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第11話 Lv.1の翼と目覚めるスキル

ギドの工房でリュウガの採寸を終え、

理想の『ドラゴンギア』の設計図の片鱗を見た俺は、

興奮と同時に途方もない現実を突きつけられていた。

アダマンタイト、グリフォンの腱、ミスリル銀、深淵の水晶…。

どれもこれも、今の俺には到底手の届かない、

伝説級の素材ばかりだ。


「素材がなければ話は始まらん、か…」


ボロ小屋へ戻る道すがら、

俺はギドの言葉を反芻していた。

ダンジョン『疾風の迷宮』に挑む覚悟は決めた。

だが、それはそれとして、目の前の問題がある。


今の俺とリュウガは、いわば丸裸の状態だ。

鞍もなければ、荷物を安全に固定する手段もない。

これでは、受けられる依頼も限られるし、何より危険すぎる。

リュウガにも、俺自身にも、負担が大きい。


(ダンジョン攻略だって、今のままじゃ無謀すぎる。

せめて、最低限の装備だけでも先に手に入れられないか…?)


そうだ、ギドに頼んでみよう。

最高の素材が揃うまでの「繋ぎ」として、

もっと安価で手に入りやすい素材で、

簡易的な鞍と荷物カゴだけでも作ってもらえないだろうか?


俺は工房へと引き返し、

再びギドの工房の重い鉄扉を叩いた。


「ギドさん!

さっきのケンタです!

もう一つ、相談したいことが!」


しばらくして、ギィ…と扉が開く。

ギドは訝しげな顔で俺を見た。


「なんだ小僧、忘れ物か?」


「いえ、そうじゃなくて!

あの、最高の素材が揃うまで、

時間がかかるのは分かっています。

でも、俺たちは今すぐにでも、

もっと安全に飛ぶための装備が必要なんです!」


俺は必死に訴えかける。


「そこでお願いなんですが、

鉄や丈夫な木材、普通の革みたいな、

手に入りやすい素材で構わないので、

本当に簡易的なものでいいんです!

鞍と、荷物を入れるためのカゴみたいなものを

作っていただけませんか?

いわば、『レベル1』の装備です!」


俺は咄嗟に、

ゲームのような表現を使って説明した。


ギドは眉間に深い皺を寄せた。


「レベル1だと?

フン、ふざけたことを。

わしの技術を安売りしろというのか?

そんな間に合わせのガラクタ、

作るだけ無駄だわい」


やはり、職人のプライドが許さないか。


「そこをなんとか!

もちろん、ちゃんとしたお代は支払います!

それに、これはあくまで『試作品』というか、『繋ぎ』なんです!

これで経験を積んで、改善点を見つけて、

いずれ最高の『ドラゴンギア』を作るための

データ収集も兼ねて…」


俺は前職で培ったプレゼン能力(?)を総動員して

説得を試みる。


「それに、今のままじゃ、

素材を集めるためのダンジョン攻略すらままなりません!

まずは最低限の装備で、

俺たちの生存率と輸送能力を

少しでも上げる必要があるんです!」


俺の必死の訴えに、

ギドはしばらく腕組みをして考え込んでいた。

炉の火がパチパチと爆ぜる音だけが響く。


やがて、ギドは大きなため息をついた。


「…ちっ、仕方ねえな。

そこまで言うなら、

試しに作ってやらんでもない。

だが、勘違いするなよ。

これはあくまで『使い捨て』の試作品だ。

強度も性能も、

わしが本来作るものとは比べ物にならんぞ。

壊れても文句は言うな」


「はい! 十分です!

ありがとうございます、ギドさん!」


やった! なんとか説得できた!


「素材は工房にある余り物でなんとかする。

設計は…まあ、さっきの基本設計を簡略化すればよかろう。

鞍は革と木材で形を作り、固定ベルトをつける。

荷物カゴは…竜の腹の下に吊り下げる形にするか。

鉄のフレームに丈夫な網でも張ってな。

重心が下がるから、飛行も多少は安定するかもしれん。

簡単なものなら、数日もあればできるだろう」


ギドはぶっきらぼうに言いながらも、

早速作業台に向かい、

羊皮紙に新たなスケッチを描き始めた。

その背中は、どこか楽しそうにも見えた。


数日後、ギドは約束通り、

「ドラゴンギア Lv.1(試作型)」と呼ぶべき、

簡易的な鞍と荷物カゴ

(鉄フレームの網カゴ、腹部懸架式)を完成させた。

見た目は無骨で、お世辞にも格好良くはない。

だが、頑丈そうで、

最低限の機能は果たしてくれそうだ。


「ほらよ、小僧。

代金は銅貨で…そうだな、

素材費と手間賃で200枚だ」


思ったより安い。

余り物で作ってくれたからだろうか。

俺は有り金をかき集め、

ギドに銅貨を支払った。


早速、森へ行き、

リュウガに試作品を装着してみる。

リュウガは最初、

背中と腹に異物が固定されるのを少し嫌がったが、

俺が「大丈夫だ、これで楽になるぞ」と優しく声をかけると、

大人しく装着させてくれた。


鞍に跨ってみる。

…おお! 全然違う!

まだ硬くてゴツゴツはするが、

首にしがみつくより遥かに安定している!

固定ベルトを締めれば、

振り落とされる心配もかなり減りそうだ。

腹の下に吊り下げられた荷物カゴも、

ハーネスでリュウガの胴体にしっかりと固定されている。

これなら荷物の積み下ろしもしやすそうだ。


「よし、リュウガ、試しに飛んでみよう!」


俺の合図で、

リュウガが翼を広げる。


バサァッ!


以前よりもずっとスムーズに、

安定して空へと舞い上がる。

風圧も、鞍の形状のおかげで

多少はマシになった気がする。

腹の下にカゴがある違和感は少しあるが、

重心が安定しているのか、

飛行自体はむしろ滑らかに感じる。

これなら、もっと長距離も飛べそうだ!


「すごいぞ、リュウガ!

これならもっと色々な依頼がこなせる!」


俺が興奮して叫ぶと、

リュウガも嬉しそうに一声鳴いた。


ちょうどその時だった。


リュウガとの一体感、

そして未来への確かな手応えを感じた瞬間、

俺の目の前に、ふわりと半透明のウィンドウのようなものが

現れたのだ。


【 ピロリン♪ 】


《隠しスキル『異世界物流システム Lv.1』が覚醒しました》


《称号『ドラゴンライダー(見習い)』を獲得しました》


《称号『零細運送ギルドマスター』を獲得しました》


「な、なんだこれ!?」


突然の出来事に、

俺は空中で素っ頓狂な声を上げた。

ウィンドウには、さらに文字が表示される。


【異世界物流システム Lv.1】


現在のステータス:

運送ギルド名: ケンタ運送 (仮)

拠点: ボロ小屋 (リンドブルム郊外)

人員: ケンタ (マスター), リュウガ (エース輸送員),

リリア (協力者/受付見習い), ギド (協力者/装備開発担当)

所持金: 銅貨 XXX枚

輸送能力:

積載量: 小型 (網カゴ / 約XXkgまで)

積載物: 一般貨物 (常温 / 衝撃注意)

スピード: 高速 (リュウガ本来の速度 / 装備による若干のロスあり)

運送距離: 中距離 (ライダーの体力と装備耐久度に依存)

稼働時間: 短~中時間 (連続飛行はXX時間程度が限界)

信用度: D (口コミで少しずつ上昇中)

装備: ドラゴンギア Lv.1 (試作型 - 鞍、腹部懸架式荷物カゴ)


現在の目標:

ドラゴンギア Lv.2 (アダマンタイト、グリフォン腱、ミスリル銀が必要)

特殊コンテナ (深淵の水晶が必要)

安定した収入の確保

拠点の拡張


マイルストーン:

異世界転移達成!

リュウガとの出会い達成!

初仕事成功!

ギドとの協力関係構築!

ドラゴンギアLv.1獲得!

[次のマイルストーン: 疾風の迷宮にて素材確保]


「スキル…?

女神様が言ってたやつか!?」


そういえば、異世界に転移する直前、

意識が朦朧とする中で、

優しい声で「あなたの経験が活かせるスキルを授けましょう」

とか言われたような気がする…!

あれは夢じゃなかったのか!


しかも、なんだこのゲームみたいな表示は!

俺の運送業の状況が、

ステータスとして可視化されてる!?


「すげえ…!

これがあれば、目標設定も、現状把握も、

格段にしやすくなる!」


まさに、物流管理システムの異世界版だ!

積載量や距離、時間まで表示されるなんて、

まるで配車システムみたいじゃないか!


ウィンドウは、俺が意識を逸らすとすっと消え、

集中すると再び現れる。

どうやら、俺にしか見えないらしい。


「よし…!」


俺は新たな力の覚醒に興奮しつつも、

気を引き締めた。


スキルが目覚めたからといって、

やるべきことが変わるわけじゃない。

むしろ、目標が明確になったことで、

より一層、気合を入れなければ!


まずは、このドラゴンギアLv.1を使いこなして、

依頼をこなし、資金を貯める!

そして、ダンジョンに挑み、素材を集め、

Lv.2、Lv.3へと装備を強化していくんだ!


「見てろよ、異世界!

俺とリュウガの『ドラゴン便』は、

ここからが本番だ!」


俺はリュウガの首をポンと叩き、

新たな決意を胸に、

リンドブルムの空を駆けた。


隠しスキルの覚醒と、

レベル1の装備。


俺たちの挑戦は、

確かな一歩を踏み出した。

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