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【超短編小説】七歳までは神の内

 さようならの時間だ。

 だってそうだろう?

 お前の足には影が無いんだ。それは照明の当たり方なんかじゃない。知ってるだろ。

 星だよ。

 星が見えるか。俺には見えない。

 あと何回繰り返したら星になれるんだろうな。

 死ぬには遅すぎた。


 そうさ、そうやって涙が枯れていく事があるし俺たちは天を仰ぎ見る事が無くなる。

 天の光が全て星だった頃に死ねたのなら、まだ良かったのかも知れない。

 俺たちは、いやお前がどうか知らないが少なくとも俺は希望を失っている。

 あの光がどういうものか俺は薄々感づいているし。

 だからあの光は仏壇の線香や煙草の先にある光と違いは無い。


 光があって、残りは闇だとかダークマターだとか呼ばれていて、何のことは無い。

 何もわかっていないと言うだけの話だ。

 病院で医者が「ストレスが原因ですね」と言うのと似ている。

 もっともアメリカじゃあ「セックスの不足ですね」と言う事になるらしい。

 暗喩も何もあったもんじゃない。

 俺たちは星を眺める事をやめた時から、他人とどう係わって良いか分からずに悩んでいるからな。



 セックスはいつだって不足しているさ。

 かつてはコンビニでも売ってるとまで言われたセックスがいまはもうどこにもない。

 山は死にました。

 海も死にました。

 川も死にました。

 風もそうですね、セックスも死にました。

 残念ながら、もう。



 俺は助からない。

 ロリポップを咥えてスキップしながら豆腐にぶつかって死ぬ。

 でも孤独じゃあない。

 俺には仲間がいて、それはもしかしたらお前かも知れないしお前じゃないかも知れない。

 河川敷でバーベキューをしながら俺たちはゆっくりと死んでいく。

 煙に溶けていく俺たちの関係性はもしかしたら厳しいものになるかも知れない。

 だけどセックスが無いから死ぬことは無い。


 安心しろ。俺たちは永遠だ。

 どうだ、晩飯でも食おうじゃないか。

 何だって構わない。

 スパゲティ、ハンバーガー、インキン、たむし、七年間の痒みを乗り越えて帰ってきたホーチミン。

 俺たちのアベシンゾー、いつも心に、師の教え。



 砂上の楼閣。

 ティッシュ綱渡り。

 燃えろいい女。

 恋する女は嫌いさ。

 ホワイトボードに書き込んでは斜線で消していく。無関係の奴ら。

 俺は曲がり角に出る度に右へ曲がり続ける。

 お前は左に曲がり続けろ。

 もう出会う事も無いだろう。



 さようならの時間だ。

 だってそうだろう、お前の足には影が無いんだ。それは照明の当たり方なんかじゃない。

 知ってるだろ。

 星だよ。

 星が見えるか。俺には見えない。

 あと何回繰り返したら星になれるんだろうな。

 死ぬには遅すぎた。

 俺にはセックスが足りなかった。

 だがその穴を埋めるには遅すぎる。


 さよならの時間だ。

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