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スイーツな王様  作者: 月帆
本編
36/114

食べれないフィナンシェ

先に、にらみ合うのをやめたのはリュミエールだった。

「守られたいとは思わないのか。」

リュミエールの眼差しに戸惑いながらロザリアは慎重に答えた。

「いえ…」

答えながらロザリアは思う……もちろん、守りたいものはたくさんある。

国も、父も母も弟も…私の周りには争いなく笑顔で暮らして行きたい。

自分がいることで争い…王位継承をめぐる争いが起きるのは嫌だった。

別に好きだった相手もいなかった。

もともと政略結婚は覚悟していたし…

だから、今ここにいる。


目の前にいるリュミエールの視線にロザリアははっとした。

「あなたは守りたいのですか?」

思わずロザリアの口から出ていた。

ロザリアは初めて目の前にいる男を知りたいと思った。

「王だからな。」

簡潔な返答をリュミエールが返す。


この人は王で、私は王女。

お互い背負うものはある。

気をつけないと自分の存在が人を傷つける。

当たり前の事実に、ロザリアは親近感がわいた。


「私は自分のことは守って見せます。」

ロザリアは力強く言い切った。

「可愛くないやつだな。」

リュミエールがいつもの偉そうな口調で返す。

「可愛い人を迎えられたらどうですか。」

ロザリアが皮肉を含んだ声を出す。

緊迫した雰囲気が緩む。

「ま……いずれだな。それより、それは誰からかわかっているのか。」

リュミエールは、毒入りのフィナンシェを指差した。

毒が入っているのに、わざわざ自分の名前を語る馬鹿はいないと思いながらロザリアは首を振った。

「いいえ。」

「そうか。……この件は俺が預かろう。後で女官長と宰相に言っておく。」

王らしい態度でリュミエールが言った。

「…お前の侍女がいろいろと調べているようだな。」

リュミエールの言葉にロザリアは無関心を装う。

「今まで存在のなかった側室の侍女が動けば注意はいく。いくらうまく隠しているようでも、ほころびはでてくる。」

「何のことですか?」

ロザリアはわざと悪しくないように笑顔をリュミエールに向けた。

「お互い秘密が多いな。」

リュミエールがロザリアに負けず笑顔を見せながら言った。

リュミエールの爽やかに見える笑顔、目は笑っていないとロザリアは思った。


「マスキンと我が国で戦いをしているのは知っているか。」

唐突に話しが変わる。

「はい?」

ロザリアは何の話かわからず表情が曇った。

「間者が入っている。」

天気の話でもするような気安さでリュミエールが話した。

「え…。」

突然聞かされる秘密にロザリアは頭を抱えそうになった。

「毎回ではないが、作戦が…王宮でたてた作戦がもれている。」

ロザリアの困惑した様子に気がつかないふりをリュミエールはしながら、話を続ける。

「なぜ、私に。」

重大な秘密を知らされたことにロザリアは戸惑いをかくせない。

「気まぐれだ。どうせ何もできない…できても噂を広めるぐらいだろ。寝るぞ。」

そう言ってリュミエールは部屋を出て行った。


ロザリアはリュミエールの言葉の真意を考えながら、ふと重大な事実に気がついた。

「そういえば忘れ物って、何だったのかしら?」

ロザリアはつぶやいた。


夜の闇は深く、深く落ちて行く。


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