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異世界へのすゝめ  作者: 相坂ねび
3章 王都訪問
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試験に行ったよ

 次の日、学校で実力測定を行うと侯爵様から聞かされた。


「これからイーリス達と学校へ行って、試験を受けてもらうよ。筆記はないので普段通り実力を示してくれれば大丈夫になっている。2人とも、案内頼むよ?」


「わかりました!ワタリさん、準備が出来たら一緒に行きましょう!」


 僕達は一度別れ準備を行う。とりあえず戦闘用のボウガンと薬、服は…普段ので大丈夫かな?貴族達が通う学校だから人数は少ないみたいだけど、絡まれないといいなぁ。イーリスとラヴィにいい寄っていると見られる可能性もあるし…


「それじゃ向かいましょうか!」


 学校は王城の通りにあるらしい。中心街から伸びる通りの突き当りに王城、脇に学校とのこと。これは、貴族達になにかあっては大変だからという建前と、警備を敷くことで監視がしやすいとのこと。


「なるほど…貴族達を人質とまでは言わないけど地方で問題を起こした場合に制裁を行うためでもあるのか。逆に、年齢的なものを考えると悪だくみや周りの意見に流されやすいから監視なのかな。」


「そういう意図もあると思います。貴族といっても色々な人がいますからね…」


「2人とも可愛いから男性から誘われたり、お茶会に招待とかありそうだよね…」


「…めんどうだから断ってる。」


 それはイーリスが侯爵だから出来るんだろうな…下の階級の者にとっては強制になるだろうし…


「私達を利用したい者は多いですからね…結局私達とラナさんで一緒に動くことが多くなります。」


 2人の苦労話を聞いていると学校に着いた。おー、貴族が通っているだけあって設備というかすごく綺麗だなぁ…人の中身はどうかわからないけれど。


「裏側にある訓練所で行うらしいのでそちらへ向かいましょう!」


「ありがとう、道を教えてくれたら向かうから教室に行ってくれても大丈夫だよ?

早めに出てきたとしても、一緒についてくると目立つだろうし余計な詮索されたら大変かと…」


「…騒がしいの嫌い。」


「そうでした…この校舎を右手に捉えながら進むと着きますよ!」


 2人は校舎へ入っていく。僕は言われた通りに進んでいくと広い訓練場に着いた。ここで試験を行うのか…いくらなんでもダンジョンに入れる基準だから学生のテストそのままじゃないよね…


「あ、君が試験受けにきた子かな?初めまして、僕はこの学校の校長でノエルというよ。是非名前で呼んで欲しいな。」


 僕っ子だ…若く見えるんだけど、耳が尖っているからエルフの血が入っているのかも?凛々しいというより可愛いって感じのお姉さん。ファンタジーの世界って見た目と年齢が分からない人多いよね…


「僕はワタリと言います。まさか校長自ら試験を行うとはビックリしました。」


「ノエル!名前で呼んでね?流れ人が試験受けるんだし、何か問題があった場合に僕がいたほうが対応しやすいでしょ?まぁ、ワタリ君なら問題なんて起こさないって話は聞いているけどね。何かあるとすれば学校の生徒が君に絡む可能性のが高いし。」


 フットワークの軽い校長なんだね。事務員や教員に任せると判断が難しい部分も確かにあるだろうからこの対応が正しいんだけれど…


「じゃぁ、攻撃方法の確認をするよ。ワタリ君は一人で王都に来れたし、冒険者ギルドで講習を依頼したのが分かっているからサバイバル能力に関してはチェックはなし。それで、錬金術師ってことだから生産職でマイナス補正かかっているけど…山賊討伐が出来るし大丈夫だと思うから気楽に受けてね。」


「分かりました。

1.ボウガンによる状態異常を付与。殺傷力は生産職なので期待はできませんが…

2.罠作成。錬金術を用いた罠を素早く展開することで殺傷力や捕縛力が十分にあります。

3.属性魔法。ダンジョンの壁や地面には作用しないと思いますが地表でなら土を利用した攻撃方法があります。ダンジョンでも氷を物質化させることで殺傷力を持たせられます。」


 校長は1つずつ頷いている。


「そうだね、十分手段があるみたいだから実際に見せてもらっていいかな?ボウガンということで射撃能力から見させてもらうよ。向こうにある案山子をこのラインから撃ってもらっていいかな?ダンジョンの通路がこのくらいなんだけど大丈夫?」


「大丈夫だと思います。防衛戦で城壁の上から指揮をしていた個体に当てましたし。それじゃやりますね。」


 僕はボウガンを取り出し、案山子に向かって構える。矢は石矢でいいかな、重さによる矢の軌跡変動がないような機構にしてあるからもっと遠くまで当てられるんだけどね。僕は狙った場所に矢が刺さったのを確認しもう一矢撃った。…うん、同じ場所に当たったね。


「…すごいね。寸分狂わずに同じ箇所に当てるなんて弓の名人じゃないと難しいよ?これなら十分やっていけるし、殺傷能力がなかったとしても対人でも牽制になるね。

 次は罠を見せてもらっていいかな?ごめんね、あまり手の内を晒したくないだろうけど…秘匿にするから。」


「大丈夫ですよ、そこまで凝ったものじゃないので…ダンジョンの通路で使うことを想定したものと普段使い出来るものがありますよ。特定の魔力以外が通ったときに発動する魔力回路を作り、岩が降ってきたり棘が発生したりするタイプです。壁が迫ってくるとかもしたかったのですが…」


「おー…これはなかなか凶悪だね…防犯にも罠の種類を変えることで画期的になるかも。悪用も出来ちゃうから対策手段も一緒に広めないといけないから、信用のおけるものじゃないとだね…でも、この魔力回路は魔法使いにも出来そうだけど意味付けという付与は錬金術の範疇だから無理だね。悪の錬金術師がいないことを願うよ…」


 罠は設置と対策が表裏だから、開発した時に考えてたんだよね。それをこの校長は一発で見抜いたから実力者なんだろうな…


「じゃあ最後に属性魔法を見せますね。生産職が戦えるにはどうしたらいいのかを冒険者に聞いて、間接的なら補正がかからないと言われた手段ですね。このように氷で棘を瞬間的に作り相手の突進に合わせるなど有効ですね。料理油に火を点火することで延焼も出来ますし、ダンジョン外なら土を使うのが一番楽ですけれど…広い部屋なら風で冷気を送り込むのも有効かと、敵に攻撃じゃないので。」


「…色々と考えているんだね。確かに生産者で戦闘を行おうとしたのは鍛冶師や彫金師という筋力、器用さを用いた攻撃で行っていたから気づかなかったんだろうね。ワタリ君が話を聞いた冒険者はかなりの博識だと思う。うん、試験は十分だよ。結果は分かっていると思うけど合格。流れ人じゃなかったら是非学校に通って生徒と交流してもらいたい人材だよ!」


 良かったぁ…何とか合格できた…侯爵様や伯爵様の推薦があっても実力が伴っていなかったら問題があるもんね…


「この学校は男女比が3:7くらいでね…学校では大人しい男子生徒が外では態度が違くて色々と問題起こすんだよねぇ…だから男子はあまり評判良くなくてね。貴族の学校は交流を持たせたり相手を見つける社交場の意味もあるから由々しき事態なんだよ!」


「…それ、僕に言われてもどうしようもないですよ…流れ人はいっぱいいますから学校開放したら付き合う人も出てくると思いますよ?問題も多いでしょうけれど…」


「今のところ流れ人に対しては開放しない方針なんだよね。僕自身もそのほうがいいと思っているし。特例でワタリ君は入れたいんだけどねぇ…特別扱いすると流れ人の中でワタリ君が酷い扱い受ける可能性もあるから出来ないんだよ…」


「そうなんですか…僕としてはすでに貴族の方と何人か交流させてもらっているので十分だと思います。まぁ機会があったら学校に伺わせてもらいますね?」


 僕はそう言って、訓練所から出ていき屋敷に戻っていく。そうだね、交流としてはラナさん、ラヴィ、イーリスと3人も貴族の方と懇意にさせてもらっているし十分。


 これ以上増えると政争に巻き込まれかねない…

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