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異世界へのすゝめ  作者: 相坂ねび
3章 王都訪問
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フラグは回収するもの

  僕は宿を引き払い、馬を引き取りに向かった。


「おはようございます、もう引き取って大丈夫なのでしょうか?」


「お、おはようさん。

 ああ、大丈夫だぞ。餌になる牧草はそちらの箱、ニンジンも準備してあるぞ。リンゴや砂糖など甘いものも好むから色々と試すといい。だがナス科とアブラナ科の植物は避けるようにな?」


「わかりました、ありがとうございます!」


「おう、王都までだろうが大事にしてくれ!」


 街中で乗るのは危険だし僕は手綱を引き北門へ向かった。匂い袋は僕が作ったショルダーバックに流れ人のバック機能を付けた肩紐に結んだ。匂いはしないんだけど…虫の嫌うフェロモンでも出しているのかな?


「それじゃここから馬にのって移動なんだけど…えっとなんて呼ぼうかな。」


 名前つけちゃうと愛着も出ちゃうから困るんだよね…王都で馬も泊められたり世話できる場所がないとだし…向こうについてから考えるかな。というか買ったお店での話を聞いたときに芦毛、やんちゃ、能力がすごいとかあの馬しか思い浮かばないんだけど…


「ゴル…じゃない、ベッセルって名前はどうかな?わぁ!?そんなにこすりつけてこないで!?愛情表現なのか痒いのかわからなくなる!」


 ま、まぁ喜んでいると考えるか…僕はベッセルに跨り歩を進めた。


 魔物が出てこないとピクニックに出かけているように感じるなぁ、森林浴をしながら進んでいるし…ただ、問題があるとしたら乗馬に慣れていなくて股の部分に余計な力が入っているのか痛いんだよね…鐙なんて便利なものがないから股で抑えないといけなくて…ベッセルも気を遣ってくれているのか揺れない様に進んでくれているんだけどね…僕って貧弱だなぁ。あ、もしかすると


「ねぇベッセル?僕の魔力を受け入れてくれる?僕の治療というか、疲労回復しながらベッセルにも流せば疲れを抑えられるんじゃないかと思っているんだけど。」


 僕が聞くと一鳴きし頷く。やっぱりベッセルは賢いな、ずっと世話が出来るといいんだけど…王都でなんとか見つけられるといいな。


 目を閉じ集中し魔力を確認する。まずは僕の治療を進めながらベッセルの魔力の質を確認、結構荒々しい雰囲気だけどいたわりの気持ちが伝わってくる。僕の魔力を不快感が出ない様にゆっくり浸透させていく。これを速くやろうとすると気分が悪くなるらしい。普段から合わせている人だと大丈夫みたいだけどね。

 1人と1頭が1つの流れになるように循環させる。ベッセルの感覚が僕に伝わってくるし、逆にベッセルは僕の感覚が伝わっているんだろうな…これって疑似的な人馬一体ってやつなのかも?魔力による肉体の活性化を行う。


「あ、ちょ、ちょっと!ベッセル!?」


 ベッセルは溢れ出る力に興奮したのか急に走り出した。ちょ、振り落とされる!僕は必死にしがみ付いた。


 20分ほど走ると落ち着いたのか、ベッセルは申し訳なさそうにしている。


「初めての感覚で興奮しちゃったんだよね?次から気を付けてくれれば大丈夫。

 それに、ベッセルにはこれからも頑張ってもらうんだし。逆に疲れたら教えてね?急いでいる旅路じゃないんだから余裕をもっていこう。」


 僕はそう言い聞かせながらたてがみを撫でる。

 途中水分補給を行いながら夕方まで進み、野営の準備をするために少し道から外れる。前の野営では護衛もいたしきちんとした寝場所作ったけれど、一人だから買ってあったテントと寝袋をだした。ベッセルには毛繕いをしながら今日のことを労い、水と牧草を準備しケープを掛けた。


 野盗も現れず一夜を明かし、軽く食事を食べた後出発した。


 昨日よりベッセルは魔力による活性に慣れたのか落ち着いている。が、それでもスピードが速いことには変わりない。乗り手に負担がかかりにくくしているから暴走はしていないんだろうけど、体力大丈夫かな?

 途中の泉で休息をとり、現在位置を確認するために地図を見る。


「結構早いペースで進んでいるよね?今がこの泉だから…って、もうすぐ合流地点じゃないか!ベッセルすごいよ!」


 そう褒めると鼻を鳴らし『どうだ?』とばかりに首を逸らす。うん、お調子者かな?


「ん-、どうしようか。合流地点までいくとすぐ山間部で宿場町まで一気に行かないと行けなくなるけど…ベッセル、夜通し走ることできそう?僕は寝なくても大丈夫だけど…」


 ベッセルは任せろとでも言っているのか大きくうなずいた。


「よし、それじゃ行こうか!山賊など現れる可能性もあるからベッセルも注意するんだよ?一応風の膜を張って矢は防ぐけど接近された場合は気を付けるんだよ。」


 僕らは合流地点まで到着した。ここから西にいくと貴族達の避暑地…王都の学生達も利用するらしく、道が整っている。


「この山道は馬車がすれ違うくらいには広いけど、長居したくはない場所だね…上から落石とかあったらふさがれちゃうだろうし、雨など降っても危ないよね。」


 そんなことを想像しながら進んでいるとベッセルが急に立ち止まった。


「あれ?ベッセル、どうしたの?」


 僕に何か訴えてきている。なんだろ…鼻を強調している気がするけれど…僕は鼻に意識を集中させ魔力による強化を行った。これは…


「微かに血の臭いがするね…北側からするってことは誰か襲われている可能性が?

ん-…見通しが悪くて先が見えないのが問題だなぁ…あ、ベッセル地面を盛り上げて山間の中腹を進もうか。そうすれば上から様子も見えるし援護できると思う。」


 僕らは中腹を走り抜け、木がない開けた場所から下を覗き込む。そこには…


「あー…あれって見た目的に完全に山賊が貴族を襲っているよね…でも、なんで山賊のリーダーみたいな位置に男の子が?」


 下に神経を注ぎながら反対側、そしてこちら側の中腹を警戒する。増援の気配なし…下にいる10人で全部なのかな?聴力を強化してっと…


「…様、どうしてこんなことをするのです!?」


「ウルサイ!お前たち二人が僕の物にならないからだろ!あんなに授業で微笑み返してくれたり挨拶してくれたり!あれだけ思わせぶりにしておいて両想いだと思ったら振るんだからな!それなら強引に手に入れるまでよ!」


「それはクラスメイトとして接していただけです!爵位的には同じですが、家の派閥も違いますしそういった感情で接していたわけではありません!」


「ウルサイウルサイ!お前たちはもう終わりだ!この魔道具で他に連絡出来ない様にしているし冒険者などが通らないよう移動を制限してある!」


「へっへ。ゼノ伯爵さんよ。このお嬢さんやお付きのやつもらっていいのか?」


「こいつらは僕の物だ!それ以外は好きにしろ!」


「これだから貴族の坊ちゃんからの依頼はやめらんねぇんだよな!侯爵さんと伯爵さんとこのに手だせるんだからな!」


 あー…典型的な逆恨みの勘違い系か…貴族に怪我負わせちゃったらなにか責任発生するかな?向こうは犯罪者なんだけど、話聞かなそうだよなぁ…

 護衛たちは死んでいるのかピクリとも動かず、捕らえられた2名のメイド達も襲われるのは時間の問題…ここは助けるほうがいいよね…


「ベッセル…少し離れたところに下ろすから強化状態であの道を駆け抜けて敵の意識逸らしてくれる?その間に僕は人質になった人達を救出するから。」


 さて、作戦開始!

 まずはベッセルが土煙を上げ走っていく。そのすきに僕はバックから取り出した麻痺粉を風にのせる。この時メイドさんや貴族令嬢達に被害が出ない様に調整っと…

 ベッセルにあっけに取られている隙に麻痺粉を流しながら麻紐を操り人質となっている側の6名を無力化し近くに降り立つ。


「な、なんだお前は!?」


「僕?僕はただの旅人だよ?王都に向かう最中になんか襲われている人達がいたから助けただけ。」


 生産職じゃなければもっとカッコよく登場できた気がするけど…僕にはこれで精一杯だな。

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