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スイーツな王様  作者: 月帆
本編
33/114

スイーツの合間

リュミエールと話しているうちに、さらに平常心をロザリアは取り戻す。

自分の知らないところで、いろいろなことが決められていくのは気分のいいものではない。

けれど、感情的になって周りを見ることができなくなれば王族として失格だと教えられたことを思い出し冷静になろうと努める。

そして、目の前にいるリュミエールをロザリアは正面から見据える。


冷静沈着、沈着大胆、大胆不敵…

二年間、この城で聞いたリュミエールを表す言葉がたくさん思い浮かぶ。

けれど…少し違う気がする。

二年間、リュミエールは私のことを知らなかった。私も二年間、この人のことを知らなかったし知りたいとも思わなかった。

「ロザリア。」

リュミエールがロザリアの名前を呼んだ。

いつもの意地悪な口調ではなく、どこか憂いを含んだ声に聞こえる。

しかしリュミエールはロザリアの名前を呼ぶ以上の言葉は発しなかった。

リュミエールとロザリアの視線がしっかりと交わる。

ロザリアは目の前にいる人が何を言いたそうにしているのか少し気になった。


「陛下、舞踏会戻られないと。これも仕事ですよ。」

宰相が声をかけた。

リュミエールもロザリアも忘れていた存在思い出す。

「まあ、いい。時間はたっぷりとある。」

一人で納得しながらリュミエールが言った。

「何ですか?」

ロザリアが尋ねたが、リュミエール答えず表情が引き締まる。

「今はゆっくりしていたらいい。行くぞ。」

そう言うとリュミエールは宰相を共にして月の離宮をあとにした。

「何だか疲れちゃった。」

幾分砕けた口調でロザリアは後ろに控えるマリアに言った。

「ゆっくりしていいなら、ゆっくりするわ。マリアはもう少し舞踏会で遊んでいらっしゃい。」

マリアはロザリア言葉にうなづいた。

「陛下…。」

今まで黙っていた女官長が声を出した。

「お母様が亡くなられて、前国王が執務を放棄…言葉がすぎますね。退位されて、若いからと侮られながらも今の王という地位を築かれた。」

ロザリアは首をかしげた。

女官長はロザリアと視線を外し空を見る。

「何が言いたいのですか?」

「あの方はまだまだ甘いものがお好きなお子様なんですよ。」

女官長が微かに口角をあげる。

「つまり悪戯っ子。」

ロザリアはさらに首を傾げた。

「では、私も仕事に戻ります。マリア、あなたも舞踏会に戻るならついて来なさい。」

優雅に女官長は一礼し、何か言いたげなマリアを引き連れて月の離宮から出て行った。


室内にはロザリア一人。


「みんな何が言いたいの。」

ロザリアは腕組して部屋を回る。

「マリアは役に立たないし。」

自分のドレスとリュミエールの服につかわれた刺し色を思い出す。

青いドレスを着ないと言った時マリアがいつもと比べてあっさりと引き下がった理由が分かった。

おそらくマリアは青いドレスを作る段階でロザリアが舞踏会で青いドレスを着るつもりがないことを予想していたのだと思った。

「私を着飾ることには、よく頭が回るけれど…ドレス選びを任されてなびくようじゃ、まだまだだわ。」

リュミエールが最初に言った約束を考える。

寵姫を演じる事でリュミエール…王にとっての不要な人物をあぶり出す。

寵姫として月の離宮に入れば、不要な人物も焦りがでることは予想できる…けれど、何か腑に落ちない。

「私の知らないことが多すぎるわ…久しぶりに手紙でも書こうかしら。」

そういいながら新しい部屋を探索し始めた。


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