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第102話 嵐の海と、天から舞い降りた蒼き翼

俺たちが、

スキルウィンドウが示す、

巨大なエネルギー反応が渦巻く海域へと近づくにつれて、

海の様子は、一変した。


さっきまでの、夕凪に静まっていたはずの穏やかな海面は、

まるで巨大な釜の中で煮え滾る鍋のように、

荒れ狂い、

空には、不気味な、そして禍々しい黒い渦が、

まるで天に開いた大穴のように巻き始め、

紫電の雷鳴が、空気を引き裂くように轟いている。


これは、ただの嵐じゃない。

スキルウィンドウの分析によれば、

何か、人知を超えた、

古代の、そして強大な力がぶつかり合っている証拠だ。

そのエネルギーの余波だけで、

空間そのものが歪み、

俺たちの体が押しつぶされそうになる。


「ケンタさん!

あれを見てください!

あんなところに、船が…!」

リリアさんが、風雨に煽られながら、

震える声で指差した先。


荒れ狂う、山のような波間の中に、

一隻の、あまりにも小さな船の姿が見えた。

その船は、まるで木の葉のように、

絶望的に翻弄され、

今にも、あの巨大な渦の中心へと、

吸い込まれてしまいそうだ。


そして、その小さな、無力な船を、

執拗に、そして冷酷に、

まるで飢えた鮫が獲物を追い詰めるように、

一隻の、巨大で、

その黒い船体が地獄の使者のように見える、

禍々しいまでの威圧感を放つ黒い軍艦が、

その姿を現した!


間違いない、

俺たちが港の沖合で見た、

海洋大国ネプトゥーリア王国の船だ!

しかも、その船首に掲げられた、

黄金に輝く海獣の紋章は、

王族だけが使うことを許された、

特別な、そして絶対的な権力の象徴だった。


「くそっ!

あの小さな船に、誰が乗っているんだ!?

あのアリア様が…!?

ネプトゥーリアの奴ら、

あんな小さな船を、最新鋭の軍艦で追い回すなんて、

正気かよ!

外道のやることだ!」

俺は、思わず、心の底から叫んだ。

その理不尽な光景に、

俺の中の何かが、ブチリと音を立てて切れた。


その時だった。


小さな船の、その中央から、

まるで天を衝き、神に祈りを捧げるかのように、

眩い、どこまでも純粋な青白い光の柱が、

轟音と共に、天へと、

そして荒れ狂う黒い渦の中心へと、

真っ直ぐに突き抜けた!


その光は、あまりにも強く、

あまりにも神々しく、

そして、どこか悲しいほどに美しく、

俺たちは、その圧倒的な光景に、

思わず目を細めた。


【警告! 警告!

未知の高エネルギー反応、臨界レベルに到達!

周辺の時空間に、微弱な、しかし深刻な歪みを確認!

これ以上の接近は危険です!

解析不能! 解析不能!】


スキルウィンドウが、

これまで聞いたこともないような、

悲鳴にも似た、切迫した警告を、

何度も、何度も、俺の脳内に繰り返す!


「な、なんだ、今の光は…!?

まるで、神々の怒りのようだ…!」

ギドさんも、リリアさんも、

そしてリュウガやウィンドランナーたちも、

目の前の、あまりにも常識を超えた光景に、

ただ、言葉を失い、立ち尽くしていた。


「…ケンタ殿!

あれを!

ネプトゥーリアの船が…!」

上空を旋回し、状況を監視していた

ウィンドランナーの一頭が、

鋭い、そして焦りに満ちた声で叫んだ。

その視線の先には…。


光の柱が、ゆっくりと収まった後、

小さな船は、まるで全ての力を使い果たしたかのように、

波間に、か弱く漂っている。

そして、ネプトゥーリアの軍艦は、

その無防備で、もはや抵抗する術もないであろう船に、

最後の、そして無慈悲なとどめを刺そうと、

船首に備えられた、

巨大で、そして鋭利な衝角ラムを、

ゆっくりと、しかし確実に向け、

じりじりと、その距離を詰めていた!

その光景は、あまりにも、あまりにも無慈悲だった。


「やめろぉぉぉっ!!」


俺は、叫んでいた。

理由は分からない。

理屈じゃない。

ただ、あの小さな船を、

そして、そこにいるであろう、

まだ顔も知らない、しかし気高い魂を持つであろう人々を、

このまま見捨てるわけにはいかないと、

俺の魂が、

俺の中の何かが、

強く、強く、そして確かに叫んでいた!


「リュウガ!

行くぞ!

あの黒い船の、前に出ろ!

俺たちの、本当の力を見せてやれ!」


「グルルルルルァァァァァッ!!!」


リュウガは、俺の、その魂の叫びに、

そして仲間を守ろうとする強い意志に応えるかのように、

天を、そして海を揺るがすほどの雄叫びを上げ、

嵐の中を、

まるで一筋の、天罰の如き瑠璃色の流星のように、

ネプトゥーリアの軍艦と、

小さな船との間に、

その巨大な、そして神々しいまでの巨体で、

文字通り、割って入ったのだ!


突如として、天から舞い降りた、

巨大な、そして伝説に語られる瑠璃色のドラゴン。

その、神話の中から抜け出してきたかのような、

圧倒的な、そして絶対的なまでの存在感の前に、

その場にいた、誰もが、

ネプトゥーリアの兵士たちも、

小さな船の乗組員たちも、

全ての動きを止め、

ただ、呆然と、

信じられないものを見るかのように、

空を見上げていた。


「な、なんだ、あの竜は…!?」

「どこから、一体どこから現れた…!?」

ネプトゥーリアの軍艦からも、

動揺と、そして本能的な恐怖に満ちた声が、

風に乗って聞こえてくる。


俺は、リュウガの背中の上で、

毅然と、しかしどこまでも冷静に、

眼下の、二隻の船を見下ろした。

小さな船の甲板には、

数人の人影が見える。

その中心に立つ、

顔の上半分を、優美な仮面で覆った、

小柄な、しかし凛とした佇まいの人物。

彼女が、この船の主なのか…?

そして、彼女こそが、

あの、若き領主、アリア様なのか…?


俺たちの、アクアティアでの冒険は、

嵐の吹き荒れる、絶望の海の上で、

絶体絶命の危機に瀕した、

謎の船団との、

あまりにも劇的な、

そして、間違いなく運命的な出会いから、

その本当の幕を開けようとしていた。

この出会いが、俺たちの、

そしてこの世界の運命を、

どう変えていくのか、

それはまだ、誰にも分からなかった。

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