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「ふざけんじゃねぇ、あんな強い一般人がいてたまるかよ。これは冒険者同士の問題だろうが、金銭で解決させろ!こいつらは関係ねぇ」

「残念ながらあいつらはまだ等級審査を受けていなくてね、冒険者証も発行されていないんだよ。だからお前たちが行った行為は町のルールに抵触している。今回のような極めて悪質な事件は奴隷落ちとこの町では定められている」


 流石に少し可哀想にも思えたが、裏稼業との繋がりを持っていそうな奴らを野放しにするのも現状ではどうかと思ったので、ウェイドに一任した。

 


 彼らは正規の奴隷商人立ち合いの元、隷属宣誓なる魔法により奴隷へと落ちた。

 丈夫な冒険者の為、鉱山奴隷として売り出すつもりらしい。奴隷の中でも鉱山奴隷は最悪らしく、死傷率が通常の奴隷の何倍もあるのだとか。

 彼らは日に当たる生活を送れずに解放金額完済までに死ぬのだろうと心の中で合掌する。


 強くなって奪い続けても、更なる強者に敗れれば奪われるのみ。今回のことは彼らにとって良い勉強になったと思う。高い代償にはなったようだが。


 彼らの命の値段は八等級四人が金貨二枚ずつ、六等級の男で金貨三枚であった。俺は商人から金貨十一枚を受け取ると、戦闘後とは一転した晴れない気持ちで室内を後にした。

 働き盛りの男の値段が二十万円。随分と命が安い世界だ。

 これから彼らは一人金貨十枚以上の値段で売られて行くらしい。管理費とかもあるんだろうが奴隷商人はボロ儲けだな。



「他にも似たようなことを冒険者相手に何度か重ねていた奴らだ。それに町民への嫌がらせとかもな。おう、そんな湿気た面すんじゃねぇよ。町のやつらも喜んでたじゃねぇか」

「愁いを帯びた儚げな表情とかさ、もう少し素敵な表現は出来ないのかねおっさんは。心配無用、色々な意味で強くならないと生きにくい世界だなって改めて思っただけだ」


 室外で待っていたトーチから荷物を受け取り外に出ると、ウェイドから声がかかる。そんなに変な表情をしていたのだろうか。反射するものを探して周囲を見回すとトーチも心配そうにこちらを見つめていたことに気づく。


「生きにくいって言っても悪事に手を染めなきゃそんなこともないぞ?だから悪事を働く前提はやめてくれよな。お前を捕縛するのは骨が折れそうだ」

「安心してくれ、今の所はするつもりないぞ」

「今の所ってのが安心できねぇなぁ。まぁこの町はそうでもないが、他所には横暴な貴族がいれば、悪辣な人種もいる。そう考えれば権力、財力、武力があっても損はねぇな」


 そうだよな。今後は人との命のやり取りをしなきゃいけない事も多々あるだろう。このくらいで後味の悪さを感じていても仕方ないか。


「ヒデオは約束通り私を守った。ただそれだけ。ありがとう」

「おう、そうだな。これからも任せとけ」

 

 ぺこりとお辞儀を一つするトーチ。そんな彼女なりの気遣いが嬉しくて彼女の顎に手をやり、親指で頬を優しく撫でる。


「直に日が暮れる。サルの所へ行ってこい。俺も事後処理して引き継いだらからかいに行くからよ」

「そうするか。そんじゃお先に、またな」


 ウェイドに別れを告げるとギルド方面へと歩いていく。何度か道を間違いそうになったが、トーチは歩いた道を完璧に覚えているらしく、迷うことなく辿り着けた。






「これが依頼料を引いた分の売却額になります。薬となる部位や犬歯を除き、一部損傷が激しかった部分も含めると少しばかり安くなってしまいましたが。」

「いやいや、金銭的にも早めに処分したかったので構いませんよ。って、多すぎませんかこの金額」


 金貨と銀板が数枚ずつ程度かなと渡された袋を覗くと、金貨が大量に入れられていた。高額部位の非売却と損傷でこんなに貰ってもいいのだろうか。


「いえ、滅多に卸されないオルトロスですから。それに毛皮や爪、牙等は使い道が多いんですよ。むしろ金貨八十枚程度しか出せずに申し訳ないです」


 八十枚!?驚きに思わず口が開きっぱなしになってしまう。

 相場を知らない俺からしたら十分過ぎる程の大金なのだが、どうもオルトロスの大きさから取れる素材の量や卸される希少さから、これくらいは余裕で超えるのだそうな。

 参考としてバロンオーガの平均売却額を尋ねると、大きさや使える素材の数の少なさから金貨にも届かないと聞き、オルトロスの異常性を理解した。


「薬となる部位と一番高額な犬歯も含んで頂ければ三百枚は確実でしたね」

「な、なるほど。命を賭けた甲斐もあるってもんですね」


 その後も、所属している冒険者が迷惑をかけた等の謝罪を受けたりと他愛ない話しをして、ウェイドが来るまでの時間を過ごした。



「思ったより遅くなっちまったぜ。まだ等級審査してねぇよな?」

「はぁ、いきなり執務室を開けるとは貴方には本当に教養というものが足りませんね」


 ウェイドが扉を蹴り破るようにして入室してくると、サルスタンさんは頭を悩ませるように右手を額へと持っていく。


「そもそも装備がないから、等級審査は後日の予定だぞ」

「あん?お前なら等級審査くらいギルドのレンタル装備で十分だろ。今日はそれをつまみに酒盛りする予定なんだからさ。サル、さっきイェンさんも暇そうにしてたし、いいだろ?」

「ヒデオさんさえ宜しければ私は構いませんが」


 二人から視線を投げかけられる。勝手に予定を組まれても困るのだが、ウェイドにもかなり世話になっているし、それくらいの融通は利かせてもいいか。


「トーチにはちゃんとした装備で挑んで貰いたいので後日として、俺だけで良いなら今から受けさせて貰えますか?」

「ウェイドがご迷惑をおかけしてすみません。それでは等級審査の説明をいたしますので、ウェイドはイェンさんへの説明と装備の準備をお願いします」

「あいよっ」


 ウェイドは酒も用意してくるから少し時間がかかると言い、室外へと出て行った。先ほどから呼ばれているイェンなる人物が等級審査官ということなのだろう。





 説明によると、まずは剣も魔法もありきの模擬戦を行い、実力を測るとのこと。

 場所はギルドが運営している訓練所で、建物の規模としては小さいものの多少の損傷は自動修繕される高級な建物となっているらしく、遠慮はいらないと告げられた。


 振り分けの基準は等級審査官の格によって違い、今回審査を行う元三等級冒険者イェンさんの五等級の合格基準は、正面から打ち勝つこと。

 イェンさんは所帯を持った事を切っ掛けに実力が頭打ちだった冒険者を辞めることにした超一流の剣士らしく、その腕は健在であるらしい。ちょっと難易度高くないですかね?


 それから模擬戦後には注意点となるであろう、人格を確認する為の軽い面談をおこなうようだ。こちらに関しては俺なら大丈夫だとサルスタンさんから太鼓判をいただいた。


 最後に、五等級から十等級までで振り分けられるとは言え、先ほどの内容からも分かるように最初から五級の水準を満たす者はほとんどいないらしく、八等級から十等級スタートが基本であると伝えられた。


 なんでも五等級の時点で既に一流の冒険者として扱われるらしい。それ以上の等級は一段階上げる毎に大きな壁があるらしく、二等級と一等級に至っては戦時に戦局を一人で変えれるような化け物クラスの人間しかいないと断言された。だから大陸広しと言えど、一等級二等級を合わせても各国に一人二人程度しか存在しないとのこと。



「待たせちまったかと思ったけど丁度良かったみたいだな。酒も用意できたし観客も集まってるみてぇだから早いとこ行こうぜ」

「待たれよ。まずは某に話をさせてもらおう。等級審査官のイェンだ。レンタル装備で某と戦おうと思っている下賎な小童はどちらだ」


 説明が終わるタイミングを見計らっていたかのように扉を蹴り開けるウェイドに続いて入って来たのは、左瞼から口元にかけて大きな傷跡のある百七十半ば程の背丈をした男だ。

 俺とトーチを見据えるその男の瞳には苛立ちのようなものがハッキリと見てとれた。


「俺だ。名前はヒデオ。本当は装備を整えてから挑みたかったが、成り行きでね。これでも二十五歳だから小童って歳ではないよ」


 最初はサルスタンさんへの対応のように丁寧にしようと思っていたのだが、俺らへの目が気に入らなく、ガキっぽい対応になってしまう。


「ふん、二十五になって登録とは片腹痛い。世間知らずに現実を教えてやろうぞ。先に訓練場にて待つ」


 言いたい放題だな。ここまで言われると腹が立つな。超一流剣士の強さがどれぐらいのものなのかは分からない。それでも勝ちたいという気持ちが胸の中で暴れだす。それに、三等級で頭打ちだったということは化け物にはなれなかったということだ。きっと活路はある。


「ヒデオは負けない」


 俺への悪口にトーチも苛立ちを抱いたようで、俺の袖を引っ張りこちらを見上げるとファイティングポーズをとる。


「あん?なんでイェンさんあんなに怒ってたんだ?」

「どうせウェイドが余計な事を言ったのでしょう。貴方に頼んだ私が馬鹿でした。すみませんヒデオさん、私から再度説明してきますので少々お待ち下さい」

「いえ、このまま行くのでサルスタンさんも気にしないでください。こちらとしてもやる気が出たので問題ありません」


 ウェイドが持ってきた装備を受け取り、装着する。軽くその場で体操をしてみるもそこまで動きに支障はない。受け取った直剣も問題なく振るえそうだ。


「お願いですから今後の為にも大怪我はしないでくださいね。あくまで審査なのですから」

「ええ、俺は怪我をしないつもりで臨みますよ。俺はね」


 冒険者達との戦いで得た経験でレベルアップしていることをステータス画面で確認する。増えたものも合わせると十五個のスキルがある。超一流の剣士に勝てる可能性はこれら圧倒的なスキルの数にあるはずだ。


 そしてサルスタンさん先導の元、ギルド別館のように隣接している訓練場へと歩きだした。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前 :ヒデオ・サヤマ

 種別 :人間:男

 職業 :無

 レベル:27

 状態 :通常


 生命力:178/178

 魔力 :177/178


 筋力 :57

 敏捷 :57

 頑丈 :57

 器用 :69

 知力 :46

 幸運 :36


 スキル

 ・詐術3

 ・筋力上昇(小)

 ・敏捷上昇(小)

 ・頑丈上昇(小)

 ・体術3

 ・ステータス表示

 ・脱兎1

 ・投擲2

 ・狂化3

 ・精神耐性2

 ・剣術2

 ・見切り3

 ・不屈2

 ・身体強化魔法

 ・魔力操作2


 ユニーク

 ・器用貧乏

 ・大器晩成

 ・一を聞いて十を知る

 称号

 ・女たらし

 ・時空の狭間を通り抜けた異世界人

 ・奇跡の体現者

 ・英雄の卵

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