誕生日のスイーツは マリアの幸せ
「さ、姫様。参ります。」
マリアの脇をすり抜けて逃げようとしたロザリアを、マリアは絶妙なタイミングで足をかけ転がした。
「痛い、怪我するでしょ。」
ロザリアが非難の声をあげた。
「姫様がこれくらいでおケガなさるなら、助かります。」
そういいながら、ロザリアの服をはぐ。
「今日は私の誕生日なのに。」
「姫様が誕生なさって、皆が喜んだ日です。私も喜ばせていただきます。」
普段、マリアのふりをしたり無理を言っている自覚があるため抵抗を辞めた。
「わかったわよ。」
「では湯あみからよろしくお願いいたします。」
マリアが一礼した。
湯あみをしながら激しくロザリアは後悔していた。
「もう上がっていい?」
「まだです。」
「マロウの香りがするけれど、お湯トロトロしてるけど…これなにいれたの?」
ロザリアは湯に使われているハーブの香りを口にする。
「ハーブは公爵家に連絡をした際に手に入れました。お湯にはハチミツとホホバオイルをいれております。」
「美肌効果に、保湿……いいわよ。」
ロザリアが湯船から上がる。
マリアにがっちり腕を掴まれた。
「さあ、次はアカスリですわ。姫様。」
きらきらする瞳でマリアが言った。
………。
「さあ次は全身パックですわ。姫様。」
………。
「お腹すいた。」
「マッサージ前に食事はいけません。」
水を手渡される。
………。
「コルセットキツイんだけれど。」
「こういうものでございますから。」
………。
「姫様、パンをどうぞ。」
「ケーキ食べたいんだけれど。」
「まだ終わっておりません。」
「もうお昼の時間はすぎているのに?」
「まだまだです。」
………。
「目を開けていい?」
「パック中は話さない。シワになります。」
………。
「そんなに化粧品いるの?」
「少ないぐらいです。」
………。
「髪痛いんだけれど。」
「まあ、今日はご冗談ばかり。結わえておりますのよ。」
おほほほほと、マリアは笑った。
「素晴らしい。姫様。」
マリアが鏡を持ってくる。
ぐったりした、それでいて肌や容貌は輝くばかりに飾られたロザリアがそこにはうつっていた。
「早くフォンダショコラ食べましょう。」
「ええ。」
小躍りしながらマリアは準備する。
その時ロザリアの部屋の扉を叩く音がした。




