エルフの森。
俺たちが、その手で繋いだ、
その、物流の、ネットワークが、
美しい、そして力強い、
光の、線となって、
地図の上で、確かに、輝いている。
(やったんだ…
俺たちは、本当に、
この、世界の、その流れを、
変え始めたんだ…)
だが、
俺の、その進化した、
『異世界物流システム Lv.3』は、
同時に、
俺に、示していた。
この、広大な、広大な大陸には、
まだ、
俺たちの、その翼が、届かない、
たくさんの、たくさんの、
その、孤立した場所が、
そして、
俺たちの、その助けを、
その、声なき声で、
待ち望んでいる、
たくさんの、たくさんの、
人々が、いるということを。
南の、その、灼熱の大砂漠。
そして、その先に広がる、
未知なる、オアシスの国々。
北の、その、極寒の、ツンドラ地帯。
そして、その、さらに、さらに向こう側にあるという、
まだ、誰も、見たことのない、
新しい、大陸…。
俺の、
そして、俺たち『ドラゴン便』の、
本当の、本当に、
胸躍る、冒険は、
まだ、
まだ、
始まったばかり、なのだ。
俺は、
仲間たちの、
その、温かい、そして、
どこまでも、その、頼もしい、
その、笑顔に、包まれながら、
その、新しい、そして、
どこまでも、どこまでも広がる、
その、未来への、その航路を、
静かに、
しかし、
これまでにないほど、力強い、
その、決意を込めて、
見据えていた。




