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新旧ギルマス対決!

「イクぜマルク! ギルマスの椅子に相応しいか、試験の続きダ!」

「来い。証明してやる」


 ヴァネッサが苛烈な勢いで飛び込んでくる。


「リョウテ斧スキルTier(ティア)4――『みじん切り』!」

「今度は手数重視のスキルかっ」


 先ほど同様の大振りな一撃だが、振った時の慣性を利用した連続斬りだ。

 手数重視とは言え、後衛職な俺がまともに食らえば一撃で両断されておかしくなかった。


「オラオラどうしたぁ!? ショウメイしてくれるんじゃなかったのカァ!?」

「気の早い女性だ、今やっている最中さ!」


 俺は必死に避ける。

 しかし相手の方が素早さが上回っているのか、細かい傷が出来ていく。

 これがTier(ティア)5到達者のジルやフリーダだったならば、簡単に見切っただろうな。

 だが俺は生憎まだTier(ティア)4.5止まりだ、そう簡単にはいかない。


「ヨケルばかりじゃ何も変わらネェゾ! ソレトモ、フリーダ(お隣さん)が終わるまでの時間稼ぎのつもりカァ!?」

「いいや、俺が君を倒す。――気付いていないのか?」


 だが――俺にも意地がある。

 きっと今頃オリヴィアもTier(ティア)5に到達している。

 だったら俺もそこに辿り着かなければ、彼女達の仲間とは言えないのだから。


「覚えたてのスキルということもあって、少し手間がかかるだけさ。ヴァネッサ、どうやら君と俺とでは、思いのほか力量差があるようだな」

「ナンダト!? オレに何をして――」

「レディに失礼だが、下腹部部分を少し触らせてもらっていた」


 ヴァネッサのへそより下――下腹部部分には、紋が刻まれていた。

 フリーダやジル、そしてオリヴィアにも刻んだ、催眠紋だ。

 催眠無効の暗示を受けていたとしても、術者としての実力は俺の方が上。

 ならば、これで破れる。


 俺も彼女達に追いつく必要がある。

 だから発動するスキルのTier(ティア)は――


「催眠スキルTier(ティア)――」

「ドゥフフ! それは困るなぁマルク君!」

「っ、ブタドス!」


 だが発動の瞬間、横槍が入った。

 ブタドスは腕に巻きつけていた鎖で俺を攻撃する。

 だが。


「――なんて、お見通しだがな」

「ドゥフ!? 避けられたっ!?」

「ゴ主人様が作ったチャンス、ムダにはしねぇゼ!」

「それも当たらん!」


 邪魔してくることくらい予想済みだ。俺は難なく回避する。

 体勢が崩れたところをヴァネッサが攻撃してくるが、それも俺は避けて見せた。

 まぁ催眠術師の限界か、完全回避は不可能でかすり傷は負ってしまったが。

 いずれにしろ俺は、軽く血を流しながらも攻撃を全てかわすのだった。


「ドゥ、ドゥフっ……! こ、こんなに戦える催眠術師がいるなんて、予想外だなぁ」

「終わりだブタドス。今すぐ彼女達の催眠を解け」


 街を乗っ取り、ギルマスや騎士団長までをも操って見せたブタドスだったが、状況が悪化していると感じて焦りを見せ始めていた。


「催眠を解けだってぇ? せ、せっかくおいしそうな捧げ物をたくさん手に入れたのに、食べる前に手放すなんて……そんなこと出来るわけないよぉ!」

「だろうな、まぁ元から期待はしていなかった。お前が解かないというのなら、俺が勝手に解くまでだ。そこのヴァネッサだけでもな」

「ナ、ナンダ!? オレの下腹部が――紋がピンク色にヒカッテ」


 それは俺が先ほど発動しかけた催眠紋だ。

 これが発動すれば、ヴァネッサの催眠だけは必ず解ける。

 そうしたら、ブタドスを守る盾はいなくなり、協力してブタドスを倒すことも可能となる。

 ブタドスが倒れれば低位な催眠は即座に解けて、全住民は正気に戻るだろう。


 それで、勝ちだ。


「目を覚ませ、ヴァネ――」

「ドゥフ……それは困る、困るんだよなぁ。しょうがないなぁ、切り札を使うかぁ」


 勝ちのはずだった。


「ヴァネッサちゃんにエルミナちゃん、それに騎士団のみんなも! ――今すぐ持ってる武器を、自分の喉元にあてがってぇ!」

「なんだと」


 命令を受けたブタドスの支配下にある女性が皆、言うとおりにした。

 鈍く光る武器の刃先を、自ら自分の喉元に突き当てたのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] あら、負けですね(笑) てか、人質にするの読めてなかったのならマルクがアホですがな(苦笑)
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