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スイーツな王様  作者: 月帆
本編
34/114

苦いスイーツの思い出

ロザリアが手紙を書きおえ、新しい部屋を調べ終わった頃、舞踏会が終わったのかリュミエールと宰相、女官長、マリアが戻ってきた。

マリア以外は戻ってくると思っていなかったロザリアは顔をしかめた。

「どうだ気に入ったか。」

リュミエールは視線を室内に向けた。

「月の離宮とは…王妃さまができたら困るんではないですか。」

ロザリアは舞踏会で発表された衝撃にもなれ、リュミエールにまだいぬ王妃の話題を出し嫌味を返す。

「心配ない。それこそ貴婦人のほとんどがあこがれる離宮だぞ、嫌そうな顔をするな。」

そういってリュミエールはロザリアの頬をそっとなでる。

今度はリュミエール手をロザリアは阻まず頬を撫でさせる。


大きい手。


「私は結構です。お菓子を作って、ゆっくりと暮らしたいのです。」

ロザリアはリュミエールの手をゆっくりと退けた。

リュミエールと出会ってからは、アップケーキしか作っていない。

材料を見て、何を作るか考えて…あのふあふあする時間も持っていないとロザリアはリュミエールを睨む。

「そうか?お前なら上手に生き抜けると思うがな。結局、お前も小国とはいえ王家の出なら、それなりに闇の部分を見てきていると思うが。」

リュミエールはロザリアの表情の変化をどうとらえたのか、ロザリアの内心とは全く関係ない言葉を返した。

そして、その一言でロザリアは祖国を思い出す。

国は平和でも一国を保つため、ロザリアにな知らされはしなかったけれど、確かに闇の部分はあった。

みようと思わなくても、時折見てしまう闇。

きっと望めば施政者として闇の部分も学ぶことができたかもしれないけれど…私は望まなかった。

施政者になりたいとは思えなかった。

そして、弟が18歳になれば王位継承権第一位が繰り下がる予定だったためか、父も母も施政者としての闇を見せようとはしなかった。

私は王女として生まれたけれど恵まれていた。

自由に過ごすことができた。

国の中を自由に探索し、美味しいお菓子を作り…およそ王女らしくない生活を送ってこれた。

けれど父や母、私が望まなくても、貴族の中には弟が王位を継承するよりも私が継承する方が自然だという声もで始めた頃、従姉妹の公爵令嬢にこの国からの側室の話が持ち上がった。

従姉妹の願いもあったけれど、それ以上に私が国にいることで国が乱れないと思う気持ちも手伝ってこの国にやってきた。

私は、私が存在することで争いが起きるのは嫌だったから……。


「ロザリア?」

リュミエールが声をかけてきたことに、しばらくロザリアは気がつかなかった。

「どうした。」

「別に…舞踏会が疲れただけです。」

咄嗟の言い訳としては上手にできたが、リュミエール納得しなかった。

「部屋の中を物色する元気はあるのに…か。」

「父や母、弟…家族のことを考えていたら懐かしくなっただけです。」

ロザリアの言葉にリュミエールは首をひねった。

「家族?会いたい?」

「会いたいですよ。もちろん。陛下も、お母様は亡くなられても前国王はいらっしゃるのですからお会いしたいときもあるでしょう。」

「母上はともかく、オヤジ…っか。」

リュミエールは吐き捨てるように言った。

「ロザリアは、また会えるさ。」

吐き捨てるように言ったことを忘れさせるように、おだやかな口調でリュミエールが言った。

ロザリアはリュミエールは家族を知らなさ過ぎるような気がした。

「それより、今日はお疲れでしょう。お帰りください。」

「何を言っている。寵妃、月の離宮を与えたにもかかわらず帰ったら笑われる。」

ロザリアはリュミエールを睨みつけた。

リュミエールはにやりと笑った。


「ま、ここは広いからな。部屋もたくさんある。睨まれて寝るより、ゆっくり一人で寝るさ。急ぎの書類だけ回してくれ。」

宰相はうなづくと部屋から出て行った。

「私は湯浴みをする。」

リュミエールの言葉に女官長はうなづいた。

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