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第125話 開かれる陸路と、空の暴君

「その依頼、

我々、『ドラゴン便』が、

最高の、そして最速の仕事で、

確かに、お受けいたします」


俺の、その力強い返事に、

大地の王マグナは、

その琥珀色の、巨大な瞳を、

ほんの少しだけ、満足そうに細めた。

それは、まるで、

気難しい王が、

ようやく、自分の意のままに動く、

頼もしい、そして有能な家臣を見出したかのような、

そんな表情だった。


俺たちの、東山脈ルート開拓。

その、壮大で、そして途方もない計画は、

まず、この山の、もう一つの厄介事を

片付けることから始まることになった。


「よし、みんな、聞いたな!」

俺は、仲間たちに向き直り、

新たな、そして緊急のミッションについて、

手早く、しかし的確に指示を出す。

もはや、俺の頭の中は、

完全に、物流センターの、

百戦錬磨の現場監督のそれに切り替わっていた。


「作戦は、二手に分かれる!」

「まず、地上部隊!

ギドさん、カイ様、あなた方には、

この場に残り、マグナ様と共に、

東山脈ルートの、その最初の基礎となる

ベースキャンプの設営と、

そして、陸路の、その最初の数キロの

測量と設計をお願いしたい!」


「マグナ様が、そのお力で道を切り開いてくださるとしても、

その道を、我々人間や、

そして将来的に、馬車などが安全に通れるようにするためには、

ギドさんの、そのドワーフとしての土木技術と、

そして、カイ様の、

周囲の安全を確保するための、その剣の腕が、

絶対に、必要になるはずです!」


俺の言葉に、

ギドさんとカイ様は、

互いの顔を、一瞬だけ見合わせ、

そして、ニヤリと、

最高の仕事仲間を見出したかのように、

不敵な笑みを浮かべて頷き合った。


「フン、小僧のくせに、人使いが荒いこった。

だが、まあいいだろう。

この、大地の王の、その神業のような土木工事を、

この目で、特等席で見物できるというのなら、

それも、悪くはないわい」


「承知した、ケンタ殿。

地上のことは、我々に任せてもらおう。

あなた方は、空の、その厄介事を、

迅速に、そして見事に片付けてきてほしい。

アリア様と、この世界の未来のために」


「そして、空の部隊は!」

俺は、言葉を続ける。

「俺とリュウガ、リリアさん、

そして、ウィンドランナーの精鋭、

ゲイルとシルフィで編成する!」


「俺たちの任務は、ただ一つ!」

「南の頂に棲むという、

あの、怒り狂った『空裂きワイバーン』の群れを、

鎮圧…いや、『調停』することだ!」


俺の、その力強い宣言に、

リリアさんや、ウィンドランナーたちが、

ゴクリと、固唾を飲んだ。

殺すのではなく、鎮める。

それは、ただ敵を打ち破るよりも、

遥かに、遥かに、難しい任務になるだろう。


俺たちが、それぞれの準備に取り掛かろうとした、

その時だった。


『…まあ、待て、小僧』

マグナの、その、大地を揺るがす声が、

再び、俺たちの心に響いた。


『お前たちが、その空の、

ちっぽけな厄介事を片付けに行く前に、

この、わしの、

ほんの、ほんの、最初の仕事を、

見せておいてやろう』


マグナは、そう言うと、

その、山脈そのものである、

途方もなく巨大な、その右腕を、

ゆっくりと、

本当に、ゆっくりと、

持ち上げた。


そして、

俺が、スキルウィンドウの立体地図で示した、

東へと続く、その道の、

最初の、ほんの数百メートルの区間を、

まるで、

盤上の、邪魔な駒でも、

そっと、優しく払いのけるかのように、

いとも容易く、薙ぎ払った。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!


それは、

もはや、破壊ではなかった。

創造だ。


これまで、

巨大な岩や、険しい崖で、

完全に閉ざされていたはずの場所に、

まるで、最初から、

そこにあったかのように、

滑らかで、

そして、馬車が何台も、余裕ですれ違うことのできる、

広大で、そして美しい、

一本の、新しい道が、

瞬く間に、現れたのだ。


それは、

人間の、ちっぽけな技術など、

赤子の戯言のように、

遥かに、遥かに超越した、

まさに、神の、御業だった。


「す…すごい…」

俺たちは、

目の前の、その、

あまりにも、あまりにも、圧倒的な、

そして、あまりにも、あまりにも、

美しい光景に、

ただ、言葉を失い、

立ち尽くすことしか、できなかった。


(これが…大地の王の力…)

(これが、俺たちが、

これから、仲間として、共に道を創っていく、

その、本当の力なのか…)


俺の心は、

畏敬と、

そして、これから始まる、

壮大な未来への、

抑えきれないほどの、興奮で、

激しく、激しく、震えていた。


***


マグナ様の、その神の御業に見送られ、

俺たち、空の部隊は、

一路、南の頂へと、その翼を向けた。


道中、リリアさんは、

薬師としての知識をフルに活かし、

ワイバーンの、その氷の爪や牙による攻撃で

負傷した場合に備えて、

特殊な、凍傷を防ぐための軟膏や、

あるいは、彼らの精神を、

ほんの少しだけ落ち着かせる効果のある、

特別な、甘い香りのするお香などを、

小さなポーチの中で、調合してくれていた。

彼女の、その細やかな準備が、

きっと、この先の戦いで、

俺たちの、大きな力になるだろう。


俺は、

スキルウィンドウの、その進化した分析機能で、

ワイバーンたちの、その縄張りの範囲や、

彼らが、なぜそれほどまでに怒り狂っているのか、

その原因を、探っていた。


【分析:対象空域に、複数の、強力な魔獣の反応を検知】

【識別:空裂きワイバーン(上位種)。数は12頭以上】

【行動パターン:極度に興奮状態にあり、縄張り意識が異常に高まっている。無差別かつ破壊的な攻撃行動を繰り返す傾向】

【原因分析:巣の周辺に、外部からの、強力な魔力の干渉の痕跡を多数確認。おそらくは、ネプトゥーリアの連中が、

『追憶の羅針盤』を使い、この山脈で『深淵の水晶』の反応を探っていた際に、

彼らの巣を、土足で、そして無慈悲に踏み荒らした可能性:高】


「…やはり、テオンの奴らの仕業か」

俺は、奥歯をギリリと噛みしめた。

あの、自分たちの欲望のためなら、

他の、どんな命も、どんな誇りも、

平気で踏みにじる、外道どもめ…!


やがて、

俺たちが、目的の、南の頂へとたどり着いた時。

そこは、

まさに、混沌の、そして怒りの嵐が吹き荒れる、

地獄のような場所だった。


キーキー!

ギャアギャア!

十数頭もの、

これまで俺たちが戦ってきたワイバーンとは、

その大きさも、凶暴さも、

比較にならないほどの、

巨大な『空裂きワイバーン』たちが、

互いに、その鋭い爪や牙を剥き出しにして、

仲間同士で、壮絶な縄張り争いを繰り広げ、

その余波で、

周囲の、その巨大な岩壁を、

次々と、破壊し、

大規模な、そして極めて危険な土砂崩れを、

引き起こしていたのだ。


奴らは、もはや、理性を失っている。

ただ、その怒りと、恐怖に、

身を任せているだけだ。


「ケンタさん…ひどい…」

リリアさんの声が、悲しみに震える。


(このままじゃ、この山全体が、

崩落しかねない…!)

(マグナ様が、俺たちにこの任務を託した理由が、

ようやく、分かった…!)


この、怒りの連鎖を、断ち切らなければならない。

そして、彼らの、その傷ついた誇りを、

癒やしてやらなければ。

それこそが、この山の『調停』なのだ。


だが、どうやって?

あの、興奮しきった、

そして、もはや話が通じる状態ではない、

空の暴君たちを、

どうやって、鎮めろというのか?


(殺すのは、簡単だ。

覚醒したリュウガの、あの『蒼炎の裁き』なら、

おそらく、一撃で、

この群れごと、塵にすることもできるだろう)

(だが、それは、解決じゃない。

それは、ただの、一方的な暴力の押し付けだ。

それでは、あのテオンと、何一つ、変わりはしない)


(考えろ…!

俺の、このスキルで、

俺の、この物流知識で、

何か、何か、道はあるはずだ!)


(奴らの、この混乱の、その根本原因は、

『巣』を荒らされたことによる、

絶対的な『不安』と『恐怖』だ)

(だとしたら、俺たちが、まず、やるべきことは…)


「…見つけたぞ」

俺は、

スキルウィンドウが映し出す、

無数の、そして複雑な情報の中から、

たった一つの、

しかし、確かな、

希望の糸を、見つけ出した。


「リリアさん、ウィンドランナーたち!」

「君たちには、危険な、

しかし、何よりも重要な任務をお願いしたい!」


「そして、リュウガ!」

「俺たちで、

あの、群れの中でも、ひときわ大きく、

そして、最も、その怒りに我を忘れている、

あの、隻眼の、リーダー格のワイバーンの、

その注意を、引きつけるぞ!」


俺は、仲間たちに、

この、無謀で、

しかし、おそらくは唯一の、

その『調停』のための作戦を、

簡潔に、しかし力強く、伝えた。


「行くぞ、相棒!」

俺は、リュウガの背中の上で、

深く、深く、息を吸い込んだ。


「あの、空の暴君に、

本当の、空の王者の、

その、気高さと、その覚悟を、

見せつけてやるんだ!」


俺の、その魂からの叫びに応えるように、

リュウガが、

そして、俺の作戦を信じてくれた、

全ての仲間たちが、

一斉に、

その、決意の雄叫びを、上げた!


俺は、

リュウガの背に乗り、

一直線に、

あの、怒り狂う、隻眼の王の、

その、真正面へと、

一切の、迷いなく、飛び込んでいった。


二人の、空の王者の、

その、運命が、

今、まさに、

東山脈の、その最も高く、

そして最も、危険な頂で、

激しく、そして確かに、交差しようとしていた。

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